「彼は舌先三寸でいい加減だ」「舌先三寸で話にならない」と信用ならない人を非難する意味で「舌先三寸」という四字熟語を使用することがあります。
この「舌先三寸」の意味と由来をはじめ、その使い方について詳しく解説します。また「舌先三寸」の類語や「口先三寸」との違い、英語訳についても紹介しましょう。
「舌先三寸」の意味とは
「舌先三寸」とは「口先だけの巧みな物言い」のこと
「舌先三寸」とは「口先だけの巧みな物言い」を意味します。「心のこもっていない、うわべだけの言葉」や「口先だけでうまくあしらうこと」「言葉巧みに言いくるめること」などを指して「舌先三寸」と言います。
「舌先三寸」の読み方は「したさきさんずん」
「舌先三寸」は「したさきさんずん」と読みます。「さんすん」ではなく「さんずん」と濁った読みをするのがポイントです。
「舌先三寸」の由来は小さなものの例え
「舌先三寸」という四字熟語の由来には諸説ありますが、そのひとつが「三寸=小さなもの、ちょっとしたもののたとえ」とする説です。つまり「舌先三寸」とは「ちょっとした舌の先」を指し、深い意味を持たない薄っぺらい話、心のこもっていないうわべだけの言葉という四字熟語の意味につながったとされています。
一方で「三寸」が約9㎝と舌の長さとしては長いことから「長い舌を持つ人は良く口が回る、おしゃべりである」というのが語源という説もあります。
「舌先三寸」の使い方と例文
「舌先三寸」でうまくあしらう様子を表す
「舌先三寸」は言葉巧みに相手をうまくあしらう様、うまく言いくるめる様を表します。うまい言葉で誤魔化され、丸め込まれたことを非難する意味を込めて使用することも多いです。
口先だけで気持ちや行動を伴わない意味も
「舌先三寸」は単に口が上手いだけでなく「心のこもっていない、うわべだけの言葉」という意味でも用いられます。この場合も口先だけでしのぐいい加減な人、心無い人というように非難めいたニュアンスを伴います。
- 彼はいつも舌先三寸だから信用ならない
- あの人は舌先三寸なところがあるから、約束事はメールにしないと後で揉めるよ
「舌先三寸」の類語とは
「舌先三寸」の類語は「口八丁」
「舌先三寸」の類語は「口八丁」です。「口八丁(くちはっちょう)」の「八丁」とはもともとは「八つの道具を使いこなす」という意味で、転じて「物事に達者であること」を指します。つまり「口八丁」とは「口が達者なこと、口先のうまいこと」という意味です。
「舌先三寸」を「舌三寸」として使うことも
「舌先三寸」は「舌三寸」の表現でも用いられることがありますが、これは脱字ではありません。「舌三寸」もまた「心がこもらず口先だけである様」という意味で「舌先三寸」」と同じ意味の表現です。一字違いということもあり誤りとされる例もあるようですが、正しい熟語と覚えておきましょう。
「口先三寸」は「舌先三寸」の誤用
「舌先三寸」の意味で「口先三寸」と表現することがあります。「口先」の持つ「本心ではないうわべだけの言葉」という意味が「舌先三寸」と混同され、「口先三寸」と誤った形で用いられたようです。
ただし、現代では「舌先三寸」よりも「口先三寸」を使う人が増えているとの調査結果もあります。言葉の意味や使い方は時代と共に変化するため、「口先三寸」も許容されつつある表現と言えるでしょう。
「舌先三寸」の英語訳とは
「舌先三寸」は英語で「glib tongue」
「舌先三寸」は英語では「glib tongue」と表現することができます。「grib」には「べらべらと口先だけの、うわべだけの、もっともらしい」などの意味があります。たとえば「He has a glib tongue.」は「彼は口先三寸だ」と和訳することができるでしょう。
She’s cheated lots of men with her glib tongue.
彼女は舌先三寸で多くの男性を騙してきた
「舌先三寸」は「eloquent」を使った英語訳も
「eloquent」とは「雄弁な、説得力がある」という意味の英単語で、たとえば「an eloquent speech」は「巧みな話し方」という和訳が可能です。「eloquent」は好意的なニュアンスで用いられる一方で、「口八丁」という意味も持ちます。
「口達者な、おしゃべりな」という意味の英単語では、「voluble」も挙げられます。たとえば「voluble tongue」は「よく回る舌」という和訳が可能です。
The eyes are more eloquent than the lips.
目は口ほどにものをいう
まとめ
「舌先三寸」とは「口先だけの巧みな物言い」という意味で、「心のこもっていない、うわべだけの言葉」「口先だけであしらうこと」を表します。似た表現に「口先三寸」と表現される例がありますが本来は誤りです。ただし、多くの人が使用していること、また時代と共に言葉の使い方は変わることから、今後許容されることも考えられます。
彼女に舌先三寸で言いくるめられ、高い買い物をしてしまった。