「不世出」の意味とは?不世出の英雄や類語と誤用しやすい使い方も

「不世出」は「不世出の才能」などの表現で相手を褒め称えるニュアンスで用いられる熟語です。この「不世出」という語の詳しい意味と読み方をはじめ、その使い方について解説します。またよくある誤用例のほか、類語や英語訳といった関連用語についても紹介しましょう。

「不世出」の意味とは

「不世出」とは「滅多にないほど優れている」の意味

「不世出」とは「極めて優れている」という意味です。もう少し詳しくいうと「滅多にないほど優れている」というニュアンスが特徴で、「1000年にひとり」「1万人にひとり」のように滅多に世に出てこないほどの優れた何かを意味する表現です。

「不世出」という熟語の漢字を紐解いてみると、「不世出=世に出ることがない」と解釈することができます。これが語源となり「滅多にないほど優れている、極めて優れている」という意味になったとされています。

「不世出」の読み方は「ふせいしゅつ」

「不世出」は「ふせいしゅつ」と読みます。「ふせしゅつ」「ふよしゅつ」などと読むのは誤りです。「不世出」の漢字すべてが複数の読みを持つため、どの読み方が正しいか迷う人も多いですが、「ふせいしゅつ」という読みをしっかりと覚えておきましょう。

「不世出」の使い方と例文

「不世出の天才」「不世出の英雄」と評価する

「不世出」は、才能が飛び抜けて優れている様を褒めるニュアンスで用いられます。たとえば「不世出の天才」は「滅多にいないほどの天才」ということを意味しています。「不世出の英雄」として、歴史に名を残した人物を讃えることもできるでしょう。

例文
  • 彼は不世出の才能を持つとして、メディアに引っ張りだこだ
  • 〇〇さんは、不世出の英雄として当時から民衆にも人気があった

「世間に認められなかった」という使い方は誤用

「不世出」は極めて優れている様に対して使う表現のため、「優れた才能を持ちながら世間には認められなかった、評価をされなかった」といったニュアンスで使うのは誤用です。

たとえば、現代では画家として有名なゴッホは生前に売れた絵はたった一枚しかなく、死後その才能と価値が評価されたことでもよく知られています。「世間からは認められなかった天才」というニュアンスで「不世出」を使うことはできません。

また、皮肉をこめて「こんなミスは、ある意味不世出だと思う(=ありえないミスだ)」と用いられることがありますが、ネガティブな意味で「めったにない」と使うのも誤用になると覚えておきましょう。

「不世出」の類語とは

「不世出」の類語は「希代(稀代)」

「不世出」の類語は「希代」です。「希代」は「きたい」と読み、「世にもまれなこと、滅多に見られないこと」という意味です。もともと「稀代(きたい)」の表記で用いられていましたが、「稀」が常用外漢字であるため「希代」の表記の方がよく目にします。「希代」「稀代」は、いずれも書き言葉として主に用いられます。

「絶世」とは「並ぶものがないほどに優れていること」

「絶世の美女」のように、女性の美しさを褒めることがあります。この「絶世」も「不世出」の類語です。「絶世(ぜっせい)」とは「この世に他に並ぶものがないほど優れていること」という意味があります。

「卓越した」「ずば抜けた」にも言い換えられる

「不世出の〇〇」という表現は、身近な表現では「卓越した」「ずば抜けた」などに言い換えることができます。「卓越した」とは「通常とはかけ離れて優れていること」という意味で、「不世出」と同様に「極めて優れている様」を表す語の一つです。

他にも「抜きん出た」「突出した」なども類語や言い換え表現として使うことができるでしょう。

「不世出」の英語訳とは

英語訳には「unparalleled」「rare」を使う

「不世出」の英語訳では「unparalleled」「rare」「extraordinary」などの単語を使った表現が可能です。いずれも、並ぶものがない、めったにない、並外れたなどといった意味を持つ単語です。

例文

Unparalleled pianist.
不世出のピアニスト

「不世出」は「have no peer」と英語訳する例も

「peer」には「地位や能力などが同等のもの、同輩、仲間」などの意味があり、「have no peer」の形で「同等のものがいない=不世出」というニュアンスで使うことができます。

As a pianist, she has no peer.
ピアニストとして、彼女に並ぶ人はいない

まとめ

「不世出」とは「滅多にないほど優れていること」という意味で、「1000年に1人の逸材」のようになかなか世に出てこないような才能を褒め称える表現として用いられます。「優れている」というニュアンスを含むため、皮肉をこめて使う場合を除きネガティブな事柄に対して使うことはできません。やや硬い表現なので、会話では「卓越した」「ずば抜けた」などの類語に言い換えることが多いでしょう。