「アンチテーゼ」という言葉はドイツの哲学用語を語源としており、耳にしたことはあっても正しい意味や使い方を知っている方はあまり多くないかもしれません。この記事では「アンチテーゼ」の意味や語源について、わかりやすく説明します。また、「アンチ」との違いや具体的な使い方、類語などについても紹介します。
「アンチテーゼ」の意味とは?
アンチテーゼとは「反対の意見、対立する理論」
アンチテーゼとは、わかりやすく言うと「反対の意見、対立する理論」という意味です。肯定的な主張に対し、否定する主張を「アンチテーゼ」と呼びます。
「アンチテーゼ」の特徴は、主張を頭から完全に否定するのではなく「ある程度認めたうえで、反対の意見を述べる」ことです。
「アンチ」と「テーゼ」にそれぞれ意味を分けて考えると、「アンチ」とは「反対、対抗」、「テーゼ」とは「ある物事を肯定的に主張すること、定立」となります。
「アンチテーゼ」の語源は哲学用語
「アンチテーゼ」の語源はドイツ語の「antithese」で、発音はそのまま「アンチテーゼ」と読みます。「アンチテーゼ」は、哲学用語として「反定立」「正反合」という意味で使われています。
「反定立」とは、あることを肯定的に主張する「定立」に対して、それを否定する主張という意味です。哲学者ヘーゲルが説いた「弁証法」という手法を構成する要素として用いられています。
「アンチテーゼ」の使い方と例文
「アンチテーゼ」で自分の意見を述べる
議論や討論の場で「アンチテーゼ」を使って意見を述べることがあります。その場合、相手の主張を認めたうえで、多角的な視点から意見を述べることがポイントです。
「全否定」との違いは「主張を肯定するかしないか」
「アンチテーゼ」と似たニュアンスで用いられる表現のひとつが「全否定」です。「アンチテーゼ」は、肯定的な主張を受け入れたうえで反対意見を述べます。しかし、「全否定」の場合は相手の主張を受け入れずに否定するという違いがあります。
テーゼ(肯定的な主張):犬はかわいいから誰からも愛されている
- アンチテーゼ
確かに犬はかわいいかもしれないが、それは主観によるものが大きく誰からも愛されているとは限らない - 全否定
犬が誰からも愛されているはずはない
「アンチ」との違いは「特定の対象」や「攻撃的な批判」
「アンチテーゼ」は「アンチ」と「テーゼ」に分けられますが、「アンチ」単体で使う場合、特定の事柄や対象を嫌ったり反発、反対する人を指す意味で用いられています。
インターネットやSNS上で、特定の個人や団体、製品に対して攻撃的な言葉で批判する人のことを「アンチ」と呼ぶことがあります。こうした変遷を経て、現代では「アンチ」は単に「反対、対抗」だけでなく攻撃的な意味や感情が含まれた言葉として使われています。
「アンチテーゼ」は「相手の意見を肯定しつつ、反対意見を述べること」であり、「アンチ」の言葉が持つ「特定の事柄を嫌ったり反対する」という意味はありません。混同して使わないよう気をつけましょう。
「アンチテーゼ」の類語や反対語とは?
「アンチテーゼ」の類語は「反対意見」「反論」
「アンチテーゼ」の類語には、「反対意見」や「反対理論」「反論」などがあります。「反対意見」は、文字通り特定の物事について否定する意見のことを指します。
- 彼らの作り出す音楽には、現代社会への反論を唱えたものが多い
- 都会志向への反対意見として、田舎への移住が増えている
「アンチテーゼ」の反対語は「テーゼ」
「アンチテーゼ」の反対語は「テーゼ」です。アンチテーゼは、「テーゼ=主題」という言葉と「反対の」という意味がある「アンチ」からできています。
「テーゼ」とは、問題に対する正しい主張を意味する哲学用語です。ちなみに、「テーゼ」には「主義・主張」「理論」といった意味のほか、「政治運動の活動方針となる綱領」という意味も含まれています。
「アンチテーゼ」の英語表現とは?
「アンチテーゼ」は英語で「antithesis」
「アンチテーゼ」は英語で「antithesis」と表現します。
「antithesis」は「正反対、対照」という意味の名詞で、「with antithesis(正反対で)」のように使われます。哲学用語の「反定立」「アンチテーゼ」の意味でも使用可能です。
「アンチテーゼ」の英語表現を使った例文
- Her theory is the antithesis of mine.
彼女の意見は私とは全く反対だ - Life is the antithesis of death.
生は死とは正反対のものである
まとめ
「アンチテーゼ」は「相手の意見を肯定しつつ、反対意見を述べること」です。「アンチテーゼ」の言葉そのものを文章中で使うこともあれば、議論・討論の場で意見を述べる際のひとつの手法という意味合いも持っています。
「特定の事柄を嫌ったり反対する」という意味を持つ「アンチ」とは意味が異なりますので、混同して使うことのないように気をつけましょう。
アンチテーゼ:確かに寿司は多くの日本人に好まれているが、生魚が苦手な人もいるため国民食とは言い切れない
アンチテーゼ:確かに海外のお菓子には甘いものが多いが、そうでないものもたくさんある