「扶養家族」の条件とは?共働きや別居・一人暮らしの場合も解説

仕事をしていると「扶養家族」の有無やその人数を問われることがあります。この「扶養家族」は税金控除や健康保険に関わるものですが、具体的にはどういった人がどういった条件で認められるのでしょう。共働きや別居の場合など、「扶養家族」として気をつけたいポイントと併せて解説します。

「扶養家族」の意味とは

「扶養家族」とは「自分の収入で養っている家族」のこと

「扶養家族」とは「自分の収入で養っている家族」を意味します。

「扶養家族」の「扶養」とは「助け養うこと、生活できるよう世話をすること」という意味で、自分で生活することが難しいため家族などから経済的な援助を受けることを指します。

「扶養家族」は簡単に言うと妻や子供、親

「扶養家族」の代表例は配偶者や子供で、親が高齢になり退職すると親を「扶養家族」とすることもあります。この「扶養家族」となるには、年齢や収入などの条件をクリアしなければなりません。

「扶養家族」は所得税法と健康保険法で定義が異なる

「扶養家族」の有無は課税所得の軽減や保険料の免除などに関わります。その条件は税法上の扱いは所得税法で、社会保険に関わるものは健康保険法でそれぞれ定義されています。

なお、特に指定をせずに「扶養家族」を話題にする際には、健康保険上の被扶養者を指すのが一般的です。

所得税における「扶養家族」の範囲とメリット

「扶養家族」は税金の控除が受けられる

所得税法における「扶養家族」は「扶養親族」と呼ばれます。所得税法における「扶養家族」に認められた場合、扶養控除を受けることができます。

所得税法では配偶者は「扶養家族」ではない

税法上の「扶養家族」は、6親等内の血族および3親等内の姻族と定義されています。

たとえば自分のきょうだいや叔父叔母なども税法上の「扶養家族」の対象ですが、ここに「配偶者」は含まれません。配偶者は「配偶者控除」として所得控除を受けることができます。

16歳以上で生計を一にしていることが条件

税法上の「扶養家族」は、上記に加え16歳以上であること、生計を一にしていることが条件となります。中学生以下は扶養していても税法上の「扶養家族」には認められないため、扶養控除の対象ではありません。

また、「生計を一にしている」とはその者の収入で暮らしていることを意味します。仮に進学等で別居しても仕送りをするなどして養っていれば、法的には「生計を一にしている」と認められます。

年収103万円以下が対象に

もうひとつ、税法上の「扶養家族」となる大きな要件のひとつが年収です。税法上の「扶養家族」となるには、給与所得のみの場合で年収103万円以下(合計所得金額48万円以下)が条件となります。

加えて青色申告者の専従者(家族従業員)として給与の支払いを受けていないこと、白色申告者の専従者ではないことが条件です。

社会保険における「扶養家族」の範囲とメリット

被扶養者は健康保険料の免除と保険給付の対象に

社会保険における「扶養家族」は、健康保険法では「被扶養者」と呼ばれます。健康保険の「扶養家族」に認められると、自ら健康保険料を納めることなく保険証を持つことができます。それに伴い、医療費の自己負担を抑えることができるようになります。

75歳未満で生計を維持されている3親等内の親族

健康保険法上の「扶養家族」は3親等内の親族で、生計を一にしていることが条件です。つまり被保険者の直系尊属(父母・祖父母)、配偶者と子、孫、兄弟姉妹が対象となります。

生まれた時から健康保険証が受け取れるように、生まれたばかりの赤ちゃんでも「被扶養者」として健康保険における保険給付が可能です。ただし、75歳以上になると「後期高齢者医療制度」に移行するため、被扶養者からは外れます。

「内縁の妻」も配偶者に含まれる

健康保険における「扶養家族」には、配偶者はもちろん「内縁の妻」と呼ばれる事実婚状態にある人も含まれます。健康保険における「扶養家族」は生計を共にしていることが重視されるのが特徴で、所得税法とはこの点で大きく異なります。

年収の条件は130万円未満が条件

健康保険法においては年収130万円未満であることが「扶養家族」となるための条件(60歳以上の場合や障害がある場合などは180万円未満)です。加えて、被保険者(扶養している人)の年収の半分未満であることが求められます。

この年収の条件を税法上の「扶養家族(扶養親族)」の条件である年収103万円以下と比べると、所得税法上の「扶養家族(扶養親族)」とはなれなくても、健康保険での「被扶養者」にはなれる場合があることがわかるでしょう。

「扶養家族」として気を付けること

共働きの場合、子供は収入が多い方の扶養に

共働きの場合、子供を父と母のどちらの「扶養家族」とするかが問題になることがありますが、年収が多い方の扶養とするのが一般的です。夫婦の年収が同程度の場合は、主として生計を維持する方の扶養とします。

妻がパートの場合は年収に注意

妻(配偶者)がパートに出るなどして収入を得る場合、その額によっては「扶養家族」ではなくなります。そのため、税法上の「配偶者控除」を受けたい場合は年収103万円以下に、健康保険上の被扶養者でありたい場合は年収130万円未満におさえる必要があります。シフトに入る時間数を制限する必要もあるため、あらかじめ雇用主に相談するのがベターです。

子供が一人暮らしを始めたらバイト収入に注意

子供が進学し、ひとり暮らしを始めた場合でも仕送りの事実などから経済的に養っていると判断されれば、「扶養家族」であることに変わりはありません。ただし子供がアルバイトなどで収入を得る場合には注意が必要です。

たとえばアルバイトで月に10万円の収入を得た場合、年間の給与収入は120万円です。この場合税法上の「扶養親族」の条件を満たさないため、扶養控除の対象とはなりません。

親の年金も収入に加算される

年金受給者である親を「扶養家族」とする場合、年金所得もまた年収の条件の対象となります。

収入が公的年金のみの場合で基礎控除や公的年金等の控除を考慮すると、65歳未満の場合108万円以下、65歳以上の場合158万円以下の場合は扶養となることができます。

健康保険法も同様で、60歳以上の場合は年収180万円以下という条件を満たせば被扶養者となることが可能です。ただし、健康保険に関しては75歳未満が条件であるため75歳以上の場合は扶養家族とすることはできません。

「扶養家族」の書き方

「扶養家族数(配偶者を除く)」は子や父母をカウント

「扶養家族」の記入を求められた場合、一般には健康保険の被扶養者に該当する人、人数を記入します。ただし、「扶養家族数(配偶者を除く)」とあった場合には少し注意が必要です。

健康保険法上、内縁状態にある場合も「扶養家族」と認められると記述しましたが、厳密には「配偶者」ではないため「扶養家族数(配偶者を除く)」の場合はカウントします。その上で備考欄に「未届けの妻(夫)」と記載するのが通例です。

年末調整後の変更にも注意を

「扶養家族」は社内手続きでは年末調整で大きくかかわりますが、書類を提出した後に変更があった場合には注意が必要です。年末調整はその年の最後の給与支払い日の現況で判断されますが、税法上はその年の12月31日の現況で判定を行います。そのため、年末にかけて変更があった場合には速やかに関連部署に報告が必要です。

まとめ

「扶養家族」とはわかりやすく言うと「自分の収入で養っている家族」のことです。この「扶養家族」は税法上と健康保険法上とでは収入の条件などが異なります。なお、履歴書等で「扶養家族」を問われた場合は、健康保険法における「被扶養者」となる家族を回答して問題ありません。