「司法書士」「行政書士」の業務とは?難易度・年収など違い解説

「司法書士」と「行政書士」はどちらも法律業務を担う業務独占資格ですが、どのような違いがあるのでしょう。その業務内容をはじめ、試験や難易度、年収などそれぞれの資格の特徴について解説します。また両方取得するダブルライセンスや宅建、社労士を加えたトリプルライセンスの可能性についても紹介しましょう。

「司法書士」と「行政書士」の違いとは

わかりやすく言うと業務の範囲が違う

「司法書士」と「行政書士」はいずれも法律に関する業務を担う資格ですが、簡単に言うと担当業務の範囲が異なります。「司法書士」は文字通り司法に関する業務を、「行政書士」は行政(役所)に提出する書類作成が主な業務です。

「司法書士」「行政書士」はいずれも国家資格

「司法書士」と「行政書士」は担当業務は異なりますが、どちらも「業務独占資格(独占業務資格)」と呼ばれる国家資格です。これは特定の業務において、その資格を有している者だけが可能な業務を意味します。その資格を持つ人だけが任される特別な業務ともいえるでしょう。

「司法書士」とは

主な担当業務は相続や不動産登記など登記業務

「司法書士」は「くらしの法律家」とも呼ばれ、不動産登記や商業登記といった登記業務でよく知られます。加えて、成年後見業務や遺言書作成、相続に関する相談を受けるといった業務も「司法書士」の仕事です。

「司法書士」の管轄は法務省

「司法書士」を管轄しているのは法務省です。そのため「司法書士」が作成する書類も法務省に提出するものがメインとなります。

法務大臣の認定を受けた「認定司法書士」になると、簡易裁判所において取り扱われる民事事件について代理業務を行うことができます。ただし、訴訟額が140万円を超えない請求事件に限ります。

試験は筆記と口述、合格率3~4%と難易度高め

「司法書士」の試験は例年7月で、筆記試験と口述試験の2種類です。筆記試験の試験科目は民法や商法、商業登記法、不動産登記法といった主要4科目をはじめとした11科目です。合格率は例年3~4%台と低く、難易度が高い試験であることが伺えます。

なお、試験に合格する他、認可を受けて「司法書士」となる方法もあります。たとえば裁判所事務官の場合は10年以上の実務経験を経て「司法書士」としての認可を受けることができます。しかし司法書士試験を受けるよりも難易度が高いため、一般的な方法ではありません。

年収の目安は700万円前後?

「司法書士」の年収に関してはいろいろな情報がありますが、一概にどの程度というのが難しいのが実状です。実績だけでなく、勤務地(地方か都市部か)や事務所の規模によって、さらには企業勤めか独立開業かなどでも収入は大きく変わります。特に独立開業して多くの顧客を獲得できた場合には年収1,000万円以上稼げる可能性も高まりますが、「司法書士」になってすぐに高年収が得られることは少ないです。キャリアを積むことで年収が上がるのは他の職業と共通しています。

「行政書士」とは

営業許可など許可・認可に関する書類作成が主業務

「行政書士」は飲食店の営業許可や建設業の建築許可といった許可・認可に関する書類作成が主な業務です。また権利業務・事実証明に関する書類作成や在留資格認定証明書など外国人に関する書類作成も「行政書士」の仕事です。こうした書類手続きの代理・代行、その相談といった業務を担います。なお、管轄省庁は「総務省」です。

上記のような「行政書士」の業務のうち、帰化許可申請や検察審査会への書類作成などは、「司法書士」でも行える共同独占業務でもあります。

試験は筆記のみ、合格率は平均10%前後

「行政書士」の試験は筆記試験のみです。試験は年1回、例年11月に行われます。「行政書士」は法律系資格の登竜門とも言われ、比較的手を付けやすい資格かもしれません。合格率は年度によってややばらつきがあるものの平均すると10%前後といったところです。

年収の目安は300~500万円?

「行政書士」の年収もばらつきがあり一概には言えませんが、大体300~500万円前後と言われています。「司法書士」同様に独立開業するかどうかや勤務地、顧客の数によっても収入は変わってきます。

「弁護士」資格があれば「行政書士」に登録可能

「弁護士」資格を有する者は「行政書士」としての登録が可能です。他にも公認会計士や税理士の資格を有する者も「行政書士」として登録することができます。

ちなみに「弁護士」の資格があればあらゆる法律に関する業務ができるため、「弁護士」は「司法書士」の業務を行うことも可能です。ただし「司法書士」として登録することはできない点がポイントです。

「行政書士」と「司法書士」どっちがいい?

どちらが上、といった優劣はない

「行政書士」と「司法書士」はどちらが上?と比較されやすい資格です。両者は担当する分野こそ違いますが、どちらも独占業務を持つ専門資格であり上下や優劣がつけられるものではありません。

どっちが稼げるかは需要によっても変化する

どちらが上?と同じくらい興味を引くのがどちらが稼げるのか?という点でしょう。これもまた状況によりけりで、勤務地や取引先の数、開業しているかどうかによって変わってきます。ただし、両者を同条件で比べた場合の年収に大きな差はないと言われています。

「司法書士」「行政書士」のダブルライセンスも多い

「司法書士」と「行政書士」はどちらの資格をとるべきか悩む人が多い一方で、両方の資格取得を目指す人も少なくありません。いわゆるダブルライセンスです。

顧客目線で考えると、様々な手続きをまとめて依頼できる方が利便性が高く、自ずと信頼性も高まります。顧客からの依頼を増やし、活動の場を広げるという意味でもダブルライセンスは大きなメリットになるでしょう。

宅建や社労士を含めトリプルライセンスでの活躍例も

さらに業務の幅を広げるという意味で宅建(宅地建物取引士資格)や社労士(社会保険労務士)などの国家資格を加え、トリプルライセンスとして活躍する人もいます。

ダブルライセンスでもトリプルライセンスでも複数の試験を同時に目指すことは可能ですが、難易度の高い資格を意識して勉強を始めると効率的かもしれません。

まとめ

「司法書士」と「行政書士」はいずれも国家資格で、「司法書士」は相続や不動産登記などの登記業務を、「行政書士」は営業許可など許可・認可に関する書類作成が主な業務です。互いに独占業務を持つ資格ですが、一部共通して担う業務もあります。

比較されやすい資格ですがどちらが上、と優劣があるわけではありません。仕事の幅を広げる意味でダブルライセンスとして両方の資格を取得、活躍する人が多いのも特徴です。