「心頭滅却」の意味と使い方とは?語源や類語と対義語「煩悩」も

「心頭滅却」は「心頭滅却すれば火もまた涼し」というフレーズからなる四字熟語です。歴史的な背景がいくつかあるため「もともとは誰の言葉なのか」と話題になることもあります。

「心頭滅却」の意味と使い方をはじめ、「心頭滅却すれば火もまた涼し」や誰の言葉なのかについても解説します。また「心頭滅却」の類語・対義語、英語訳もあわせて紹介しましょう。

「心頭滅却」の意味と語源とは

「心頭滅却」とは「心を無にすること」の意味

「心頭滅却」とは、わかりやすくいうと「心を無にすること」という意味です。「しんとうめっきゃく」と読みます。

「心頭」には「心、胸の内」という意味が、「滅却」には「消え滅びること、消し滅ぼすこと」という意味があります。「心を失くす」というよりは、心が無の境地に達し、余計な考えが取り払われた状態を指して「心頭滅却」と言います。

「心頭滅却」は焼死した恵林寺住職の辞世の句に

「心頭滅却」は誰の言葉として知られているかというと、戦国時代の僧「快川紹喜(かいせんじょうき)」の辞世の句です。1582年、武田側の恵林寺の住職だった快川は、武田勝頼が織田・徳川の軍勢に敗れた際「心頭滅却すれば火もまた涼し(火自ずから涼し)」という言葉を唱え焼死したとされています。

「心頭滅却」の語源・由来は中国の詩人「杜筍鶴」

日本では、快川の辞世の句として知られる「心頭滅却すれば火もまた涼し」ですが、もともと中国の詩人「杜荀鶴(とじゅんかく)」による一節です。このフレーズ(転結句)は、中国の仏教書であり禅宗の語録『碧巌録(へきがんろく)』にも記載されています。

「心頭滅却」は禅の考え方に通じる言葉

「心頭滅却すれば火もまた涼し」は、快川の辞世の句であることは先述しましたが、快川がこの言葉を選んだ理由は、禅に通じるためだと推測できます。

「心頭滅却すれば火もまた涼し」の「火」は、広い意味で「煩悩」を指します。つまり、煩悩に対して自分の心を整えることで向き合い、受け入れていくという禅宗の教えを表しているのです。

「心頭滅却」の使い方と例文

「心頭滅却すれば火もまた涼し」と使うことが多い

「心頭滅却」は「心頭滅却すれば火もまた涼し」のフレーズで用いられるのが一般的です。直訳すると「心が無の境地に至れば、火でさえも涼しく感じる」という意味ですが、「心が無の境地に達することで、苦しみでさえそう思わなくなる」ことの例えとして用いられています。

つまり、心が無に達することで困難な状況下でも苦しく感じない、というニュアンスになるのです。

「心頭滅却して」「心頭滅却すれば」という使い方も

「心頭滅却」は上記以外にも「心頭滅却して~する」や「心頭滅却すれば…」といった使い方も可能です。それぞれ、「心を無にして~する」「心を無にすれば…」という意味になります。

たとえば「心頭滅却すれば耐えられるはずだ」は、先述の「心頭滅却すれば火もまた涼し」と同じニュアンスにとれるでしょう。

例文
  • 余計なことは考えず、心頭滅却して臨むべきだ
  • 心頭滅却すれば、自ずといま必要なことが見えてくるだろう

「心頭滅却」の類語とは

四字熟語の類語は「無念無想」「明鏡止水」

「心頭滅却」と同じ意味の表現では、「無念無想」や「明鏡止水」が挙げられます。

「無念無想(むねんむそう)」とは「無我の境地に入り、すべての想念から離れること」を、「明鏡止水(めいきょうしすい)」は「よこしまな心がなく、明るく澄み切った心境」を意味します。いずれも雑念に惑わされない無我の境地を表す仏教用語です。

「心頭滅却」は「無の境地」と言い換えも

「心頭滅却」は「無の境地」と表現することもできるでしょう。「無の境地」とは本能から解き放たれ心の迷いが打ち消された状態を指します。雑念のない状態も意味する表現で、「心頭滅却」の類語表現に当たります。

「心頭滅却」の対義語とは

「心頭滅却」と逆の意味がある「煩悩」

「心頭滅却」と逆の意味を持つ語には「煩悩」が挙げられます。「煩悩(ぼんのう)」とは「人を苦しめ煩わせる心、人の心をかき乱す欲望」という意味です。心を無にする「心頭滅却」に対し、悩ませるものである「煩悩」は対義語ということができるでしょう。

四字熟語の対義語は「疑心暗鬼」「意馬心猿」

対義語として使える四字熟語には、「疑心暗鬼」や「意馬心猿」などがあります。

「疑心暗鬼(ぎしんあんき)」とは「疑いの心があるとなんでもないことまで怖いと思ったり疑わしく感じたりすること」という意味です。一方「意馬心猿(いばしんえん)」とは「落ち着かない心をおさえられないこと」を表します。

「心頭滅却」の英語訳とは

「心頭滅却」の英語訳は「clearing one’s mind」

「心頭滅却」は英語では「clearing one’s mind」と表現することができます。「clear」には「無駄なものを取り除く」という意味があり、「clear one’s mind」で「雑念を払う」というニュアンスでも使用されます。

また「心を空にする」という意味で「empty one’s mind」という表現を英訳として使うことも可能です。

「心頭滅却」の英語訳を使った例文

  • Clear your mind, and you will find something you need.
    心頭滅却すれば何が必要か分かるだろう
  • Clear your mind of all mundane thoughts, and you will find even fire cool.
    心頭滅却すれば火もまた涼し(慣用表現)

まとめ

「心頭滅却」とは「心を無にすること」という意味で、日本では「心頭滅却すれば火もまた涼し」という表現でよく知られています。これは戦国時代の僧「快川」の辞世の句で、「心を無にすれば火もまた涼しく感じる」と心を無にすることで困難なこともそう思わなくなることの例えとなっています。

なお、「心頭滅却すれば火もまた涼し」という一節は中国の詩人による言葉に由来し、その教えは中国の仏教書にも記されています。