近年「働き方改革」「ワークライフバランス」など仕事の仕方に対して注目が集まることが多いですが、「ノー残業デー」もそのひとつとでしょう。「ノー残業デー」の目的や言い換え表現、メリット・デメリットを解説します。また「ノー残業デーはおかしい、廃止すべき」と言われる理由や形骸化を防ぐポイントも紹介します。
「ノー残業デー」とは
「ノー残業デー」は「全社をあげて残業しない日」のこと
「ノー残業デー」とは文字通り「全社をあげて残業しない日」を指します。
企業が従業員に残業をしてはいけない日として提示するのが「ノー残業デー」で、その日は定時で仕事を終え、残業せずに全員が退社します。
「ノー残業デー」は水曜日が多いのはなぜ?
「ノー残業デー」は週に1~2日程度の設定が一般的です。何曜日に設定するのかは企業の自由ですが、水曜や金曜とする例がよく聞かれます。特に水曜日に集中しやすく、官公庁で「ノー残業デー」を水曜とすることが多いことにならう企業、中だるみしやすい週の真ん中に設定しようとする企業が多いことが伺えます。
「定時退社日」「早帰りの日」と言い換える企業も
「ノー残業デー」は企業によってその呼び名も様々です。たとえば「定時退社日」や「早帰りの日」として定時での退社を促す企業もあります。
「ノー残業デー」はなぜおかしい?
残業を前提とするのはおかしいとの指摘も
「ノー残業デー」は働き方改革とあわせて推奨されているものの、一方で「ノー残業デーはおかしい」という声もあります。というのも「ノー残業デー」は裏を返せば残業が当たり前、残業を前提とした制度であるからです。
そもそも、残業するのではなく自分でタスクを管理し定時で業務を納めるようにするのもマネジメント力のひとつです。そういった意味でも「ノー残業デーをわざわざ作るのはおかしいのでは?」という意見が出るようです。
「ノー残業デー」を廃止する企業も
「ノー残業デー」が推奨される一方で、上記の理由などから「ノー残業デー」を廃止する企業もあります。たとえば「ノー残業デー」として固定の曜日を指定するのではなく、従業員が定時で帰りたい日に帰れるように自分で自由に決められる制度を導入した企業の例も聞かれます。
またフレックス制度の導入と共に全社一斉の「ノー残業デー」を廃止する例もあるようです。「ノー残業デー」の廃止で残業を推進するのではなく、より前向きなスタイルに変える例が目立ちます。
「ノー残業デー」のメリット・デメリット
メリットはプライベートの充実
「ノー残業デー」の一番のメリットは、就業時間が減ることで自分の時間、プライベートな時間が充実することです。従業員が精神的に満たされることで、仕事にも良い影響が考えられます。周囲を気にせず、堂々と定時退社できることも精神的な充実につながるでしょう。
タイムマネジメントの意識が高まるのも利点
定時で帰れる日があっても仕事は待ってはくれません。そのため「ノー残業デー」があってもいかに仕事を回すか、業務の効率化について従業員が考えるきっかけにもなります。こうしたタイムマネジメント意識の高まりもメリットのひとつです。
企業には残業代削減というメリットも
残業する時間が減るということは残業代も削減できるということです。加えてオフィスの光熱費等も減額できるなど、企業としてはコストが削減できるというメリットがあります。
デメリットは突発的な依頼に対応できないこと
「ノー残業デー」のデメリットは突発的な依頼に対応が難しい点でしょう。いつもなら定時後に前倒しで対応することがあっても、定時で退社したらそれもできなくなります。
他の日が「残業OK」と認識される懸念も
「ノー残業デー」を取り入れたことで、「ノー残業デーじゃないから残業しても大丈夫だろう」と誤った認識につながることもあります。他の日に残業時間が増えてしまわないよう「○曜日だけ残業できない」ではなく、自分の業務をマネジメントし、定時内で終わらせるような啓発が求められます。
「ノー残業デー」の運用、そのポイントは?
「ノー残業デー」は形骸化しないことが大切
「ノー残業デー」の運用で問題視されるのがその形骸化です。「ノー残業デー」が飾りにならないように、会社側が半ば強制的に残業をできないような仕組み作りが求められます。
周知・案内の工夫が必要、ポスターよりも上司の行動が○
形骸化を防ぐためにも、まずは周知・案内の徹底が大切です。ポスターも効果がないわけではありませんが、一番は上司が率先して定時退社をする姿勢でしょう。当日は朝から部下の進捗を確認するとともに、定時退社に問題があるスタッフを把握してフォローするのも効果的です。
また定時で消灯する、PCをシャットダウンするなど物理的に仕事ができない環境を作る例もあります。
全社一斉ではなく交代制にするのもひとつの手法
「ノー残業デー」は物理的に顧客対応が難しいのは事実です。その意味では全社一斉ではなく交代制にするのもひとつの方法です。特に顧客対応が多い部署ではあらかじめシフトを組む要領で「ノー残業デー」を設定するのもいいでしょう。
また月末最終日と「ノー残業デー」が重なる場合など繁忙期で定時退社が難しい場合は、その週に限り「ノー残業デー」を週内で移動させるなどの対策も効果的です。
「ノー残業デー」の英語訳とは
「ノー残業デー」は英語で「No overtime day」
「ノー残業デー」は英語で「No overtime day」と表現します。「overtime」には「時間外労働、残業」という意味があり、「no overtime day」で「残業のない日」という意味になります。また「No overtime Wednesday」のように曜日を入れて使うことも可能です。
「ノー残業デー」の英文例
- Today is a no overtime day.(本日はノー残業デーです)
- There is no overtime on Friday.(金曜日はノー残業デーです)
- There’s no overtime allowed at my office on Friday.(金曜日は私たちの会社はノー残業デーです)
まとめ
「ノー残業デー」とは文字通り「残業をしない日」を指します。水曜日に設定する企業が多いですが、何曜日にするかは企業が独自に定めます。
「ノー残業デー」はワークライフバランスの観点からも推奨されるべき制度ですが、日々の慌ただしい業務に埋もれて形骸化しやすいのが懸念点です。従業員のタイムマネジメントの意識向上を狙うとともにフレキシブルな「ノー残業デー」にすることで企業と従業員共にメリットの高い制度とすることができるでしょう。