「重畳」の意味とは?重畳至極や重畳適用の使い方と類語「僥倖」も

「重畳たる山々」とは壮大な自然を表しますが、他にも「重畳する」「重畳している」や「重畳的債務引受」と使うこともあります。この「重畳」の意味や読み方をはじめ、使い方について解説します。時代劇で用いられる特有のニュアンスや類語との違い、英語訳についても併せて紹介します。

「重畳」の意味と由来とは

「重畳」とは幾重にも重なっているという意味

「重畳」とは「幾重にも重なっていること」という意味です。加えて「ますます重なること」「かさねがさね」などの意味も持つ熟語です。

「この上なく喜ばしいこと」という意味も

「重畳」には「この上なく喜ばしい事、極めて満足なこと、頂上」という意味もあります。この意味では感動詞的な使い方をするのが特徴ですが、一般には上記の「幾重にも重なっている」という意味での使用が主です。

「重畳」の由来は「重」と「畳」の意味

「重畳」意味は「重」と「畳」というそれぞれの漢字の意味に由来します。実は「畳」の字にも「かさねる」という意味があり、同じ意味の漢字を並べることで強調され「幾重にも重なること」という意味になります。

また、「重畳」の「この上なく喜ばしい事」という意味は「畳(たたみ)」が昔は高級品だったことに由来し、「畳が重なる=高級品が重なる=大変喜ばしい事」と意味が転じたとされています。

読み方は「ちょうじょう」誤読しやすい「じゅうたん」

「重畳」の正しい読み方は「ちょうじょう」です。「重」の字は「じゅう」とも読むこともできますが、この場合は「ちょう」という読みを当てます。一方「畳」は、「一畳、二畳…」と数えるように「じょう」と読むのが正しいです。

「重畳」の使い方と例文

「重畳する」「重畳している」と使う

「重畳」は「重畳する」「重畳している」などの形で「幾重にも重なる様」を表します。

例文
  • 鮮やかな新緑の葉が、重畳している
  • 重畳する様が見事に描かれた絵画だ

「重畳たる○○」は壮大な様を表す

「重畳たる○○」という使い方では、主に自然の壮大さを表します。たとえば「重畳たる山岳」「重畳たる岩石」といった描写で、山々や岩石が重なる壮大な風景を伝えることができます。

「重畳たる○○」の「たる」は、断定の意味を持つ「たり」が変化したものです。そのため「重畳」のニュアンスをより強調する働きがあります。

例文

重畳たる山岳を、ただひたすらに眺めるのが私の楽しみだ。

「それは重畳」「そいつは重畳」は時代物でよく使う

「重畳」は基本的には「幾重にも重なる様」を表します。「この上なく喜ばしいこと」という意味での使い方は、主に時代劇や時代小説などに限られます。

たとえば「それは重畳!」「そいつは重畳!」のような感動詞的な使い方です。「それは上出来だ!」「結構だ!」と満足した様を表しています。ただし、この場合は目上から目下に使う特徴があり、殿様が家来に対して使うのが正しい使い方です。

「重畳至極」「重畳の至り」という使い方も

「重畳至極」や「重畳の至り」はいずれも「重畳」をさらに強める言い回しです。たとえば「重畳至極じゃ」と殿様が言えば、この上なく満足していることを示しています。

「重畳重畳」のように重ねて使うことも

目下の者が「重畳の至りにございます」と殿様に告げた際に、「重畳重畳」と殿様が返す例があります。これは目下の発言に同意を示し「上出来、上出来」といった意味合いです。目下に褒め称えられ、さらに満足するような様がイメージできるでしょう。

「重畳」の各分野での使い方とは

「重畳的債務引受」とは債務に関する契約

「重畳的債務引受」とは「第三者が、債権者と一緒に債務を引き受けること」という意味です。債務を引き受ける人が債務者と同等の債務を負うことを指します。そのため、債務者の債務に対する責任が免除されるわけではありません。

よくある例が相続です。相続人全員に分配される債務を一人の相続人が引き受ける場合でも、他の相続人の債務も免除されない、ということになります。

「重畳適用」とは条文を重ねて適用すること

「重畳適用」とは文字通り「重ねて適用すること」という意味です。

主に法律の分野で用いられる表現で、ある事例においてAの部分は第○条を、Bの部分は第△条をというように、2つの条項を適用して主張する場合に「重畳適用する」と用いられることがあります。

「重畳の理」とは電気回路計算の手法

「重畳の理」とは電気回路計算の手法のひとつです。端的に言うと複数の電源がある場合にそのひとつを残し、他の電源は短絡して回路計算を単純にする方法です。「重ね合わせの理」とも呼ばれます。

「重畳」の類語・類義語とは

「僥倖」も喜ばしいことを意味する類語

「僥倖(ぎょうこう)」とは「思いがけない幸い、偶然に得る幸運」という意味です。たとえば「僥倖に巡り合う」のような使い方をします。

「重畳」と「僥倖」どちらも喜ばしいことを表す類語と言えます。2つの違いとして、「僥倖」は自分のことに対して使い、「重畳」は目上が目下に使うという点です。

「重畳」の類語は「幾重にも」「重ね重ね」

「重畳」と似た意味の語は「幾重にも」や「重ね重ね」です。いずれも「何度も重ねて」という意味があり、「重ね重ね」は特に「繰り返される様、念を入れる様」という意味でも用いられます。

類義語には「めでたい」や「喜ばしい」も

主に時代物で用いられる「重畳」は「めでたい」や「喜ばしい」といった表現に言い換えることができるでしょう。また目上から目下に対する褒め言葉としては「上出来」などの言い回しに換えられる場合もあります。

「重畳」の英語訳とは

「幾重にも重なる様」の英語訳は「superpose」

「幾重にも重なる」という意味の英単語では「superpose」が挙げられます。「superpose」は「重ねる、重ね合わせる」という意味です。また「重ね合わせること」という意味を持つ「superimpositon」や「層状の」という意味を持つ「superimposed」といった単語もあります。

また、「重なる様」を英語で表す際には「placed one upon another」などと表現することも可能です。

「見事な」を表す英語訳は「splendid」「excellent」

「それは重畳!」のように「見事である、素晴らしい」という意味の「重畳」は「splendid」や「excellent」といった英単語が使用できます。

また、シンプルに「I am glad of it.(私は嬉しい)」という言い回しでも喜ばしい様、喜ばしく思うことを表現することは可能です。

まとめ

「重畳(ちょうじょう)」とは、「幾重にも重なる様」と「この上なく喜ばしい様」という意味です。一般的には「幾重にも重なる様」という意味で使い、「この上なく喜ばしい」は主に時代物の小説など限られたシーンで用いられます。

やや硬い表現で日常的に使う表現ではありませんが、電気や法律など専門用語として用いられることもあるためこの機会に覚えおきましょう。