「白羽の矢」は、「白羽の矢が立つ」「白羽の矢が当たった」などの表現で用いられます。現代では、もともとの意味とは異なる使い方をされることも多いようです。
「白羽の矢」の意味をはじめ「白羽の矢が立つ」の使い方を例文で解説します。また「白羽の矢」の類語や言い換え表現、英語訳についても紹介しましょう。
「白羽の矢」の意味とは
「白羽の矢」とは「白い羽の矢」「目印」の意味
「白羽の矢」とは文字通り「白い羽の矢」のことです。正月の縁起物としても神社や寺院で授与される破魔矢(はまや)が良い例でしょう。
この「白羽の矢」は単に羽の色が白いものを指すだけでなく、「目印」の例えとしても用いられます。
「白羽の矢」の由来・語源は「神の生贄」
「白羽の矢」が「目印」の例えとして用いられる由来は、日本古来の伝承にあります。
鬼神などから村を守るために、生贄(いけにえ)として少女を差し出したという伝承です。生贄として選ばれた少女の家に、目印として「白羽の矢」が立てられたと伝えられています。生贄の目印として、人知れず立てられた矢ということから「白羽の矢=目印」の例えとなったようです。
「白羽の矢」の読み方は「しらはのや」
「白羽の矢」は「しらはのや」と読みます。「しろはね」ではなく「しらは」と読むのがポイントです。
「白羽の矢」の使い方とビジネス例文
「白刃の矢が立つ」ということわざでよく使う
「白羽の矢」は主に「白羽の矢が立つ」という慣用表現として用いられます。「白羽の矢が立つ」とは先述した鬼神への生贄の伝承にあるように、「大勢の中から犠牲者として選ばれる」ことを意味します。
本来は「犠牲者として~」というニュアンスを伴う表現ですが、古くは生贄として選ばれるのは名誉でした。他にも「白羽の矢=縁起の良いもの、幸運の知らせ」とする伝承があることから、「多くの中から選び出される」という意味でも用いられることがあります。
「白羽の矢が立つ」は本来悪い意味合いで使う
「白羽の矢が立つ」とは、本来は悪い意味や喜ばしくないことに使用します。たとえば、望まない役割に選ばれた、嫌な役回りを押し付けられたという場合です。このような状況で「白羽の矢が立った」「白羽の矢が立てられた」と使うのが本来の意味に沿っているといえます。
- PTAの役員はどうしても専業主婦に白羽の矢が立ちやすい
- かねてから良くない噂があったA社に、とうとう監査の白羽の矢が立った
「白羽の矢」は仕事の不本意な異動にも使われる
ビジネスシーンで「白羽の矢が立つ」を使う場合、不本意な異動や辞令あるいは望まない役割を任されたことが伺える表現になります。
- 新店の店長としてAさんに白羽の矢が立ったようだ。3年目であの激戦区の店長とはかなりの大役だが、相当厳しい道のりになるだろう。
- まさか、私に新人教育の白羽の矢が立つとは…。自分のことで精いっぱいなのにできるだろうか。
「白羽の矢が立つ」をいい意味で使う例
「白羽の矢が立つ」は、本来の「犠牲者として~」というニュアンスを伴わず「大勢から選ばれた」として、いい意味合いで用いられることもあります。本来の意味とは異なりますが、参考として紹介します。
海外赴任も経験した彼に、白羽の矢が立つのは納得だ。
「白羽の矢が当たる」という使い方は間違い
「白羽の矢」は、「選ばれた」というニュアンスで「白羽の矢が当たる」と表現されることがあります。「白羽の矢」は生贄となる家の目印として、屋根に「たてられた」という言い伝えに由来する表現です。そのため、「白羽の矢が立つ」の形で使用するのが正しく、「白羽の矢が当たる」という言い回しは本来間違いです。
「白羽の矢が当たる」は「弓矢が当たった」のような表現に準じて広まったと考えられます。「白羽の矢が当たる」という言い回しでも違和感を覚えない人が増えていて、今後は許容範囲とされることも考えられます。
「白羽の矢」の類語・言い換え表現とは
「白羽の矢が立つ」は「選ばれる」に言い換える
「白羽の矢が立つ」をストレートな表現に言い換える場合は、「選ばれる」「決められる」などが適切です。たとえば、「幹事の白羽の矢が立った」は「幹事に選ばれた」と言い換えられます。
ただし、「白羽の矢が立つ」が持つ「嫌な役回りに選ばれた、犠牲者として選ばれた」という悪い意味合いはなくなります。
「貧乏くじを引く」は悪い意味合いがある類語
「貧乏くじ」とは不利益を被るくじのことです。「貧乏くじを引く」という表現で、立場的に不利益を被る羽目になることや不利な状況になる様を表します。
たとえば、「とんだ貧乏くじを引かされた」は「損な役回りを任された」の意味になり、「白羽の矢が立つ」と似た悪い意味合いがあります。
「白羽の矢」の英語訳とは
「白羽の矢が立つ」は英語で「The choice falls on」
「白羽の矢が立つ」は、英語では「The choice falls on」と表現できます。「fall on」とは「ふりかかる」という意味です。たとえば「The choice falls on me.」は「私に白羽の矢が立った」と和訳することができます。
「選ばれる」という意味の英語訳「single out」も
「選ばれる」というニュアンスでは「single out」という表現も使用できます。「single out」とは「複数の候補者から選び出す、選抜する」という意味です。いい意味、悪い意味に関係なく「大勢の中から選ばれた」という意味で使用できます。
He was singled out from a thousand applicants.
彼は1,000人もの応募者から選抜された
まとめ
「白羽の矢」は、主に「白羽の矢が立つ」の表現で「犠牲者として選ばれる」という意味で用いられます。本来は”犠牲者として”という悪い意味合いですが、転じて「大勢の中から選ばれる」という意味でも使用されます。
また、「白羽の矢が当たった」という言い回しは本来間違いです。時代と共に「白羽の矢が当たる」という言い回しも許容されつつありますが、本来の意味と使い方もあわせておさえておきましょう。