「泡沫の恋だった」「泡沫の夢だった」のように、はかなく散った思いを表現することがあります。「泡沫」は漢字よりも「うたかた」という語感、音の響きの方がなじみがあるかもしれません。
本記事では「泡沫」の意味をはじめ、使い方を例文で解説します。また「泡沫」の類語や英語訳など関連用語についても触れています。
「泡沫」の意味とは
「泡沫」の意味は「水面に浮かぶ泡」
「泡沫」とは「水面に浮かぶ泡」を意味します。水に浮かぶ泡はあっという間に消えてなくなることから「はかなく、消えやすいものの例え」としての意味もあります。
読み方は「うたかた」ひらがな表記が通例
「泡沫」には、「うたかた」「うたがた」あるいは「ほうまつ」という読み方があり、いずれも誤りではありません。「泡」も「沫」のどちらの漢字にも「あわ」という意味があり、「泡沫」は音読みでは「ほうまつ」とも読むことができます。
一方で「うたかた」という読みも誤りではなく、古い日本語の「うたかた」という語の意味が「泡沫(ほうまつ)」に通じるものがあったため、後から「うたかた」に「泡沫」の字を当てたとされています。
なお「うたかた」という読みは、「泡沫」という熟語でのみ成り立つ読み方で熟字訓と呼ばれます。本記事では便宜上「泡沫」の漢字表記を使用しますが、一般には「うたかた」とひらがなで書くのが通例です。
「泡沫」の使い方と例文
「泡沫の恋」「泡沫の夢」ははかないことの例え
「泡沫」は「はかないこと、淡く消えやすい事柄の例え」として用いられることが多いです。たとえば「泡沫の恋」は短い間のはかない恋を、「泡沫の夢」は実現できずにあっという間に消えた夢と読み取ることができるでしょう。「泡沫の○○」以外にも「泡沫的なもの」といった表現で用いられることもあります。
- 思い描いたキャンパスライフは、泡沫の夢と消えてしまった。
- 世の中に不変なものなどない。所詮、この世はすべて泡沫的なものだ。
「泡沫のごとく消える」という言い回しも
「泡沫のごとく消える」とは「水に浮かぶ泡のように(あっという間に、いとも簡単に)消えてしまった」というニュアンスです。
彼の熱意は最初だけで、数日のうちに泡沫のように消え去った。
「泡沫夢幻」は人生のはかなさを表す四字熟語
「泡沫」を使った四字熟語では「泡沫夢幻」が挙げられます。「泡沫夢幻(ほうまつむげん)」ははかない事のたとえで、特に人生がはかない事のたとえとしての意味を持ちます。
「泡沫」と「夢幻」は似た意味を持つ熟語で、「夢幻泡沫」の形でも用いられます。
「泡沫候補」は当選する確率が低い候補のこと
「泡沫候補」とは「選挙に当選する確率が低い候補者」のことです。立候補してはいるものの、当選する確率がごく低い候補者を指します。
なお、選挙を新聞等で扱う際は「泡沫候補」ではなく、「泡まつ候補」あるいは「泡末候補」といった表記がなされることがあります。これは「沫」の字が常用外漢字であることに配慮した表記で、本来の熟語としては「泡沫」が正しい表記です。
「泡沫に帰す」ではなく「水泡に帰す」
「泡沫に帰す(ほうまつにきす)」とは「水に浮かぶ泡となって消えた」という意味で、転じて「これまでの努力が無駄になった」というニュアンスの慣用表現です。ただし、この意味では「泡沫に帰す」よりも「水泡に帰す」という言い回しの方がよく用いられます。
「水泡(すいほう)」は読んで字のごとく「水の泡」を意味し、「泡沫」の類語です。はかないことの例えとしての意味もあり、「水泡に帰す」で先述のように「努力が無駄になる」というニュアンスでしばしば用いられます。
「泡沫」の類語とは
「泡沫」と似た意味の語は「露」
「泡沫」の類語では、先に挙げた「水泡」以外でも「露(つゆ)」が挙げられます。「露」は「水滴」を意味し、「はかない様、ほんのわずかなことのたとえ」として用いられる点でも「泡沫」の類語ということができます。
「仮初め」は「一時的な様」を表す
「仮初め(かりそめ)」とは「仮初めの恋」などのように「一時的な様」を表します。「仮初めの恋=泡沫の恋」と言い換えることも可能です。「仮初め」には「いい加減な様」という意味もあり、この点は「泡沫」と異なります。
「泡沫」の英語訳とは
「泡沫」は英語で「bubble」
英語で「泡」を意味する単語では「bubble」が挙げられます。「泡のようにはかないこと」という意味では「like a bubble」と表現することができるでしょう。
このほか「はかない」という意味を持つ語では「fleeting」や「short-lived」などの表現もあります。「ephemeral」も「消えやすくはかない」という意味を持つ単語です。
「泡沫」の英語例文
- All my dream burst like bubbles.
私の夢はすべて泡沫のごとく消え去った。 - Our lives are fleeting.
我々の命は実にはかない。
まとめ
「泡沫」は「ほうまつ」「うたかた」「うたがた」など複数の読み方がありますが、一般には「うたかた」の読みで「水の泡のようにはかなく消えやすいもののたとえ」として用いられます。たとえば「泡沫の恋」は「はかなく消えた恋」というニュアンスです。似た意味の語では「水泡」や「露」があります。「泡沫に帰す」よりも「水泡に帰す」がメジャーであるように、使用する言い回しや文脈で使い分けてみてください。