「ダチョウ」とはどんな鳥?「なぜ飛べないのか」や抗体も紹介

大きく、愛嬌のある顔のダチョウは動物園の人気者で、専用の牧場もあります。しかし、知名度のわりに「なぜ飛べないのか」「寿命はどれぐらいか」など、知らないことが多いのではないでしょうか。ダチョウの特徴を、共通点が多いエミューとの違いとあわせて説明しましょう。また、肉や羽の利用や、新型コロナウィルスなどの抗体についても紹介します。

「ダチョウ」の概要

ダチョウとは飛ばずに走る大型の鳥類

ダチョウ(漢字表記:駝鳥)とは体重100kgを越える大型の鳥類です。現生する中では、世界で最も大きな鳥類になります。走ることが得意ですが飛べません。野生種はアフリカのサバンナなどで小規模な群れを作っていますが、個体数は減少傾向があります。動物園・牧場で飼育されるダチョウは、温厚で小柄な家畜種が一般的です。

ダチョウのように、飛ばずに地上に住む大型の鳥類を「平胸類(へいきょうるい)」や「走鳥類(そうちょうるい)」と呼びます。

ダチョウの英語表現は「ostrich」

駝鳥の英語表記は「ostrich」です。カタカナ語「オーストリッチ」の元になった英単語です。カタカナ語の場合、ダチョウそのものの意味もありますが、どちらかと言うと「ダチョウの革製品」の表現によく用いられています。

ostrichは「現実逃避する人」を表す慣用句や比喩表現に使われています。「ダチョウは危機的状況になると、砂の中に頭だけを隠す」と信じられていたためです。現在ではそのような習性はないと明らかになっています。

「ダチョウ」の特徴

ダチョウの走る早さは時速60km

ダチョウは足が頑丈で、平均時速約60kmで走ります。地上を走る鳥類の中では世界一の早さです。持久力もあるため、1時間以上走り続けられると言われています。

ダチョウはなぜ飛べないのか

ダチョウは飛べない鳥類です。飛べない理由は体の構造にあります。ダチョウは飛行に必要な筋肉が貧弱で、それを支える骨部分(竜骨突起)もありません。また、ふわふわで左右対称の羽根も、飛行に不適切です。

ダチョウの寿命は50~60年

ダチョウの平均寿命は長く、60年程度です。長寿の理由は「怪我・病気に強いこと」だと推測されています。ダチョウは傷の治りが早く、病気にかかりにくいのです。

ダチョウは脳みそが小さく記憶力が悪い

ダチョウは体重が100kgを越える大きな体を持っていますが、脳みそは40g程度しかありません。記憶力も悪く、家族の顔や数も覚えられないと言われています。

ダチョウはオスとメスがいっしょにヒナを育てるのですが、他の群れのヒナが混ざったり、自分のパートナーが入れ替わったりしても、気づく様子がありません。「ダチョウは頭悪い」と思う人がいても、仕方がないことでしょう。

ちなみに、ダチョウの目は重さ60gのため、脳みそよりも目の方が大きくなっています。危険なサバンナでは、細かなことを考える知力より、敵を早期発見する視力の方が優先度が高いのかもしれません。

「ダチョウ」と「エミュー」の違い

エミューも走るのが得意な大型の鳥類

エミューとは、見た目がダチョウによく似た鳥です。「走るのが得意な飛べない大型の鳥」という点も同じで、同じ平胸類にカテゴライズされています。また、エミューは「世界で2番目に大きい鳥類」です。

違いは「足の指」「大きさ」など

ダチョウとエミューの違いのうち、分かりやすいのは「足の指」「体の大きさ」です。ダチョウは2本指ですが、エミューは3本です。体はダチョウの方が大きく、ダチョウが約250cmに対し、エミューは約190cmになります。

他にも以下のような違いがあります。

  • 生息地
    ダチョウはアフリカ等、エミューはオーストラリア。
  • 卵の色
    ダチョウはクリーム色、エミューは緑色。

  • ダチョウは翼が目視できる、エミューは羽毛に隠れ目視できない。

「ダチョウ」の利用

ダチョウは観光・食用・材料などに利用

ダチョウの利用は幅広く、乱獲されていた時代もあるほど需要がありました。特に人気があったのが羽です。ダチョウの羽は正義や秩序、忠誠のモチーフとして、中世ヨーロッパの貴族たちに愛用されていました。鳥類の羽としては珍しく、左右対称であることが理由だと考えられています。

現在でも、肉・卵は食用に、革は鞄・財布などの材料に使われています。また、馬と比べると安定しませんが、人を背中に乗せて走ることも可能です。

ダチョウの肉は癖のない味で栄養面も優秀

ダチョウの肉は味・栄養ともに評価され、人気が高まっています。癖の少ない味なので、さまざまな味付けの料理に活用できる点が魅力です。

栄養面では脂肪燃焼・運動機能向上の効果が期待されています。そのため、アスリートやダイエット中の人に注目され、牛肉の代わりに消費されています。

ダチョウの卵からコロナ等の抗体を採取

ダチョウの卵は医療用途で活用されています。感染症の抗体を採取し、その成分でウイルスを不活化するマスクやのど飴を作成可能です。新型コロナウィルスやエボラ出血熱、インフルエンザなど、さまざまな感染症予防に貢献しています。

ダチョウ抗体は卵から採取するため、母体を傷つける必要がない点も長所です。

まとめ

ダチョウは肉・羽・革の利用や、感染症対策などに活用されてきました。特に感染症対策は、今後も重要性が増していくことでしょう。「身近な鳥」という印象はない人が多い鳥ですが、もしかしたらすでにマスクやのど飴でお世話になっているかもしれません。