「共産主義」は「財産を共有して平等な社会を理想とする思想」という意味ですが、社会主義とは何が違うのでしょうか。また中国は共産主義か社会主義国家なのかもわかりにくいところです。
この記事では「共産主義」の意味のほかに、社会主義や民主主義との違いを説明します。また共産主義の国やマークなども解説します。
「共産主義」の意味とは?
「共産主義」とは「財産を共有する平等な社会を理想にする思想」
「共産主義」とは、皆で財産を共有して、経済的に平等な社会を理想にする考え方や運動のことです。ひとりひとりが財産を持たないため、経済格差がなく経済的に平等になります。古くは古代ギリシアのプラトンやルネサンス時代のトマス=モアなども共産主義の基礎となり平等な社会を理想とする思想を持っていました。
共産主義はマルクスとエンゲルスによって確立
現代で語られる共産主義は、マルクスとエンゲルスによって確立されました。マルクス主義の共産主義とは、経済的な平等社会を目指す思想なのですが、平等社会の完成形にたどり着くまでに、第一段階と第二段階に分かれます。
共産主義の前段階が社会主義
第一段階の共産主義社会では、労働者の労働力に応じで、資産が分け与えられます。一見、平等に資産が分かち合えているように映りますが、これでは労働者の能力差によって与えられる資産の量が違うために、経済的な格差が残っています。
この段階は社会主義社会とも呼ばれます。
共産主義の第二段階が完成形
第二段階の共産主義社会では、労働力に応じて資産が分配されるのですが、一人一人の生産力と道徳も高められます。個人に必要に応じた資産の量で、不満を抱かないようになるため、誰もが平等だと感じられる社会が作られます。
個人が自主的に社会を管理するようになり、政府ではなくプロレタリアートによる独裁国家になるという考え方です。
この第二段階の共産主義によって、完全な共産主義社会が成立すると考えられています。
共産主義は英語で「communism」
共産主義は英語で「communism」です。ラテン語の「commune」が語源で、共産主義者は「communist」で、形容詞になると「communist」または「communistic」のように語尾変化をします。
「共産主義」と「社会主義」「民主主義」「資本主義」の違い
共産主義と社会主義の違いは「平等社会が完全か不完全かの違い」
共産主義と社会主義の違いは、実現を目指す平等社会の完成度の高さにあります。
共産主義では社会は誰もが平等となりますが、社会主義では平等社会の完成度が未熟で、経済格差から平等だとは言いきれません。しかし社会主義が発展すると共産主義社会になるため、社会主義は共産主義の前段階にある思想だと考えられます。
共産主義と民主主義の違いは「経済的思想と政治的思想の違い」
共産主義と民主主義の違いは、共産主義は経済についての考え方なのに対して、民主主義は政治についての考え方です。
共産主義は資産を共有して平等社会を実現するために経済をどのようにするのかを考えています。一方、民主主義では国民が政治の決めるという考え方です。
共産主義の対義語は「資本主義」
「資本主義」とは、資本経済のことで、資本家によって作られた組織で労働者が働き、その労働力を商品として買い取って成り立つ経済システムのことです。
資本主義社会では、資本により経済が発展して、個々が資産を持つことを許される社会なのに対して、共産主義社会では資産は共有されるものという考え方の違いから、資本主義は共産主義の対義語になります。
中国は共産主義と社会主義のどっち?ソ連は?
中国は「社会主義国家」
中国は社会主義国ですが、資本主義的な思想も併せ持っています。社会主義国であるなら経済格差が生まれないはずなのですが実際には格差はあり、その一方で経済的な成長も実現しています。つまり中国は、経済面では資本主義的な思想を取り入れながら、社会主義の体裁で形成されている国家です。
ソ連は「共産主義を目指した社会主義国家」
ロシアの旧国家ソビエト社会主義共和国連邦(通称「ソ連」)は、世界初の社会主義国家でした。1917年の十学革命(社会主義革命)がして、共産主義的国家の前段階として、社会主義的国家を形成します。コルホーズ(生産農協協同組合)や労働組合などを結成して、国家が管理する社会ではなく、プロレタリアートが独裁する社会を目指しました。
しかし実際には、社会主義的民主主義のような社会主義の発展に力を注ぐことになり、ソ連崩壊時には、表立った共産主義の実現を趣旨とする思想はなくなっていました。ソ連は共産主義的な国家を理想としていましたが、実際に実現できたのは社会主義の国家でした。
共産主義のマークの意味は?
「鎌とハンマー」は農民と労働者の結束を表す
共産主義運動で使われてきた旗には「鎌とハンマー(槌)」が描かれていますが、鎌は農民を、ハンマーは労働者を象徴しています。それらが重なり合うことで農民と労働者の結束を表しています。
この「鎌とハンマー」は共産主義でもレーニン主義の影響を受けています。レーニン主義とは、ロシア革命を指導したレーニンが発展させたマルクス主義で、プロレタリアートの独裁などを展開しました。
「赤い星」は共産主義の象徴
ソ連の国旗に描かれている赤い星も、レーニン主義のシンボルです。星のそれぞれの頂点が、青年、兵士、労働者、農民、知的労働者を表していて、それらが結びついて一つの社会を形成するという意味があると言われています。
また中国の国旗にも星が描かれていますが、この星は「黄金の星」と呼ばれて、同じく共産主義のシンボルです。
まとめ
「共産主義」とは平等社会を目指す思想として、社会主義を発展させた思想または運動です。もともとは資本主義の批判から生まれた思想で、資産を共有するという方法で社会を形成します。経済格差のないというメリットがありますが、実現することは難しい思想だと歴史は証明したと言えるでしょう。
「彼は共産主義者です」
「この国は共産主義国です」