「易経」の名言・原文を現代語訳で解説!意味や占いとの関係も

「易」は日本で占いとしてよく知られた言葉ですが、儒教の経典である『易経』との関係はあるのでしょうか?ここでは、「易」の意味を解説するとともに、書物の『易経』について、その概要を名言とともに解説します。

儒教の経典である『易経』とは?

『易経』は儒教の経典

『易経』とは、儒教の「五経」の書に数えられる儒教の教典です。漢の武帝が儒学を官学と定めたときから五経を中心とした教育が行われるようになりました。その後、朱子が「四書」を儒学の重要なテキストと定めてからは、五経よりも四書が重視されるようになりました。

五経とは、『易経』『書経』『詩経』『礼記』『春秋』の5つの書物で、四書とは、『論語』『大学』『中庸』『孟子』の4つの書物をいいます。

『易経』は「思想」と「占術」で構成される

『易経』は本文と解説から構成され、解説に易の占術が記されています。本文には簡潔な言葉で、「卦」が示すさまざまな様相に対してどのように対処すべきかという思想や哲学が書かれています。

易学をまとめたものが『易経』

易学をまとめた書が『易経』です。著者は伏羲(ふっき・ふくぎ)という伝説上の人物とされたり、孔子がまとめたものだとされたりしていますが、実際のところは明らかになっていません。

易学は「陰陽思想」を基本としています。「陰陽思想」とは、対立する二つの性質が作用しあうことで変化が生じ、新たなものを生み、循環するという思想です。例えば季節は、春(陰)、夏(陽)、冬(陰)と巡りながら生命を生み出し、夜(陰)が終われば朝(陽)が来る、ということを表わします。

具体的な占いの方法としては、陰と陽を示す算木を組み合わせて8種の卦(八卦)を作り、さらにそれに2つづつを重ねた64種の卦に意味をもたせます。占いの吉凶を意味する「当たるも八卦、当たらぬも八卦」という言葉を時代劇などで耳にしたことがあるかもしれません。

『易経』の名言を原文と現代語訳で解説

『易経』の中から名言や格言を選び、原文の書き下し文と現代語訳で紹介します。

名言①堅き氷は霜を履むより至る

「堅き氷は霜を履むより至る(かたきこおりはしもをふむよりいたる)」とは、霜を踏む季節がくれば、次は堅い氷が張る冬がやってくるとの意から、何事もその兆候を早くみつけ、準備せよという意味です。

名言②君子は豹変す

「君子は豹変す(くんしはひょうへんす)」とは、立派な人物は、自分の過ちに気づけば即座にそれを改めるという意味です。

名言③同気相求める

「同気相求あいもとめる(どうきあいもとめる)」とは、同じ気質のものはおのずから親しくなり、自然に寄り集まるという意味です。

名言④積善の家には必ず余慶あり

「積善の家には必ず余慶あり(せきぜんのいえにはかならずよけいあり)」とは、善行を積み重ねた家には、必ず幸せが訪れるという意味です。

名言⑤家を正しくして天下定まる

「家を正しくして天下定まる」とは、家庭を正しく治めればそれが波及して社会全体が治まるとの意から、すべての物事は内から外に及んで行くという意味です。

名言⑥辞を修めその誠を立つるは、業に居るゆえんなり

「辞を修めその誠を立つるは、業に居るゆえんなり」とは、誠実に思いを伝えるには、自分の業(ぎょう)に正しく身を置いていることが大切だという意味です。「修辞」とは簡潔で力強い言葉をいい、上に立つものはこれを身につけなければならないとしています。

名言⑦窮すれば通ず

「窮すれば通つうず(きゅうすればつうず)」とは、困難に行き詰まっていよいよどうにもならなくなると、切る抜ける道が案外みつかるものだとする意味です。

名言⑧治に居て乱を忘れず

「治に居て乱を忘れず」とは、世の中が平和であっても、戦乱の時に備えて準備を怠らないようにせよという意味です。

「易経」の「易」がもつ意味とは?

易経の「易」には意味が3つある

「易」の言葉には次のような3つの意味があり、「易の三義」と呼びます。

  • 変易(へんえき):あらゆる事象は常に変化する
  • 不易(ふえき):変化には一定で不変の法則がある
  • 易簡(えきかん):その変化の法則を人生に応用する

このように、易とは万物の「変化」の法則を理解し、人間の生きる道に活かすことでよりよい人生を送ることを目的とした思想です。

易経は占いの書として発展した「易」の思想

「易」とは、もともと古代中国の占いの書として発展した思想でした。「易」とは「変化」を意味する言葉で、陰陽の相対的な原理の変化によって万物の変化を占います。

「易」はやがて「易学」となり、時の変化を見抜く洞察力や直観を養う方法が説かれているため、古代中国の権力者や知識人が修めるべき教養ともなりました。

そしてその解釈は次第に複雑化してゆき、易で説かれる万物の循環の思想とともに、中国の思想や文化に大きな影響を与えました。日本には5世紀になって伝わり、それを陰陽師が全国に広め、占いの法として現在も伝えられています。

まとめ

「易」とは、あらゆる事象は常に変化し、その変化には一定で不変の法則があり、その変化の法則を人生に応用するという意味を持つ言葉でした。森羅万象の法則を占う手法として「卦」が考え出され、やがてその思想が哲学となって『易経』という書物にまとめられました。

「易」を占いのみでとらえるのではなく、人生の法則を明らかにし、運命をひらく哲学としてとらえた古代中国人の深い世界観を、ここに垣間見ることができます。