「香具師」の読み方と意味は?由来や本来の意味についても解説

インターネット掲示板で時々見かける「香具師」という言葉ですが、実はどう読むのか分からないという方も多いのではないでしょうか。「香具師」は「やし」と読み、インターネット掲示板では相手のことを指す「奴」の当て字として用いられています。この記事では「香具師」の由来や、本来の言葉の意味についても紹介します。

ネットスラングでの「香具師」の意味とは

「香具師」の読み方は「やし」

「香具師」の読み方は「やし」です。「香具師」とは本来、祭りや縁日などで露店を開いて物を売ったり場所の割り振りを行ったりする人を指す言葉です。

「香具師」という言葉そのものは江戸時代から使われていますが、なぜ「やし」と読むのかについてはいくつかの説が残っており、どれが正解かははっきりしていません。

「香具師」のネットスラングでの意味は「〇〇な奴」の当て字

「香具師」は、相手のことを「〇〇な奴・ヤツ」と呼ぶかわりに使われる当て字です。5ちゃんねるなどのインターネット掲示板上で、ネットスラングとして使われています。

「奴」は「ヤツ」とカタカナで表せますが、この「ツ」が「シ」に似ていることから、また「やし」とキーを入力すると「香具師」が漢字変換候補として出てくることで使われるようになったとされています。

「香具師」の由来は5chではない

「香具師」がネットスラングとして使われるようになったのは、1999年ごろです。当時人気のあったインターネット掲示板「あやしいわーるど」で、ある固定ハンドルネームを持つユーザーの偽者が「固定ハンドル@香具師」と名乗り始めたのがきっかけだとされています。

多くのネットスラングは大手インターネット掲示板「5ch(5ちゃんねる)」から生まれているため、「香具師」も同様ではないかと思う人が多いようですが、異なります。

「香具師」のネットスラングとしての使い方・例文

「香具師」は「奴」に置き換えて使う

ネットスラングとして使われる「香具師」は、「奴・ヤツ」を「香具師」に置き換えて用いられています。例えば「そんな奴は」と書き込むところを「そんな香具師は」に置き換える、といった具合です。

「香具師」を使った例文

  • まだ知らないなんて、そんな香具師いるの?
  • 今から語れる香具師募集。
  • 何もしていない香具師に言われたくない。

「香具師」は死語?知名度は低め

前述したように1999年にネットスラングとして使われるようになった「香具師」ですが、もはや死語とされている向きもあるようです。

もともと「香具師」が使われるようになった頃は、インターネットがそれほど多く普及していなかったこともあり、インターネットに詳しい人達が中心となって使っていた言葉でした。

次第にインターネット掲示板でも「香具師」と書き込む人は少なくなり、その後SNSなどの普及によって一般にも知られるようにはなったものの、知名度は低めです。

「香具師」の本来の意味とは

「香具師」の本来の意味は「的屋(てきや)」を指す言葉

「香具師」の本来の意味は、祭りや縁日などで露店や芸の披露を行う商売人のことです。「的屋(てきや)」とも呼ばれ、神社の境内や参道で軒を連ねる露店の場所の割り振りや世話をする人も「香具師」に当たります。

「的屋」のほか、「三寸(さんずん)」も類義語です。

「香具師」の語源の由来には諸説ある

「香具師」は古くは「こうぐし」と読み、薬や香具(香道に用いる道具)を作って露店で商売を行っていた人のことを指します。これが、なぜ「やし」と呼ばれるようになったかについては、いくつか諸説があります。

  1. 薬の行商をしていた人物が「弥四郎」という名前だった(そのような行商は香具を扱っていることが多かったため、名前の「弥四」が「香具師」に変化し「やし」と呼ばれるようになった)。
  2. 野武士(みすぼらしい恰好をした武士のこと)が飢えをしのぐために薬を売っていたが、そのうち「野武士」の「武」が省略されて「野士(やし)」と呼ばれるようになった。

「香具師」で使われる「売り口上」には有名なものも

現代では見かける機会は少なくなりましたが、かつての「香具師」には「バナナのたたき売り」や「ガマの油売り」といった独特の売り口上がよく知られていました。商品を並べ、「啖呵売(たんかばい)」といわれる活気あふれる話術を繰り広げ、客を楽しませるといったものです。

売り口上の中には、地域によっては郷土芸能として保存活動が行われているものもあるといいます。

「香具師」の他にもある「当て字」のネットスラング

「乙」は「お疲れ様です」の意味

「乙(おつ)」は「お疲れ様です」を略したネットスラングです。「お疲れ様」が「お疲れ」に、さらに「おつ」から「乙」へと略して使われるようになったとされています。

苦労や努力をねぎらったり、相手に感謝の意を伝える際、文末に「乙」をつけて使います。また、一部では皮肉の意味をこめて用いられることもあります。

「漏れ」は「俺」の意味

「漏れ」とは「俺」を意味するネットスラングです。もともとは「俺も俺も」と書き込みをしようとした人が、タイプミスをしてしまい「俺漏れも」と誤変換されたのが始まりだとされています。

そこから一人称を「漏れ」と書き込むことが流行り、男女の性別を問わず使われるようになりました。

「厨房」は中学生のこと

インターネット掲示板で見られる「厨房」という書き込みは、中学生を指す「中坊」を意味する当て字のネットスラングです。

実際に中学生であるかということは関係なく、ネット上で幼稚な発言や自分を誇張したり自慢したりといった行動を行い、周りを不快にさせる者に対して揶揄する意味で使われます。

まとめ

「香具師」は「やし」と読み、インターネット掲示板では相手のことを指す「奴」の当て字として用いられるネットスラングです。ただ、時代とともにネットスラングも変遷し、見かける機会は少なくなっている言葉でもあります。本来の意味の「的屋」で使われる機会も限られており、目にすることは少ないかもしれません。