ビジネスでは敬語を使うのが原則ですが、それとは別に「話し言葉」と「書き言葉」の使い分けも求められます。「話し言葉」と「書き言葉」の違いや使い分けの理由、またそれぞれの特徴について解説します。また「話し言葉」から「書き言葉」への変換のポイントについても紹介しましょう。
「話し言葉」と「書き言葉」の違いとは?
話し言葉と書き言葉の違いは「会話と文章」
「話し言葉」と「書き言葉」の違いは、端的にいうと「会話で使う言葉」と「文章に使う言葉」です。会話と文章それぞれのコミュニケーションに適した表現をするため、「話し言葉」と「書き言葉」が存在します。
「書き言葉」はビジネス文書やメールで使う
ビジネス文書やビジネスメールでは、一般的に「書き言葉」が使用されます。「書き言葉」は、簡潔かつ正確に伝えたい場合に適した表現が多いです。ややかたい言い回しが多く、正確性を重視するビジネスシーンでは、会話でも「書き言葉」を優先して使う例があります。
「です・ます調」は本来は話し言葉
文章で「〜です」「〜ます」のような表現はよく見られますが、本来は「話し言葉」です。「書き言葉」の文末としては、「〜だ」「〜である」となります。このように、「書き言葉」の中に「話し言葉」が混在することもあります。
「書き言葉」の特徴とは?
「書き言葉」とは本・論文や公的文書等で使う表現
「書き言葉」とは、本や論文、公的文書などで用いられる表現です。フォーマルな文章では「書き言葉」が原則として用いられ、ビジネスシーンも例外ではありません。社内外のメールや企画書などの文書、書状などには「書き言葉」を使用します。
「書き言葉」は正確性が一番のポイント
「書き言葉」は省略した表現が少ないのが特徴です。そのため、正確に伝えるべきこと・要点を絞って簡潔に伝えたい場合に適した表現とされています。
たとえば、メールや文書のやりとりでは相手の表情や声色などの情報がありません。読み手に誤解が生じる懸念がありますが、「書き言葉」を使うことで誰が見ても理解しやすい文章になります。また、「書き言葉」は改まった印象を与える表現が多いのも、ビジネスシーンで重宝される理由です。
「話し言葉」の特徴とは?
「話し言葉」は柔らかい表現や感嘆詞が多い
「話し言葉」は柔らかい表現やくだけた表現が多いのが特徴です。「ああ」「まあ」などといった感嘆詞や疑問詞なども「話し言葉」に含まれます。直感的に理解しやすく、親しみやすさが感じられるでしょう。
「話し言葉」は省略が多く誤解が生じやすい
「話し言葉」は言葉の順序が入れ替る「倒置」や「省略」などが起こりやすいのも特徴のひとつです。そのため、「話し言葉」を文字にすると分かりにくかったり、誤解が生じる懸念があります。直接的な表現を避けることが多い、という点も誤解につながるポイントでしょう。
ビジネスシーンで「話し言葉」を使う例
ビジネスシーンでは「書き言葉」が主流ですが、中には「話し言葉」をあえて使う例もあります。その代表例がキャッチコピーです。「話し言葉」を使ったほうが、訴求力を高められることがあります。また、スピーチでも「話し言葉」を交える例が多いでしょう。
「話し言葉」と「書き言葉」の変換・使い分け
「書き言葉」に変換するポイントは「っ」
「話し言葉」か「書き言葉」で迷った際は、「っ(小さい”つ”)」に注目してみましょう。たとえば、「どっち」「やっぱり」はどちらも「話し言葉」です。書き言葉に変換すると、「どっち=どちら」「やっぱり=やはり」となります。
似たような例では、「ちゃんと」「〜じゃない」なども「話し言葉」です。この場合は「拗音(小さい”や””よ”)」が特徴的です。「書き言葉」ではそれぞれ「きちんと」「〜ではない」となります。
ただし、例外として「とっても/すごく」などを書き言葉にする場合は、「非常に/極めて」と変換します。
「書き言葉」では「ら抜き・い抜き」に注意
「書き言葉」に限ったことではありませんが、「ら抜き言葉・い抜き言葉」になっていることがよくあります。たとえば「来れる」は「来”ら”れる」、「話してる」は「話して”い”る」が正しい表現です。特に「書き言葉」では目につきやすいため注意が必要です。
「御社」と「貴社」のような敬語の使い分け一覧
敬語表現を「話し言葉」と「書き言葉」で使い分ける例もあります。その代表例が「御社」と「貴社」です。
いずれも相手の会社への敬意を込めた表現ですが、「貴社(きしゃ)」は「記者」「帰社」など、会話では他の語を連想されることがあるため、「書き言葉」のみで用いられます。会話で使う場合は、「御社(おんしゃ)」とするのが通例です。
この例にならい、各種機関・団体は次のように「話し言葉」と「書き言葉」で使い分けられます。
まとめ
「話し言葉」と「書き言葉」は、会話か文書かで使い分けられます。不特定多数に向けた文書や取引先へのメールなど、ビジネスシーンでは「書き言葉」を使うシーンが多いものです。「話し言葉」は柔らかい印象ではあるものの、文書やメールに使うとやや稚拙な印象にもなります。敬語表現とともに、「話し言葉」と「書き言葉」の区別にも注意してみましょう。
話し言葉:御校(おんこう)・御学(おんがく)
書き言葉:貴校(きこう)・貴学(きがく)
話し言葉:御行(おんこう)
書き言葉:貴行(きこう)
話し言葉:御院(おんいん)
書き言葉:貴院(きいん)