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ブルデュー提唱「ハビトゥス」の意味とは?文化資本との関係も

「ハビトゥス」とはラテン語が語源の「習慣」という意味ですが、フランスの社会学者ブルデューは「ハビトゥス」という社会学的な概念を発展させました。その内容とは?

この記事では「ハビトゥス」の意味やブルデュー提唱の「ハビトゥス」の意味に併せて、プルデュー研究に欠かせない「文化資本」についても解説します。

プルデューが提唱する「ハビトゥス」とは?

「ハビトゥス」とは「知覚や行動に影響を与える体系的な性向の仕組み」

フランスの社会学者ピエール・プルデューが提唱する「ハビトゥス」とは、「人の知覚と行動に影響を与える体系的な性向の仕組み」を意味しています。

私たちは暮らしながら、各々が自由奔放に振舞うのではなく、生活するためのさまざまな条件を作り出して、それを守りながら暮らしています。こうした環境において、私たちは知覚や考え方、または行動の仕方を学びます。これを言い換えると、環境が知覚・思考・行為の原理だととらえられます。この心的な傾向のシステムのことを「ハビトゥス」と呼びます。

「階級のハビトゥス」は同じ集団内で存在するハビトゥス

ブルデューによると、ハビトゥスが最も身近に感じられるのが「階級のハビトゥス」です。「階級のハビトゥス」は、同じ階級にある人同士、または生活条件が似ている人同士で作られる集団で共有されるハビトゥスのことです。この「階級のハビトゥス」は私たちの生活の基礎に関わり、将来的にも影響すると考えられます。

原初的ハビトゥスは子どもの教育に影響

「原初的ハビトゥス」とは、就学前の子どもの生活環境に形成されるハビトゥスのことで、子どもが就学したときに学校への適応能力などに関わっています。学校での生活に慣れて、勉強についていける子どもは、この原初的ハビトゥスが成り立っていたと考えられます。

また子どもは教育において、学校で振舞うべき行動や、勉強とはどのようなものなの感度の教育のハビトゥスを身に着けていきます。そして、教育のハビトゥスは、学校を卒業してからも影響し続けるという特徴があります。

「ハビトゥス」を活用した具体例

「ハビトゥス」は社会学や教育学などに活用される

ハビトゥスという概念は、私たちの考え方や行動パターンなどを時間軸と合わせて経験するので社会的な条件を見出すことができます。そのため、社会学や教育学、芸術などの文化に関する学問の研究などにも役立てられます。

ハビトゥスで捉えるジェンダー論

男女の違いを社会的、文化的に研究するジェンダー論を考えるときに、ハビトゥスが影響するという考え方があります。社会において、男性はこうあるべき、女性はこうあるべきという考え方をハビトゥスとして、性差を研究します。

ハビトゥスが与えるスポーツや趣味への影響

スポーツは陸上競技や球技などの身体的な運動ですが、スポーツの発展の歴史を見ると、ハビトゥスが大きく関わっています。元来スポーツはエリートがたしなむもので、徐々に大衆化していったという歴史があります。貴族の楽しみとして独占されていたスポーツが、大衆化されていったときに、市民の娯楽となっていただけでなく、下層階級の人が階級を上げるための手段になっていた時代があります。

このように考えると、スポーツが大衆化していった経緯にハビトゥス、つまり社会的要因が大きく影響していると考えられます。

「ハビトゥス」と「文化資本」の関係

「文化資本」はハビトゥスが文化的な価値となって表れたもの

「文化資本」はハビトゥス同様、ブルデューが提唱した用語のひとつで、ハビトゥスが文化的な価値として表れ出ると「文化資本」と呼ばれます。

「ハビトゥス」は社会での影響から得られる性向の仕組みのことですが、「文化資本」はハビトゥスの文化的な部分に焦点を当てたときに見出される事柄です。社会生活を通して見につけた知識や能力で、それを個人の評価として使えるものを指しています。

「文化資本」とは「学歴などの個人的資産」のこと

「文化資本」とは「金銭的なこと以外に関する個人的資産」のことで、具体的には学歴や資格、また親から継承された能力や教養などのことで、蓄積できます。どのような文化資産を持つかによって、その人に利益をもたらしその人の評価にも関わってきます。

「ハビトゥス」の意味と語源とは?

「ハビトゥス」とは「習慣」のこと

「ハビトゥス」とはイタリアのスコラ哲学者であるトマス・アクィナスが提唱した概念で、「行為によって身に着けた習慣」という意味です。ハビトゥスは知性、学知、英知、分別、正義、剛殺、節制などから構成されています。

アクィナスによると、人とは元々、善い行いをするために考えたり行動したりするものですが、どうしてそのように思うのかと言うと、情念とハビトゥスが原理になっています。情念とは心に抱く感情や思念のことで、情念とハビトゥスが一緒になって人を善行へと導くという行動心理です

「ハビトゥス」の語源はラテン語で「存在のあり方」

「ハビトゥス」の語源はラテン語の「habitus」で、「存在のあり方」という意味です。また「身に着けた習慣」や「態度」「性質」という意味もあり、この言葉は後に英語で「習慣」や「癖」を意味する「habit」へと派生しました。

まとめ

「ハビトゥス」とは「人の知覚と行動に影響を与える体系的な性向の仕組み」という意味で、ブルデューによって提唱されました。私たちの考え方や行動様式には、自分の置かれている社会的環境が影響しているという考え方に基づいた概念です。

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「難解なワードでもわかりやすく」をモットーに、常識ワードからビジネス用語、時には文化・アート系など、幅広く記事を書かせていただいています。ドイツ在住で2児の母。好きな食べ物はビターチョコレートとナッツ類。