「様式美」は芸術や建築の分野のみならず幅広い分野で使われており、2つの意味を持つ言葉でもあります。この記事では「様式美」の意味や使い方について詳しく解説します。また類義語についても紹介しますので、聞いたことがあるという方もそうでない方も「様式美」の正しい意味を学び、ぜひ語彙力向上に役立ててください。
「様式美」の意味とは?
「様式美」の意味は「芸術作品における表現方法」
「様式美」は「ようしきび」と読み、「手順や形式など、様式化されたものが作り出す美しさ」を意味する言葉です。
「様式」とは、芸術作品や建築物において特定の時代や民族、流派を反映する表現のことです。「様式美」は、そういった”ある時代や民族において定められ守られていること”に従って形成された(=様式化された)デザインが作り出す美しさのことを指します。
時代や国、民族が異なればそこにはそれぞれの「様式美」が存在します。また、芸術作品や建築物のみならず、歌舞伎や能といった芸能分野においても「様式美」とよばれる美しさがあります。
「様式美」には「お約束」という意味もある
「様式美」は「決まりきった流れや物事、お約束」という意味で用いられることもあります。特に若い人たちの間で話題に出てくる「様式美」は、この意味で使われているケースが多いです。
たとえば漫才における決まった流れのツッコミとボケや、アニメやドラマなどで必ず繰り返される展開(お決まりのパターン)がそれにあたります。
「形式美」との意味の違い
「様式美」と「形式美(けいしきび)」は似たような言葉に捉えられがちですが、意味が少し異なります。
「形式美」とは芸術作品に表現されている思想や内容とは関わりなく、完成した作品の形が感覚に訴える美しさのことを指します。「様式美」はそれぞれの時代や民族が作り出してきた”流れ”に重きを置いているのに対して、「形式美」では完成した作品そのものの外観に重きを置いているという点が大きな違いといえます。
「様式美」を使う場面と使い方
芸術や建築の分野では「美しさをたとえるとき」に使う
「様式美」は芸術作品や建築物を鑑賞し評価する際、美しさをたとえる言葉として用いられます。たとえば、何かの芸術品や建築物を見た時にその時代ならではの特色や背景を感じ取れるものについて「様式美を感じる」と表現します。
様式美を感じる建築物として有名なのが、フランスにある「ヴェルサイユ宮殿」です。ヴェルサイユ宮殿が建てられた1682年はルイ14世の統治時代にあたり、その時代の美術や文化様式は”ルイ14世様式”と呼ばれています。ルイ14世様式の特徴は、煌びやかで豪華な装飾。中でも、ヴェルサイユ宮殿は重厚な豪華絢爛な建物と美しい庭園が有名です。
お笑いや小説など創作の分野では「お約束」を表す
お笑いや小説・映画といった創作の分野における「様式美」は、”決まりきった流れやお約束”の意味で用いられます。
たとえばお笑いの世界では、誰が見ても想像がつくような流れや決まったパターン、お約束のボケとツッコミなどがあります。
ともすればそれは”マンネリ”ともいえるものですが、見る側は先が読めているのに笑ってしまいますし、そのパターンを無意識のうちに待ち望んでいるものです。そこには、マンネリを超えた様式美の世界が作られているといえるでしょう。
「様式美」の類義語や言い換え表現は?
「様式美」の類義語は「流儀」
「様式美」の類義語は「流儀(りゅうぎ)」です。「流儀」とは”物事のやり方・芸術や技能など、その人・家・流派などに伝わっている手法”のことです。「流儀」の”流”は「流れる、流す」と読む漢字ですが、「やりかた・系統」という意味も持ちます。
「師匠から受け継いだ流儀を大切に守っていく」「この業界にはお決まりの流儀がある」のように使います。
「予定調和」も言い換え表現
「様式美」を”決まりきった流れや物事、お約束”の意味で用いる場合、言い換え表現として「予定調和」と言い表すことができます。
「予定調和」とは、あらかじめ結果が明らかであり、実際にその通り、予想通りの結果になることです。たとえば映画や小説など、物語の展開が”おそらくこうなるだろう”と予想できそうであり、実際にその通りに進行したときに用いられます。
「様式美」の英語表現は?
「様式美」そのものの表現は英語にはない
「様式美」をそのまま表現する英単語はありません。そのため、「様式」を意味する”style”と「美しさ」を意味する”beauty”を組み合わせ、「style beauty」「beauty of style」と訳されることが多いです。
“beauty”と同様に”magnificent”が用いられることもあります。”magnificent”は「壮大な、格調高い、素晴らしい」という意味の英単語で、何かを褒めるときの最上級の言葉として用いることができます。
「様式美」の英語表現例
- I feel the style beauty to the sculpture of this wall.(この壁の彫刻に様式美を感じる。)
- I was impressed by a performance felt the style beauty of the violinist.(バイオリン奏者の様式美を感じられる演奏に感動した。)
まとめ
「様式美(ようしきび)」とは「手順や形式など、様式化されたものが作り出す美しさ」を意味する言葉で、芸術作品や建築物を評価する際に用いられます。また「決まりきった流れや物事、お約束」という意味もあり、特に若い人たちの間ではお笑いや音楽の分野において、この意味で使われることが多い言葉でもあります。