「愚考」はその漢字のイメージからネガティブなイメージにとられることも多いですが、ビジネスシーンでは敬語のひとつとしても用いられる表現です。「愚考」の詳しい意味とその使い方を例文とともに解説します。また、「愚考」の類語・言い換えや対義語についても触れています。
「愚考」の意味とは
「愚考」とは「愚かな考え」という意味
「愚考」とは「愚かな考え」という意味です。「ぐこう」と読みます。思慮が浅く愚かな考え、短絡的で浅はかな考えを指して「愚考」と言います。
「愚考」は「愚考する」の形で使うことができます。「愚考している」「愚考した」などと使うことも多いです。
「愚考する」と自分の考えをへりくだる意味も
また、「愚考」には自分の考えをへりくだっていう意味もあります。実際にその思考が愚かかどうかはさておき、自らを謙遜する意味もあるのです。
「愚考する」とは、自分が”考える”という動作をへりくだり、相手を立てた言い回しになります。書き言葉として、ビジネスメールに用いることが多いでしょう。
「愚考」の使い方とメール例文
「愚考しております」と自分の考えを示す
「愚考しております」とは「(自分は)こう考えています」と自分の考えを示す際の表現です。目上の人を前に使うことができます。
たとえば人とは異なる案を示す際に「愚かかもしれないが私はこう思います」とへりくだりながら主張するニュアンスにもなります。
「愚考いたします」は「~と考えます」の意味
「こちらが良いのではないかと愚考いたします」と使うと「こちらが良いのではないかと考えます」という意味になります。「愚考しております」と似た言い回しです。
AではなくBが適用されるのではないかと愚考いたします。その場合、法的にはどういった対処が必要なのかご教示願います。
「愚考した次第です」と考えを示す
「愚考した次第です」もまた、謙虚に自分の考えを示す際の表現です。「〜と考えた次第です」いうニュアンスで、考えを巡らせているような意味にとることができます。
以上のような理由で、B案が最適と愚考した次第です。
「愚考ですが」と前置きする使い方も
「愚考ですが」や「愚考を申しますと」と前置きとして使い、自分の主張に謙遜のニュアンスを加えることもあります。
- 愚考ではありますが、本件に関しては全体の意見をもう少し取り入れた方がよいのではないでしょうか。
- 愚考を申しますと、当初のプランで進めることが先決だと思います。
「愚考」の類語・言い換え表現とは
「愚考」の類語は「愚見」
「愚考」の類語は「愚見」です。「愚見(ぐけん)」とは「愚かな意見」という意味で、自分の意見・見解をへりくだっていう意味もあります。「愚見を申し述べる」などと使うことができます。
また、この「愚見」の類語では「私見(しけん)」も挙げられます。「私見」とは「自分一人の見解、意見」という意味で、この「私見」も謙遜のニュアンス込めた使用が可能です。
「考察」も類語のひとつ
「考察(こうさつ)とは「物事を明らかにするために調べ、考えを巡らせること」という意味です。「〜について考察する」の形でよく耳にします。へりくだったニュアンスを除いた場合の「愚考」は「考察」と似たニュアンスということができます。
ビジネスでは「考えております」に言い換えも
「愚考しております」「愚考いたします」などと使った場合の「愚考」はシンプルに「〜と考えております(考えています)」と言い換えても問題ありません。「考えております」は「おります」という謙譲語を含むため目上に敬意を払って使うことができます。
「愚考」と「愚行」は同音異義語
「愚考」と同じ読みをする熟語では「愚行」があります。一字違いと見た目にも似ていることから間違いやすいですが、両者は異なる意味の単語です。
「愚行」は「ばかげた行い、考えの足りない行い」といった意味で、一般にネガティブなニュアンスで用いられます。
「愚考」の対義語とは
「愚考」の対義語は「賢慮」
「愚考」の対義語は「賢慮」です。「賢慮(けんりょ)」とは「賢明な考え、優れた考え」という意味で、人の思慮をうやまって言う語でもあります。尊敬のニュアンスを込めて使えるという点でも「愚考」の対義表現です。
相手の考えを敬った表現では「お考え」
相手の考えに敬意を込めて言う表現では「お考え」も挙げられます。「考え」に尊敬の意味を持つ接頭辞「お」をつけた表現です。似た表現の「ご意向」もよく用いられます。いずれも会話でも使いやすい表現でよく耳にします。
まとめ
「愚考」とは文字通り「愚かな考え」という意味ですが、主に自分の考え・意見をへりくだっていう語として用いられます。たとえば「愚考いたします」「愚考しております」などの言い回しで、人とは異なる自分の考えを示す際に使用されることが多いです。
「愚考」と似た意味の語では「愚見」「私見」などがありますが、中でも「私見」は口頭でも使いやすい表現でしょう。
先行の案よりもこちらの方が良いのではないかと愚考しております。山田様のお考えもお聞かせください。