「ご令室」という言葉は葬儀の場や弔意をあらわす場面で使われる敬称です。日常生活では聞く機会があまりないかもしれませんが、急な葬儀の場に直面したときに慌てることのないよう、正しい意味を知っておきたいものです。「ご令室」の使い方や、葬儀の場で用いられるその他の敬称について解説します。
「ご令室」の意味と使い方とは
「ご令室」は「奥様」を指す敬称
「ご令室」とは、第三者の妻・奥様を指す敬称で「ごれいしつ」と読みます。おもに葬儀の場や弔意をあらわすシーンで用いられる言葉で、日常生活で使われることはほとんどありません。
「ご令室」の”令”には、相手の親族を尊敬する意味があります。また”室”は一族や家族といった意味を持つ言葉です。このことからも、「ご令室」は相手に対しての深い敬意や配慮をあらわす呼び方であることがわかります。
「ご令室」は弔電で使われることが多い
「ご令室」は前述したとおり、おもに葬儀の場で使われる言葉です。話し言葉・書き言葉のどちらにも用いられますが、多くは書き言葉として弔電(ちょうでん)で使われています。
「ご令室」は知人の奥様が亡くなられた場合に用います。また知人が妻帯者である場合、知人が亡くなった際の喪主は奥様になるので、喪主のことを「ご令室様」と呼びます。
「ご令室」の英語表現は「your wife」
「ご令室」は「奥様」をあらわす言葉であるため、英語で表現する場合は「your wife」となります。「妻・配偶者」を意味する”wife”をそのまま用いますが、配偶者という意味の”spouse”を用いて「your spouse」と表現することもあります。
英文で弔電を送る際には「your wife」を使うのが一般的です。
「ご令室」と「令夫人」の違いは
「令夫人」の意味は「ご令室」と同じ
「令夫人」は「ご令室」と同様、第三者の妻を敬って表現する言葉で「れいふじん」と読みます。
「令夫人」とは古代中国の宮廷で使われていた称号で、皇帝の妻を指していました。中でも美しさや教養の豊かさが優れており、他の妃たちとは一線を画す女性のことを「令夫人」と呼び、宮廷内で厚遇されていたといわれています。
「令夫人」は慶事の場で使われる
「ご令室」は葬儀の場(弔事)で用いられるのに対し、「令夫人」は結婚式の招待状・招待文や祝辞など、おもに慶事の場で使われます。これが両者の大きな違いで、意味は同じでも使うシーンが異なる点に注意が必要です。
「令夫人」は招待する相手の奥様を尊重するために使います。たとえば結婚式や披露宴に招待したい来賓がおり、招待状を書くという時です。ご夫婦で出席してもらいたいが奥様とは面識がない場合、奥様の宛名を「令夫人」と記します。
ただし「令夫人」は「様」よりも格上の敬称にあたります。よって、招待する側の親族や身内、友人の配偶者に対して使うのはふさわしくありません。「令夫人」の敬称は、会社の上司や取引先などの招待客の奥様に対して用いるものであるということをおさえておきましょう。
「ご令室」を使うときのポイントとは
「ご令室」は宗派を問わず使える敬称
葬儀の場は、宗教や宗派によって特徴・形式が異なります。たとえば仏教であっても宗派によって読まれるお経の種類や焼香の作法が違うという点です。
「ご令室」は宗派を問わず使うことができる敬称です。弔電で「ご令室」を用いる場合は宗教・宗派を気にせずに使って構いません。
「ご令室」を使った弔電の例
弔電で「ご令室」を用いる場合、「様」をつけます。表現や言い回しについては、電報サービスの文例集などを参考にして作成するのが無難です。
- ご令室様のご逝去の報に接し、謹んでお悔やみ申しあげますとともに、心からご冥福をお祈りいたします
- ご令室様の突然のご訃報に接し、驚きを禁じ得ません
「ご令室」を使った訃報の例
訃報(ふほう)とは、関係者に人が亡くなったことを知らせるものです。連絡方法は電話や手紙、メール、ファックスなど様々な手段があり、できるだけすみやかに知らせる必要があります。
訃報
営業課長○○氏のご令室○○様がご病気のため○月○日午後○時頃ご逝去されました
以下の日程で通夜告別式が執り行われますことを謹んでお知らせ申し上げます
「ご令室」以外の敬称とは
「ご令室」以外の敬称は「ご令閨」「奥方様」など
「ご令室」以外の敬称には「ご令閨」「奥様」「奥方様」などがあります。「ご令閨」は「ごれいけい」と読み、「閨」には”婦人”の意味を持つ字です。
弔電を送るときに「ご令室」では少し仰々しいかもと思う場合は「奥様」や「奥方様」を用いても問題ありません。
敬称は使い分ける必要がある
「ご令室」の他にも弔意をあらわすときに使われる敬称があり、続柄によって呼び方が決まっています。敬称は喪主から見た故人の続柄で表しますが、関係性に応じて呼び名を使い分けられるようにしておきましょう。
- 喪主が知人→喪主から見て故人は妻にあたるため「ご令室」を用いる
- 喪主が知人の義父→喪主から見て故人は娘にあたるため「ご息女(ごそくじょ)」「ご令嬢(ごれいじょう)」を用いる
- 喪主が知人→喪主から見て故人は母親にあたるため「ご母堂(ごぼどう)」「お母様」等を用いる
- 喪主が知人の父親→喪主から見て故人は妻にあたるため「ご令室」を用いる
まとめ
「ご令室」は第三者の妻・奥様を指す敬称です。葬儀の場や弔電を送るといった弔意をあらわすシーンで用いられる言葉で、日常生活で使われることはほとんどありません。訃報や弔電を送る機会に接するのは突然という場合がほとんどでしょう。いざという時に慌てず使えるよう、意味をしっかりと理解しておきたいものです。