「不安に苛まれる」「後悔に苛まれる」とは、どういった状況を意味するのでしょう。「苛まれる」の意味と使い方について、また、類語や対義語・英語訳についても併せて解説します。
「苛まれる」の意味とは?
「苛まれる」の意味は”苦しめられる・咎められる”
「苛まれる」の意味は、“苦しめられる・咎められる(とがめられる)”です。「さいなまれる」と読みます。
「苛まれる」は、”苛む(さいなむ)”を受け身の形にしたものです。「苛む」には、苦しめる・いじめる・厳しくとがめる、などといった意味があります。この「苛む」の受け身形が「苛まれる」なので、「苦しめられる」「咎められる」といった意味になるのです。
「苛まれる」の使い方と例文とは?
自分の行為・内にある想いに対して使うことが多い
「苛まれる」は、自分の間違った行い・過ちに対して自分を責めたり、うちに秘めた想いにもがき苦しんだりする様を表す際に用いられることの多い表現です。
- なぜきちんと確認しなかったのかと、後悔に苛まれる
- 罪悪感に苛まれ、胸が押しつぶされそうだ
- 良心の呵責に苛まれる
- 不安に苛まれ、夜も眠れない
- 激しい劣等感に苛まれている
いずれも、自らの行為や感情に苦しむ様を表しています。
人の行為に対しても使うことができる
「苛まれる」は自分の行為・感情に対して使うことの多い表現ですが、「今回の件で上司に苛まれることは間違いない」といった使い方も可能です。この場合、「責められる」「叱られる」といったニュアンスになります。
また、「継母に苛まれる」というと「継母にいじめられる」「虐げられる(しいたげられる)」といったニュアンスです。
「苛まされる」は誤り
「苛まれる」の誤った使用例としては、「苛まされる」が挙げられます。例えば「後悔に苛まされる」と使うのは誤りです。
先にも紹介したように、「苛まれる」は「苛む」の受け身形であるため、さらに受け身形にする必要はありません。「苛まれる」の形で「苦しめられる」「咎められる」といった意味を持つためです。「苛まされる」とする表現は誤りですので、使用しないようにしましょう。
「苛まれる」の類語とは?
「苛まれる」の類語は”咎められる”や”責められる”
「苛まれる」の類語には、「咎められる」や「責められる」が挙げられます。「咎められる」は、(非を)責められ怒られる・叱責される・非難される、といった意味の言葉です。「責められる」とは、言葉で追いつめられる様を表します。
他にも、「虐げられる(しいたげられる)」「いじめられる」なども、「苛まれる」の類語といえるでしょう。
「呵責」も「苛まれる」に似た意味の表現
「良心の呵責」という表現がありますが、この「呵責(かしゃく)」にも「苛まれる」に似た意味があります。「呵責」とは、しっかりと責めること・責め苦しめること、という意味の言葉です。
「かしゃく」は、「呵責」という表記が一般的ですが、実は「苛責」という表記を使うこともあります。意味はどちらも同じで、「良心の苛責」の他に、「苛責の念(呵責の念)」などといった表現も可能です。
「苛まれる」の反対語とは?
「苛まれる」の直接的な対義語はない
「苛まれる」と反対の意味を持つ直接的な言葉は存在しませんが、その意味を考慮すると、次のような言葉が「苛まれる」の対義語といえるでしょう。
- 褒められる
- 愛される
- かわいがられる
いずれも、「苦しめられる」や「咎められる」といった「苛まれる」の意味とは正反対の状況を表す言葉です。他にも、「楽しむ」といったニュアンスの表現も対義的表現として使うことができるでしょう。
「苛まれる」の英語表現とは?
「苛まれる」の英語訳は”torment”
「苛まれる」は英語で“torment”を使用します。「torment」には、「(肉体的・精神的に)苦しめる」という意味を持つ単語で、受動態で用いることで「苦しむ」という意味で使用されます。
- I was tormented with remorse(私は後悔に苛まれた)
- He was tormented by strong feelings of remorse(彼は強い自責の念に苛まれた)
また、gnaw(絶えず苦しめる・悩ます)を用いて「I was gnawed by anxiety(不安に苛まれる)」としたり、suffer(苦しむ)を用いて、「She is suffered from a crippling sense of inferiority(彼女は強い劣等感に苛まれている)」といった表現を使うこともあります。
まとめ
「苛まれる」は「責められる」「咎められる」という受け身の意味を持つ言葉です。「苛む」という言葉に由来する表現で、「苛まされる」とするのは誤りです。「激しい後悔に苛まれる」という風に、自らの過ちに苦しんだりくやんだりする様を表す際によく用いられます。