ビジネスや就職のときに使われる機会の多い「御社」と「貴社」という言葉。混合しやすい言葉なので、ここで整理しておきましょう。
今回は「御社」と「貴社」の意味と使い分け方に併せて、電話や口頭での話し方、メールや就職活動時のエントリーシート(ES)など状況ごとに正しい使い方を解説します。また「弊社」や「当社」との違いも紹介します。
「御社」と「貴社」の違いとは?
「御社」と「貴社」の違いは”話し言葉か書き言葉か”
「御社」と「貴社」の違いは、“話し言葉か書き言葉か”の違いです。「御社」は話し言葉であり、「貴社」は書き言葉になります。
そのため、面接や商談で相手の会社のことをいうときには「御社」を、メールや手紙、書類等で相手の企業を指す場合には「貴社」を使います。
「御社」は1990年代から話し言葉として使われる
現在では「御社」は話し言葉として使われていますが、それ以前は書き言葉としても使われていました。
ところが、話し言葉として「貴社」を使うと同音異義語が多く意味が取りずらいため、1990年代ごろから「御社」は話し言葉として、「貴社」は書き言葉として使い分けられるようになりました。
「御社」の意味は”相手の会社を敬った表現”
「御社」の意味は、“相手の会社を敬っている表現”です。読み方は「おんしゃ」です。会社以外にも神社に対しても「御社」は使われます。
「御社」の「御(お)」は接頭語で尊敬を表します。会社や神社を意味する「社」の前に「御」をつけた「御社」は、この言葉自体が尊敬表現になります。
- (電話で)「本日午後4時過ぎに御社へ伺います」
- (口頭で)「御社の企画案には感心致しました」
「貴社」の意味も”相手の会社を敬っている表現”
「貴社(きしゃ)」は「御社」と同様の意味で、相手の会社や神社を敬っている表現です。
「貴社」の「貴」は接頭語で相手に敬意を表した表現で「あなたの」という意味です。つまり「貴社」とは「あなたの会社」または「あなたの神社」という意味の言葉を尊敬表現に直した表現です。
「御社」と「貴社」の使い分け方とは?【ビジネスメール篇】
「貴社」は取引先の会社のことを指す
「貴社」はビジネスメールなどの書面で取引先の会社を指すときに使われる言葉です。「貴社」は書き言葉なので、電話や相手と会って話すときには使われません。
話し言葉で相手の会社を指すときは、「御社」が使われます。
- 「貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます」
- 「5月12日午後3時に貴社に伺いますので、よろしくお願いします」
「貴社」以外の相手を指す書き言葉
ビジネスメールなどの文書で相手の会社を指すときには「貴社」が使われますが、相手が会社ではなく、銀行や学校、病院や省庁などでは違った敬称が使われます。
銀行は「貴行」、学校は「貴校」、病院は「貴院」、省は「貴省」、庁は「貴庁」となります。
書面で相手のことを表すときには「貴」を使うと覚えておくと便利でしょう。
- (銀行宛てのメールで)
「貴行よりのご連絡をお待ち申し上げております」
「御社」と「貴社」の使い方とは?【就職篇】
「御社」は面接で使う
就職面接では、相手の会社のことを指すときは「御社」を使います。「御社」は会社に敬意を表した話し言葉だからです。
- 「私の経験を活かせると思い、御社を志望しました」
- 「御社のこれまでの実績を鑑み、是非入社させていただき御社の商品販売において尽力を尽くします」
- 「御社は今後の事業展開として、海外に進出する可能性があるのでしょうか」
「貴社」は履歴書やエントリーシート(ES)で使う
就職活動中には、「御社」と「貴社」の間違えずに使い分けることが大切ですが、履歴書やエントリーシート(ES)などの応募書類では、「貴社」が使われます。なぜなら「貴社」は相手の会社を尊敬する書き言葉だからです。
貴社に様をつけて「貴社様」という表記も見かけられますが、これは二重敬語となり文法的に誤りです。「貴」がすでに尊敬語で、更に尊敬語である「様」をつける必要ないので、「貴社」と表記しましょう。
- (履歴書の応募理由欄で)
「貴社は兼ねてより社会福祉事業に従事し、福祉サービスや訪問介護等で貢献されています」 - 「私は貴社で商品プランナーとして働きたいです。」
「弊社」や「当社」との違いとは?
「御社」や「貴社」と似た言葉に「弊社」と「当社」があります。ここでは、それぞれの意味と「御社」や「貴社」との違いを解説します。
「弊社」と「当社」は”自分の会社”という意味
「弊社」と「当社」のどちらも自分の会社を指す場合に使われる言葉です。「御社」と「貴社」は相手の会社を指す言葉という点で違います。
「弊社」とは”自社のへりくだった表現”
「弊社」とは、自分の会社という意味で、自社をへりくだるときに表現です。そのため相手を立てる場合に使われます。
「弊社」が使われるシーンとは、プレゼンや顧客との交渉で自分の会社の商品を紹介するときなどです。
「当社」とは”わが社”という意味
「当社」とは自分の会社という意味ですが、「弊社」のように自社をへりくだった表現ではありません。そのため、主に社内向けのメールや文書で使われる書き言葉として、自社の方針や実績などを伝える社内向けスピーチでの話し言葉としても使われます。
社外向けに使われるときもありますが、へりくだった意味合いがないため自社を誇示した印象が与えることもあり、顧客や取引先宛てのメールや手紙には「当社」よりは「弊社」を使った方がいいでしょう。
また、「弊社」と「当社」の使い分けに関しては、下記のサイトで詳しく解説していますので、ご参照ください。
「当社」と「弊社」の使い分け方とは?注意点も解説(例文付き)
まとめ
「御社」と「貴社」はどちらも相手の会社を敬う表現で、「御社」は話し言葉として、「貴社」は書き言葉として使い分けられています。尊敬表現はビジネス以外で使う機会が少ないため、「御社」と「貴社」は就職面接や書類の準備では間違えやすい言葉です。使い分け方を十分に理解して正しく使えるようになりましょう。