「色調」の意味とは?「トーン」「色相」「色彩」との違いも解説

絵画の解説などに「色調」という言葉がよく用いられます。「落ち着いた色調」「淡い色調」などと使う色調とは、どのような意味なのでしょうか?

この記事では「色調」の意味や類語「トーン」について解説します。あわせて「色相」「色彩」との違いや、色調を決定する表示形式についても紹介します。

「色調」とは?

「色調」の意味は色の配合や濃淡などの”色の調子”

「色調」とは、”色の調子”という意味です。色の濃淡や明暗、強弱などが総合された、色の感覚的な見え方を「色調」と表現します。読み方は、「しきちょう」です。

赤色や青色などの色そのものを指すのではなく、「明るい色調・暗い色調・穏やかな色調」などと、色の傾向を表現するときに用います。具体的には、「落ちついた色調のインテリア・春らしい色調のワンピース」などと目に見えるあらゆるものに対して使われます。

「色調」は明度と彩度のバランスで変化する

美術的には、明度と彩度を組み合わせた色の概念を「色調」と呼びます。両者の混合を変化させることで、明るい~暗い、淡い~濃い、などの色調を変化させることができます。明度と彩度については、のちほど「色の三属性」の箇所で説明します。

物事の傾向を比喩的に「色調」と表現することもある

「色調」は、実際の色合いを示すほかに、「哀しい色調のメロディー・憂いを帯びた色調の小説」などと、物事の傾向を比喩的に表現するときにも使われます。

特に音楽は、音色によって暖かい色や冷たい色を感じることがあり、音色のイメージと色調には親和性があります。

「色調」の類語とは?

「色調」の英語表現”Colour Tone(トーン)”

色調は英語で「Colour Tone」と書きます。カタカナ語では「カラートーン」ですが、略して「トーン」と使われることが多く、色調のことを”トーン”や”色のトーン”と言い換えることができます。

「色調」と同じ意味の”色合い”や”色の調子”など

「色調」の類語や言い換え方には、”色合い”や”色の調子”などがあります。また、次に詳しく説明しますが、「色相」や「色彩」は色という意味では同じですが、厳密には違う意味を持つため、遠い類語であるといえます。

「色調」と「色相」「色彩」との違いは?

「色調」とおなじく、色を表す言葉に「色相(しきそう)」や「色彩(しきさい)」があります。「色相」とは色の特徴を決定する「色の三原色」のうちの一つです。色調についてより詳しく知るために、これらの美術用語について解説します。

「色相」とは”色・色み”のこと

「色相」とは”色・色み”のことです。たとえば「赤いりんご・青い空」というときの”赤”や”青”といった色が色相です。「色調」は、色の濃淡や明暗、強弱などが総合された色の見え方を指すのに対し、「色相」は色そのものを分類する概念です。

赤・黄・緑・青・紫の5色相が基本色相で、そこに黄赤・黄緑・青緑・青紫・赤紫などを加えた色相を環状に並べて示す「色相環(しきそうかん)」がデザインの現場などで用いられています。混色による色相は200種類くらいまで見分けることができるといわれています。

「色相」は色の特徴を示す”色の三属性”のひとつ

色の特徴を示す分類方法に「色の三属性」があります。「色相」はそのうちのひとつで、他のふたつが「明度」と「彩度」です。

「色相」は、赤や青など色の見え方を分類するときに用いられる概念です。そして、色の明るさに注目して分類する概念が「明度」です。同じ色でも明るい色と暗い色があります。さらに、色の鮮やかさの属性を分類するのが「彩度」です。同じ赤の色相であっても、くすんだ赤色や鮮やかな赤色があります。

色の三属性の表れ方の違いにより、「色調」が決定されます。

「色彩」とは”色・彩り”のこと

「色彩」とは、色という意味では”色調”や”色相”と同じですが、色のとりあわせや彩り(いろどり)に注目して色を分類するときに使われる表現です。

「鮮やかな色彩をちりばめたデザイン」「色彩豊かな表現」「色とりどりの色彩」などと、色のとりあわせの美しさを言い表します。

また、色調とおなじく、美術的な色とは関係のない物事の性質や傾向、あるいは多様さを示すときに比喩的にも用いられます。「政治的色彩の強い発言」「感情の色彩が豊かに描き出された小説」などと使われます。

色を表すための表色形式とは?

決められた表示形式を用いることで、色を正確に再現することができます。感覚的な「柔らかい色調」や「強い色調」なども、数値で示すことが可能です。参考までに、光の3原色とそれをベースとした加法混色の表色方式を紹介します。

光の3原色「RGB」

光の3原色「R(赤)・G(緑)・B(青)」の配合比率を変えることで、ざまざまな色を表現する色の表示形式が「RGB(アールジービー)」です。コンピューターの液晶ディスプレイやデジタルカメラなどの画像再現に使われています。

R・G・Bの混合量を3連記すれば、全ての色を表示できるように体系化されています。光の3原色すべてが100の混色は白になります。

JIS規格に制定されている「XYZ表色系」

光の3原色RGBをもとに、光の特性と目の特性をルールに従ってXYZに変換して、三原色の量を表す表色系が「XYZ表色系」です。日本の産業規格JISに制定されており、広い分野で使用されています。

色差を測定するのに適した「Lab表色系」

XYZ表色系は人間の知覚よりも出力機器の都合に合わせて設計されていますが、人間の知覚に近似するように設計されたのが「Lab表色系」です。正しくは「L*a*b*表色系」と書き、エルスター・エースター・ビースターと読みます。

Lab表色系は、色同士の色差(2つの色の間の距離)を測定するのに適しています。

まとめ

「色調」とは、「色の調子」という意味で、「トーン」とも呼ばれます。色の濃淡や明暗、強弱などが総合された、色の感覚的な見え方を表現するものです。

色調は、明度と彩度の比重によって変化します。明度が高く彩度が低い色相は「穏やかな色調」と感じたり、明度が低く彩度が高い色相は「重厚な色調」と感じたりします。

デザインの現場では、色調は分類されており、さまざまな表色形式を用いて数値で表すことができます。