「恩讐」とは、「恩義とあだ」という正反対の漢字を組み合わせた単語で、1919年に発表された小説『恩讐の彼方に』のタイトルとしても知られています。本記事ではこの「恩讐」の詳しい意味とその使い方について解説。また、「恩讐」の類語として使える表現や英語訳についても触れています。
「恩讐」の意味とは
「恩讐」の意味は「恩義と恨み」
「恩讐」とは、「恩義と恨み」あるいは「情けとあだ」という意味です。「情けと恨み」「恩義とかたき」と解説されることもあります。
「恩讐」の読み方は「おんしゅう」
「恩讐」の「恩」は「おん」と読み、「めぐみ・いつくしみ」という意味を持つ漢字です。一方、「讐」の字は「しゅう」と読み、「むくいる・しかえしをする・かたき」などの意味を持ちます。つまり、「恩義と恨み」という相反する二つの漢字を重ねた単語ということになります。
「怨讐」の表記は誤り
「おんしゅう」と読む熟語にはほかにも「温州」や「怨讐」が挙げられますが、間違いやすいのが「怨讐」です。
「怨讐」は、「恨んでかたきとすること」という意味で、「えんしゅう」とも読みます。「怨」の字には「うらむ」という意味があり、「怨讐」は似た意味を持つ2つの漢字を併せた熟語です。この漢字の意味からも分かるように、「怨讐」と「恩讐」は異なる意味となります。
「恩讐」の使い方とは
「恩讐の彼方に」という表現で用いられることが多い
「恩讐」は、「恩讐の彼方に」という表現で用いられることが多々あります。「彼方(かなた)」とは「向こう・あちら」という意味で、直訳すると「情けとあだの向こう側に」という意味になります。
これはつまり、「良いことも悪いことも含めた様々な出来事・感情の果てに」というニュアンスにとることができ、「感情の揺れを越えた、酸いも甘いも経験した者にしかわからない達観した感情」を表現しているともいえるでしょう。
- いつかきっと、「恩讐の彼方に今がある」と言える日が来るだろう
- 恩讐の彼方の末、両者は和解に同意した
菊池寛作『恩讐の彼方に』にも由来する表現
「恩讐の彼方」という表現は、1919年に発表された菊池寛氏の小説『恩讐の彼方に』にも由来する表現です。この小説は、恩と恨みという相反する人間の感情を赤裸々に描いたとされる作品です。喜ばしいことや良いことがある一方で、辛いことや悪いことも起こりうる人生は、ありとあらゆる「恩讐」を含め人の一生なのだ、という人生観にも通じるものがあるとされています。
「恩讐を越えて」という表現も
「恩讐」は、「恩讐を越えて」という表現でも用いられます。「良くも悪くも、いろいろな感情・出来事があるがそれを越えて…」というニュアンスになり、様々な感情の揺れがありながらも、それを乗り越えた様を表す表現と言えるでしょう。
- 数々の苦難と恩讐を越えてこそ、今がある
- 恩讐を越えた関係に到達するには、それなりの年月が必要だ
「恩讐」の類語とは
「恩讐」の類語表現は「恩と仇」
「恩讐」と似た意味の表現には、「恩と仇(あだ)」が挙げられます。意味はまさに「恩讐」と同義で、「仇(あだ)」とは「かたき・恨み」という意味です。たとえば、「恩と仇の末に…」などの表現で用いることができます。
「恩讐を越えて」は「悲喜こもごも」「栄光と挫折」とも表現可能
「恩讐を越えて」を別の表現に言い換える場合には、「悲喜こもごも」や「栄光と挫折」などの相反する単語を使用した言い回しを使うことができます。
「悲喜こもごも」とは、「悲しみと喜びが入り混じる様」を意味し、転じて「様々な感情が沸き起こる様」を表す際にも用いられます。「ここに至るまでには、悲喜こもごもの物語があった」などといった使用が可能です。
一方、「栄光と挫折」とは、「成功や勝利などによる周囲からの評価」「失敗してだめになる」などの意味を持ちます。「栄光と挫折を経てこそ、成功にたどり着けるのだ」といった使い方ができるでしょう。
いずれも、決して平たんではない人生を象徴するような表現として用いられています。
「恩讐」の英語表現とは
「恩讐」は英語で「love and resentment」
「恩讐」は英語では、「love and resentment」と表現されます。
「love」は言わずもがな、「愛・愛情」という意味で、「resentment」は「恨み・憤り」などの意味を持つ単語です。「love and resentment」とすることで、文字通り「恩讐」という意味になります。
「恩讐を超えて」は「beyond love and hate」
また、「憎しみ」という意味を持つ「hate」を使った「love and hate(愛と憎しみ)」も「恩讐」の和訳が宛てられることがあります。たとえば、「恩讐を越えて」は「beyond love and hate」と表現することが可能です。
まとめ
「恩讐」とは、「恩義と恨み」という相反する意味を併せ持つ単語です。「恩讐の彼方に」や「恩讐を越えて」という表現でよく使用され、「様々な感情・出来事を乗り越えて」というニュアンスで好意的な文脈で用いられるのも大きな特徴です。これに対し、「怨讐」は「恨み」という意味の漢字を重ねた表現ですので、単に「恨んで敵とすること」を意味します。混同しないよう気を付けたい表現です。