「事業の一環として」「生活改善の一環として」など、「一環として」という表現を使うことがあります。本記事では、この「一環」という単語を取り上げ、その意味や使い方について解説しました。また、同じ読みの単語「一貫」との違いや類語・英語訳についても触れています。
「一環」の意味とは
「一環」の意味は「全体の一部分」、読み方は「いっかん」
「一環」とは、「全体の一部分」や「密接な関係を持つもののうちのひとつ」という意味です。「いっかん」と読みます。
この「一環」の「環」には「わ(輪)」という意味があり、「一環」は元々は「鎖のように連なっているもののうちの、ひとつの輪」という意味です。転じて、「全体の一部分」を表す際に用いられるようになりました。
「一環」の使い方と例文
「○○の一環」と使うことが多い
「一環」は、「〇〇の一環」という表現で「○○のうちのひとつ」に言及する際に用いられます。たとえば、「セミナー参加も業務の一環だ」というと「セミナーへの参加も業務のうちのひとつだ」という意味になります。
「一環」を使った例文
- 働き方改革の一環で、うちの会社もついにフレックス制度が導入された
- 業務の一環とはいえ、展示会への参加はワクワクするものだ
- 志望校を訪問してみることも受験の一環と言えるだろう
- 若者の間では「職場の飲み会=残業の一環」というのはもはや常識だ
「~の一環として」のフレーズでもよく用いられる
「○○の一環」という表現から派生して、「~の一環として」という言い回しもよく耳にします。この場合も上記と意味合いはほぼ同じで、「~のうちのひとつとして」という意味にとることができます。
「~の一環として」を使った例文
- 福祉政策の一環として、公的施設の見直しが行われた
- 都市計画の一環として、早急に対応がとられるべきだ
- 避難訓練だけでなく、平時からの備えも防災の一環として心得ておくべきだ
「一環の終わり」は誤用、正しくは「一巻の終わり」
「一環」を使った表現として「一環の終わり」が挙げられることがありますが、これは誤った使い方です。たとえば、仕事で重大なミスをしてしまい「ああ、いっかんのおわりだ」と嘆きたくなることがありますが、この場合は「一巻の終わり」と表現します。
「一巻の終わり」は、「すべてが終わること・結末が決まってしまいもはや手遅れであること」を意味する表現です。「一環」ではなく「一巻」と覚えておきましょう。
「一環」の類語
「一環として」を言い換えると「~のひとつとして」
「一環として」は、「~のひとつとして」という言い換えが可能です。たとえば、「福祉政策の一環として」は「福祉政策のひとつとして」と表現することができます。「一環として」に対して、「~のひとつとして」は端的でわかりやすい印象を与えます。
他に「一環として」と似た意味の言い回しを挙げるならば、「一部分として」「一連の流れの中で」などといった表現があります。
- 記念行事のひとつとして、多数のイベントが予定されている
- 防災訓練の一連の流れの中で、平常時からの対策も取り上げてほしい
- 社内美化は全社員が業務の一部分として認識すべきだ
「一貫」は意味の違う単語
「一環」と同じ読みの単語に「一貫」が挙げられますが、この「一貫」は「一筋に貫くこと・考えややり方を貫き通すこと」という意味を持ちます。「一貫して~する」「一貫した○○」などの表現でよく用いられ、「何があっても姿勢を変えず、決めたことをやり抜く」という意味で用いられます。
- 容疑者の男性は、一貫して無罪を主張している
- 開学当初から一貫した教育方針を掲げている
「一貫」は、端的に言うと「ずっと」というニュアンスを持つ単語です。これに対し「一環」は、「~のひとつ」という意味合いなので、異なる意味の単語と言えるでしょう。
「一環」の英語訳
「~の一環として」は「one of~」と英訳する
「~の一環として」は、「one of~」という英語訳が最も簡単でしょう。「one of~」で「~のうちのひとつ」という意味になり、「一環」を英語で表現する際に使用できます。
One of the disaster drills(避難訓練の一環として)
「~の一環として」は「as a part of」でも表現できる
他にも、「一部」や「部分的」という意味を持つ単語は複数ありますが、たとえば「as a part of 」などを使っても「一環として」のニュアンスを表現することができるでしょう。
- as a part of the program(プログラムの一環として)
- as a part of the ceremony(セレモニーの一環として)
まとめ
「一環」は「全体の一部分」という意味の単語で、「○○の一環」や「〇〇の一環として」などの表現で用いられます。いずれも、「〇〇の一部分として」という意味になり、全体のうちの特定の部分に言及する場合などに用いられます。これに対し、「一貫」は「貫き通すこと」という意味を持ちます。同じ読みでも意味の異なる単語ですので、区別して覚えておきましょう。