「ともかくやってみよう」「とにかくやってみよう」という表現がありますが、「ともかく」と「とにかく」には違いはあるのでしょうか。本記事では、「ともかく」の意味をはじめ、「とにかく」との違いやその使い方について例文で解説しました。また、「ともかく」の類語や英語訳についても触れています。
「ともかく」の意味とは
「ともかく」は「分析せずに受け止め、行動に出る様」を表す
「ともかく」とは、「細かい分析をすることなく、行動に出る様」を表します。その件に関しては不明確・不明瞭な点があるものの、それは置いておき、先に行動をとったり判断をしたりする際に「ともかく~」と使用します。
「ともかく」には「~は別として」「~はさておき」の意味も
「ともかく」には、「~は別として・~はさておき」の意味もあります。たとえば「~はともかく」の形で、不明確な事柄などを一旦保留にし、別の話題へ移る際に用います。問題があることを認識しながらも、異なる行動をとる場合に使用することができ、「さておき」と同じ意味を持つ単語です。
また、物事を対比させる場合にも使用することができ、「Aはともかく、Bは~だ」のような使い方も可能です。
「ともかく」を漢字で書くと「兎も角」
「ともかく」を漢字で書くと「兎も角」となります。「兎も角」という漢字表記の由来は、「とかく」に「兎角」の字を当てたことに始まるとされています。
この「兎角」は中国の「兎角亀毛」に語源があり、読んで字のごとく、「ウサギに角が生え、カメに毛が生えた」という「実際にはありえないもの」を意味します。このように「兎角」には歴史がありますが、「兎も角」という字は完全なる当て字とされているので、深い意味はないと考えることが多いようです。
「ともかく」と「とにかく」の違いとは
「とにかく」は「何か問題があっても」「ある事柄は別にして」という意味
「ともかく」と似た表現「とにかく」には、「何か問題があっても」「他のことは別として」という意味で用いられます。
また、特定の事柄を指さなくても、「とにかく急ぎましょう」のように「何が何でも急ぐ」と強調するニュアンスで使われることもあります。「とにかく面白い人だ」なども強調の意味で用いられる良い例です。
「ともかく」と「とにかく」はほぼ同義
「とにかく」が「何か問題があるがそれは置いておいて」という意味で用いられるのに対し、「ともかく」は「物事が不明瞭な場合に先に行動を起こす」というニュアンスがあるのが相違点と言えるでしょう。
ただし、現実には細かい意味合いの違いはあるものの、ほぼ同じように用いられています。
「ともかく」の使い方と例文
「ともかく~しよう」などの形で使われる
細かい点を分析せずに先に行動にうつす、というニュアンスで用いられる「ともかく」は、「ともかく~しよう」の形で用いられることが多いでしょう。たとえば、「ともかく、先を急ごう」や「ともかく実行してみることにしよう」などはその良い例です。
- 実現できるか分からないけれど、ともかくまずは部長に提案してみよう。
- 先のことは誰にも分らないのだから、ともかく今できることに全力を注ごう。
「~はともかくとして」は「さておき」の意味
「~はともかくとして」とは、「ある事柄は問題外として」「~はさておき」の意味合いで用いられる表現です。たとえば、「Aはさておき」というと、「Aに関しては問題外として置いておき」という意味になり、A以外について論じることを意味します。
- 合格かどうかはともかくとして、これまでの君の頑張りは十分評価に値する。
- 外観はともかくとして、この店のコーヒーの味は絶品だ。
また、単に「~はともかく」だけでも、「~は問題外として」のニュアンスとなる場合もあります。たとえば、「値段はともかく、これほどの質のものを手掛ける店はそうそうない」などの例が挙げられます。
「ともかくも」は「ともかく」を強調した表現
「ともかくも」は、「ともかく」の意味を強めた表現です。たとえば、「ともかくも無事が分かってほっとした」と使うと、「ほかのことはさておき、まずは無事が分かって安堵している」という気持ちを強調した表現となります。
また、「詳細はともかくも、方向性だけは先に決めておかないと」とは「細かい点は度外視するにしても、方向性だけは決めるべきだ」といった意味になります。「ともかく」と同じ意味にもとることができますが、強調のニュアンスを伴うことは覚えておきたいポイントです。
「ともかく」の類語とは
「ともかく」と似た意味の単語は「いずれにしても」など
「ともかく」と似た意味の表現には、「いずれにしても」や「いずれにせよ」などが挙げられます。その話題を一旦保留とし、別の話題に移る場合に用いられる表現です。ほかには、「それはさておき」や「それは別にして」なども、類似の意味を持つ表現です。
- いずれにしても、本日結論を出すのは難しいだろう。
- いずれにせよ、多少のリスクは覚悟した方がいい。
- 人事異動の件はさておき、まずは今の仕事に集中しよう。
「さておき」との違いはそれまで話題にしていたかどうか
「ともかく」と似た表現に「さておき」が挙げられます。いずれも、「(ある事柄は)別にして」と一言前置きするようなシーンで用いられる表現で、「~はともかく」を「さておき」に置き換えることができる場合も多いでしょう。
ただし、厳密に言うと、「さておき」はこれまで話題にしていた事柄に対して用いられるのが大きな特徴です。たとえば、
- Aさんは言い方にとげがある。
- 彼は口の悪さはさておき、仕事はできる人だよ。
という流れでは「さておき」「ともかく」のいずれでも成り立ちますが、事前に「口の悪さ」に対して言及していない場合は「さておき」という表現は用いないのが通例です。「彼は口の悪さはともかく、仕事はできる人だよ」と表現します。
「ともかく」の英語訳
英文中では「anyway」などで表現する
「ともかく」を意味する英語表現は「anyway」や「in any case」などが挙げられます。「anyway」には、「とにかく・それにもかかわらず」などの意味があり、「とにかく~しよう」という場合によく用いられる表現です。一方、「in any case」は「どんな場合でも・とにかく」といった意味があります。
- Let’s just go there anyway. (ともかく行ってみよう)
- I must go in any case. (いずれにしても、行かなければならない)
- Anyway I don’t like it. (ともかく気に食わない)
また、「ともかく」を表す英語表現はほかにも多数あり、たとえば「anyhow」や「at any rate」などもよく用いられる表現と言えるでしょう。「~は置いておき(別の話題に移る)」という場合には「setting aside」を使用したり、意訳した表現を使用したりする例も多く見受けられます。
- setting aside the question of expense,~ 費用に関する問題はともかく~
- joking aside,~ 冗談はさておき(ともかく)~
まとめ
「ともかく」は、細かい分析をせずに受け止める場合や物事が不明瞭な場合でも先に行動をとる、というような場合に用いられる表現です。強調の意味を持たせて「ともかくも」として使われることもあります。「とにかく」と若干のニュアンスの違いはありますが、ほぼ同義語として用いることができるでしょう。
営業スキルの面はとにかく、人当たりの良さは彼の強みだ。