企業の休暇制度のひとつに「夏季休暇」がありますが、「夏季休暇」と「夏期休暇」はどちらの表記が正しいのでしょう。「夏季休暇」の意味、運用方法や平均日数のほか、「夏季休暇」と「夏期休暇」の表記の違いについても解説します。また、「夏季休暇」の社外へのアナウンス文例も紹介します。
「夏季休暇」の意味とは?
「夏季休暇」は企業の休暇制度のひとつ
「夏季休暇(かききゅうか)」とは、“企業の休暇制度のひとつで、夏に設定される休暇のこと”です。「夏季」とは”季節としての夏”を意味し、夏の季節特有の事柄に言及する際に用いられます。たとえば、「夏季限定メニュー」というと「気温が高い夏に食べたい料理、冷たい料理」に対して用いられることが多いでしょう。
「夏季休暇」が無くても問題ない
「夏季休暇」は、法律によって定められた企業の休日(法定休日)ではなく、企業が独自に定める「法定外休日」に該当します。そのため、「夏季休暇」がなくても、企業としては問題ありません。 また、日数や運用方法も企業によって異なります。
「夏季休暇」を”計画有給”とする企業も
「夏季休暇」は企業が独自に定めることができるため、中には従業員の持つ有給を「夏期休暇」に充てる企業もあります。事前に制度をよく理解していないと「夏季休暇を取ったら有給がへった」という思わぬ事態にもなり、中には不服を唱える人もいるでしょう。
「夏季休暇に有給を当てる」というこのやり方は、「計画有給」と呼ばれます。「計画有給」とは、従業員が自由に取得できる年次有給休暇の日数を5日残せば、企業が有給取得日を指定できるというもので、あらかじめ労使協定によって定める必要があります。「夏季休暇」を「計画有給」とすることで、企業には従業員の有給取得率を上げることができるなどのメリットがあります。
「夏期休暇」の平均日数とは?
「夏季休暇」の日数・運用は企業によって異なる
先にも触れたように、「夏季休暇」の運用は企業に任されているため、その日数も企業によって異なります。厚労省の「平成31年就労条件総合調査の概況」によると、「法定外休暇」として「夏季休暇」を導入している企業は全体のおよそ4割です。また、同調査によると「夏季休暇」の平均日数は4.4日とあります。
たとえば、8月の13~15日のお盆の時期を「夏季休暇」とした場合は3日ですが、「夏季休暇」を5日間とした場合、前後の土日を含めると9日間となります。「夏季休暇」としては3~5日程度でも実際の休みはもう少し長い場合もあるかもしれません。
お盆に全社休業せず「いつでも取得可」とする企業も多い
「夏季休暇」をお盆の3日間とあらかじめ定めるのではなく、取得時期を従業員に任せる企業もあります。有給のように各々が「夏季休暇」を申請し、企業は通常営業を続けるというやり方です。この場合、「夏季休暇」というその名称から取得時期を「夏季」に限定する企業もあれば、6月から12月という風に長めに取得時期を設ける企業まで様々です。こうした細かいルールはいずれも、就業規則で定められます。
公務員の「夏季休暇」は3日以内の休暇が原則
公務員の場合、お盆の時期でも官公庁は通常営業となります。そこで、いわるるお盆休みに相当する3日間、公務員も「夏季休暇」として取得できる制度があります。7~9月の間に自己申告で連続3日以内の休暇が取得できるもので、元々は国家公務員の制度ですが、地方自治体でもこのやり方は広く採用されているようです。
「夏季休暇」と「夏期休暇」の違いとは?
「夏期」とは”夏の間の一定の期間”を意味する
「夏期」とは、”夏の間の一定期間”という意味です。単に「時期が夏である」ということを意味し、春でも秋でも大きな矛盾が生じないような物事に使われるケースが多いでしょう。たとえば、「夏期合宿」というと「たまたま夏に行われる合宿」というニュアンスになり、冬の場合は「冬期合宿」となります。
「夏季」が夏の暑さなど「夏らしさ」と関連するのに対し、「夏期」は7月・8月といったカレンダー上の期間に焦点を当てた表現ともいうことができるでしょう。
公的なシーンでは「夏季休暇」の表記が多い
では、「かき休暇」という場合にどちらの表現を使うのかというと、実際には「夏季休暇」の表記が広く使用されます。もちろん「今年は珍しく夏期に休暇を取ることになった」という風に「夏の時期の休暇」というニュアンスで用いることもできますが、法律等では「夏季休暇」の表記が一般的です。
英語では「夏季休暇」も「夏期休暇」も区別なし
英語で「夏季休暇」は「Summer holiday(s)」や「Summer vacation」「Summer break」などと表現されますが、この場合「夏季」と「夏期」の厳密な区別はありません。なお、アメリカでは「Summer vacation」、イギリスでは「Summer holiday(s)」の表現を用いることが多いようです。
「夏季休暇」の社外への知らせ方・メール文例とは?
全社休業の場合は必ず取引先にも共有を
「夏季休暇」が全社休業日となる場合は必ず取引先等にも連絡が必要です。この場合、「夏季休暇」ではなく「夏季休業」と表現することが多いでしょう。また、休業期間中の連絡先として個人の携帯電話を記載する人もいますが、連絡を受けても対応できないケースもあります。休暇中の対応先を記載する場合は、対応可能な連絡先を選ぶのもマナーです。
「夏期休暇のお知らせメール」文例:全社休業の場合
件名:夏季休業のご案内(○○株式会社 田中)
株式会社◯◯
●●様
いつもお世話になっております。
○○株式会社 田中でございます。
誠に恐縮ながら、弊社では下記の期間を夏季休業とさせていただきます。
【休業期間】 202*年8月*日(○)~8月*日(○)
営業は202*年8月*日(○)の午前9時より再開いたします。
夏季休業中のお問い合わせにつきましては、夏季休業期間後の回答とさせていただきます。
ご不便をおかけしますが何卒ご了承くださいますようお願い申し上げます。
署名
個人的に「夏季休暇」を取得する場合
件名:休暇のご案内
株式会社◯◯
●●様
平素よりお世話になっております。
○○株式会社 田中でございます。
本日は、私事で恐縮ですが、休暇のお知らせでご連絡いたしました。
誠に勝手ながら下記の期間休暇を頂きます。
当方の不在中は、同営業部○○までお問合せください。
休暇期間 :○月○日(○曜日)~○月○日(○曜日)
不在中担当者:営業部・○○○○
担当者連絡先:00-0000-0000
E-Mail:
お急ぎの用件などございましたら、○月○日までにご依頼いただけますと幸いです。
なお、休暇明けの出社は○月○日からとなります。
不在中、ご不便をかけますが、ご理解の程何卒よろしくお願い申し上げます。
署名
まとめ
「夏季休暇」とは企業が独自に定める休暇のひとつで、主に夏に取得する休暇を指します。「夏期休暇」の表記も誤りではありませんが、一般には「夏季休暇」の方が用いられます。なお、「夏季休暇」は企業によって異なります。従業員が個別に取得する場合や、全社一斉に休業とする場合など様々ですが、その運用は就業規則にて定められます。不明点は夏を迎える前に解決しておくとよいでしょう。
(夏季休暇)
第*条 従業員は、7月から9月の間で、会社に申し出ることにより、夏季休暇を5日間取得することができる。
2 前項の夏季休暇は、付与年度の10月以降に繰り越して取得することはできない。
3 業務の都合により、前項の夏季休暇の取得日を会社が変更することがある。