「タルタロス」はギリシャ神話に登場する奈落の神で、奈落そのものの名前でもあります。神の敵が送りこまれるタルタロスですが、ハデスが治める冥府との違いが分からない人もいるでしょう。
本記事ではタルタロスの特徴や名前の意味を解説します。また、タルタロスに送られた神々や、彼らに与えられた罰も紹介しましょう。
「タルタロス」とは?
「タルタロス」とは”ギリシャ神話の神”
「タルタロス」とは、“ギリシャ神話に登場する奈落の神”のことです。「奈落」とは仏教における「地獄」を意味し、霧がたちこめた淀んだ空間であることから神でさえも嫌っていました。「タルタロス」が司る奈落は大地のさらに深いところにあることから、「タルタロス」という名には「大地の奥底」という意味が込められています。
「タルタロス」はカオスから生まれた
「タルタロス」はギリシャ神話で最も古いとされる原初の神「カオス」から生まれました。タルタロスも原初の神々の1柱に数えられ、他にも大地の女神「ガイア」や恋心と性愛の女神「エロス」などがいます。
タルタロスは兄弟であるガイアと交わり、「テューポーン」と「エキドナ」という怪物をもうけます。テューポーンは「最大最強の怪物」と言われており、その強さは神々の王「ゼウス」に匹敵するほどでした。
「タルタロス」は場所の名前でもある
「タルタロス」は奈落そのものでもある
「タルタロス」は神の名前であるとともに、奈落そのものの名前でもあります。地の底にあるタルタロスはポセイドンが作った青銅の門と壁で覆われており、1度入れば逃げ出せないと言われています。
「タルタロス」では神の敵が罰を受ける
タルタロスには神の敵や、神の怒りを買ったものが幽閉されます。幽閉だけでなく、罪にみあった罰が与えられることもあります。たとえば、巨人の「ティテュオス」はゼウスの愛人「レト」を襲った罪で、ゼウスに殺されタルタロスに送られました。
ティテュオスには2羽のハゲタカが彼の肝臓を食べる罰が与えられます。また、ハゲタカではなく竜に肝臓を食べられるという説もあり、肝臓は食べられたそばから再生するため、永遠に肝臓を食べられ続けました。
「タルタロス」に幽閉された神や人間とは?
「タンタロス」は息子を殺した罪でタルタロスに幽閉
「タンタロス」は人間でありながら、神々の怒りを買ってタルタロスに幽閉されます。元はゼウスの友人であったタンタロスは、神々を試すために自分の子どもを切り裂いて、神々に出す食事に混ぜました。
多くの神は人肉の入った食事を口にしませんでしたが、豊穣の女神「デーメーテール」は気づかずに食べてしまいます。また、神々の食べ物を盗んだ罪もあり、怒った神々はタンタロスをタルタロスに送ったのです。彼はタルタロスで、永遠に飢えと渇きに苦しむ罰を与えられます。
「シーシュポス」は神をだました罪でタルタロスに幽閉
人間である「シーシュポス」は神々をだまし、愚弄した罪でタルタロスに送られます。ずる賢い性格をしていたシーシュポスは、ゼウスがアイギーナを誘拐したことを彼女の父に密告します。くわえて、彼を罰するためにゼウスが送り込んだ死神「タナトス」を欺き、死から逃れようとしました。
タルタロスに送り込まれたシーシュポスには、巨大な岩を押し進める罰が課せられます。岩が坂の頂上に達した瞬間、岩の重さが増して下まで転げ落ちるため、永遠に岩を推し進めなければならないのです。
「ティターン神族」は戦に負けたためタルタロスに幽閉
古の神々である「ティターン神族」は、ゼウスをはじめとする「オリュンポスの神々」との戦いに敗れます。10年にわたる戦に負けたティターン神族は、タルタロスに幽閉されます。巨大な身体をもつティターン神族がタルタロスで暴れることで、地上では地震が起こると信じられていました。
「ヘカトンケイル」は条件付きでタルタロスから解放
巨人の3兄弟「ヘカトンケイル」は、容姿の醜さからタルタロスに幽閉されます。しかし、ティターン神族との戦にゼウス側として加勢する条件で、ゼウスにより解放されます。その後、タルタロスに幽閉されたティターン神族の監視として、ヘカトンケイルは再び地上から姿を消したのです。
「タルタロス」と「ハデス」の違いとは?
タルタロスはハデスの冥府より下にある
タルタロスが治める「奈落」とハデスが治める「冥府」は異なります。「タルタロス(奈落)」は「冥府」よりもさらに奥底にあるとされ、その深さは天から地上までの距離と同じほどだと言われています。
また、「タルタロス」は神の敵や怒りを買ったものが送り込まれる場所ですが、「冥府」は罪の有無に関係なく死者の魂が送り込まれる場所です。冥府での裁判にて無罪であれば天国のような「エリュシオン」で、有罪であれば暗黒の世界「エレボス」で暮らします。ちなみにタルタロスは、悪人の魂が送られる「エレボス」よりもさらに深い場所に位置します。
まとめ
「タルタロス」とはギリシャ神話に登場する、奈落を司る神です。奈落そのものを「タルタロス」と呼ぶこともあり、神の敵や怒りを買ったものが送り込まれます。ハデスが治める「冥府」と混同されることがありますが、冥府はタルタロスよりも地上近くにあり、神の敵ではなく死後の魂が行く場所であるため別物です。