「俗物的な思考」「俗物根性」「俗物主義」など、「俗物」は人の考え方や生き方に対する批判めいた発言でしばしば用いられます。「俗物」の詳しい意味と読み方、その使い方を例文で詳しく解説します。また「俗人」などの類語・言い換え表現、対義語についても紹介しましょう。
「俗物」の意味とは
意味は「名誉や利益に心奪われている人」
「俗物」とは「名誉や利益に心を奪われている人」という意味です。転じて、「世俗的な名誉や利益ばかりを追い求めるつまらない人」「学問よりも利益を優先した無学な人」「芸術などに無関心な人、無風流な人」という意味でも用いられます。
また、単に「世俗の人、物」という意味もあります。
「俗物」の読み方は「ぞくぶつ」
「俗物」は「ぞくぶつ」と読みます。「ぞく”もの”」ではなく「ぞく”ぶつ”」読むのが正しい読み方です。
なお、「俗」の字には「ならわし、ありきたり」などの意味もありますが、「俗物」の「俗」は「いやしい、下品」という意味にとることができます。
「俗物」の使い方と例文
「俗物的思考」のように「俗物的な○○」と使う
「俗物的思考」とは「俗物のような考え方」という意味で、たとえば名誉や体裁を重んじるような考え方や利益を優先するような思考を指して用いられます。この「俗物的な」という使い方はよく見聞きするもので、「俗物的な発言」「俗物的なふるまい」などの使用例も挙げられます。
いずれも「世間的な利益ばかり追い求めるような○○」というニュアンスです。
「俗物主義」「俗物根性」は金や名誉を第一とする気質
「俗物根性」とは端的にいうと「金や名誉を第一に考える気質」のことです。「俗物的思考」と似た意味で用いられますが、単なる「考え方」ではなく「その人が根底に持つ気質、性根」というニュアンスが強くなります。
似た表現では「俗物主義」もあり、根っから利益や社会的地位を優先する考え方を指します。
- 彼女の俗物主義には嫌気がさしている。
- 俗物根性だけでトップに立つことはできない。
「俗物的な人だ」はネガティブなニュアンスがある
金銭や社会的地位のみを優先する人が批判の対象となることがあるように、「俗物根性」や「俗物的なふるまい」はしばしば嫌われるものです。同様に、「俗物的な人だ」という言い回しも批判や軽蔑の念をもって用いられます。
彼のような俗物的な人は、金もうけにならないコミュニケーションは無駄だと思っているだろう。
「俗物」の類語とは
「俗物」の類語は「俗人」
「俗物」の類語では「俗人」があります。「俗人」とは「名誉や利益にとらわれている人」「風流を解さない、教養の低い人」という意味です。「俗人」は「俗物」と似たニュアンスですが、「俗物」のほうが軽蔑心が強い語と紹介されることもあり、「俗人」のほうがややライトな印象で用いられるようです。
また、「俗人」には上記以外にも「僧侶に対して世間一般の人、世俗の人」という意味もあります。
「俗物」はカタカナ語で「スノッブ」とも
カタカナ語「スノッブ」も「俗物」という意味です。「俗物根性」は「スノビズム」と表現されます。
ビジネスシーンにおける「スノッブ」は「スノッブ効果」というマーケティング用語としても知られます。「スノッブ効果」とは、他者の消費が増えるにつれて需要が減少する効果のことです。わかりやすく言うと、「ほかの人と同じものは持ちたくない」という心理からくる現象ということができるでしょう。
「俗物的な」は「低俗な」に言い換えも
「俗物」の持つ「(利益を優先し学問をないがしろにした)無学な人」や「芸術に無関心な人」というニュアンスでは「低俗な」という語が言い換えに使える場合があります。
「低俗な」とは「程度が低く、趣味が悪いこと」「下品な様」という意味です。お金ばかりこだわる様は、時に「低俗な思考」などと表現することができるでしょう。
「俗物」の反対語や対義語とは
「俗物」の対義語は「雅物」
「俗物」の対義語は「雅物」です。「雅物(がぶつ)」とは「風流な人、風雅を好む人」や「風流、風雅なもの」という意味です。「俗物」とは異なり、詩文や書画、茶道などを好む人を指して「雅物」と使う例が挙げられます。
「粋人」も反対語として使える
「俗物」とは反対の意味を持つ語では、「粋人」も挙げられます。「粋人(すいじん)」とは「風流を好む人、優雅で趣味の豊かな人」を意味します。また「粋人」には「花柳界の事情に通じている人」という意味もあり、転じて「世間の人情、事情の裏表をよく知る人」を指しても用いられます。
まとめ
「俗物」とは「利益や名誉に心を奪われている人」という意味です。お金や名誉に固執するあまり学問に無関心な人(無学な人)、芸術に関心がなく無風流な人を指しても用いられます。発言やふるまいに対して「俗物的」と使うほか、根っからの利益主義であるさまは「俗物主義」「俗物根性」と表現されることもあります。「俗物的思考」に対して嫌悪感を持つ人は多く、ネガティブな評価として用いられることが多いのが特徴です。