「ご遠慮ください」とは禁止ではない?意味や言い換えの例文も紹介

「飲食の持ち込みはご遠慮ください」「おタバコはご遠慮ください」というアナウンスを見聞きしますが、この「ご遠慮ください」には法的な禁止の意味はありません。

本記事では、「ご遠慮ください」の意味や強制力の度合いについて解説します。また「ご遠慮ください」より丁寧な表現や言い換え表現についても例文を使って紹介しましょう。

「ご遠慮ください」の意味とは

「ご遠慮ください」とは「控えてください」の意味

「ご遠慮ください」とは「控えてください、慎んでください」という意味があります。「ご遠慮ください」の「ご」は尊敬の意味を持つ接頭辞で、「ください」は「くれ」の丁寧語です。

わかりやすくいうと、相手に敬意を払いながら「やめてください」と依頼する意味合いがあります。

「ご遠慮下さい」と書くのは間違い

「ご遠慮ください」は「ご遠慮下さい」と漢字で書かれることもあります。「下さい」と「ください」には文法上の違いがあり、「下さい」は実質動詞(くれの尊敬語、丁寧語)、「ください」は補助動詞(依頼する時の丁寧語や敬意を表す尊敬、丁寧語)として使用するのが通例です。

そのため、「ご遠慮ください」は補助動詞として、ひらがなで書くのが正しいということになります。

「ご遠慮ください」は禁止ではない?

「ご遠慮ください」に法的な禁止の意味はない

「ご遠慮ください」は、相手に控えるよう依頼する表現ではありますが、法的な禁止のニュアンスはありません。「絶対にやるな」という強制力を持った表現ではないため、マナーとして控えることが多いでしょう。

そもそも「遠慮」とは、「他人に対し自分の言動を控えめにすること」という意味です。自分以外の誰かに「控えてほしい」というニュアンスで使用するのは、誤りとする意見もあります。現代では広く用いられているため、許容とされることが多いです。

「ご遠慮ください」に強制力や命令を感じる人もいる

「ご遠慮ください」の「ください」は命令形であることから、「ご遠慮ください」という表現にも強制力や命令のニュアンスを感じる人もいます。

「やめてください」という意味も相まって、強制されたと感じることもあるでしょう。使う場合は、相手の不快感につながらないよう配慮が必要です。

「ご遠慮ください」の使い方と例文

「ご遠慮ください」はクッション言葉と一緒に使う

相手への心象を考慮し、「ご遠慮ください」は語気を和らげるクッション言葉と共に使うのが通例です。たとえば「恐れ入りますが」「大変申し訳ございませんが」と前置きした上で「ご遠慮ください」と使います。

例文

大変申し訳ございませんが、長時間の座席の占有はご遠慮ください。

「ご遠慮くださいませ」は柔らかい印象に

「ご遠慮ください」の語気を和らげるため、語尾に「ませ」を付けた「ご遠慮くださいませ」という表現もあります。「ください」で終わるよりも柔らかい印象になります。

「くださいませ」は、もともと女性がよく使っていた表現です。最近は男性も使うようになり、接客や電話対応で見受けられることが多いようです。

「ご遠慮くださいますようお願い申し上げます」

「ご遠慮ください」を使った丁寧な依頼フレーズとして、「ご遠慮くださいますようお願い申し上げます」が挙げられます。「ご遠慮ください」と言い切るより、「お願いします」や「申し上げます」を使うことでより丁寧な印象です。

なお、「ご遠慮願います」という言い回しもよく見聞きしますが、「願います」には相手を敬うニュアンスがないため丁寧さに欠ける表現でしょう。

例文

大変申し訳ございませんが、会場内でのご飲食はご遠慮くださいますようお願い申し上げます。

「ご遠慮いただければ」「ご遠慮いただきたく」

丁寧に依頼する表現としては「ご遠慮いただければと存じます」や「ご遠慮いただきたく存じます」といった言い回しも可能です。いずれも「遠慮してほしいと思います」という意味で、目上の人にも失礼なく使える表現でしょう。

例文

恐れ入りますが、申し込み後の変更はご遠慮いただければと存じます。

「ご遠慮ください」の言い換えや類語とは

「お控えください」はよく使われる類語

「ご遠慮ください」の類語は「お控えください」です。「お控えください」の「控える」とは、「自分の行動をおさえる、度を越さないようにする、差し控える」などのニュアンスがあります。「お控えください」は、相手に抑制してほしいと依頼する表現です。

なお、「ご遠慮ください」と「お控えください」では、「お控えください」の方が柔らかい印象で受け取られます。

「おやめください」も禁止を意味する表現

相手に何らかの言動をやめさせる際に「おやめください」という表現を使うこともあります。「やめてください」よりは丁寧な印象ですが、「ご遠慮ください」よりは強制力を感じる表現でしょう。

たとえば「~は大変危険ですのでおやめください」のように、危険行為を明確に禁止する意味で用いられることも多いです。

「お断りします」に言い換えられることも

「お断りします」とは、相手の申し出や希望を「拒否する、受け入れない、辞退する」という意味を持ちます。

たとえば、「家庭ごみの持ち込みはご遠慮ください」は「家庭ごみの持ち込みはお断りいたします」と言い換えても同じニュアンスになります。

「ご遠慮ください」の英語訳とは

「ご遠慮ください」の英語は「refrain」を使う

「ご遠慮ください」の英語訳では、「控える、慎む」という意味の「refrain」を使用します。たとえば「Please refrain from smoking here.」は「喫煙はご遠慮ください」という意味です。

「Please do not~」という英語を使う例も

「ご遠慮ください」の英語表現では、「Please do not~」という言い回しを使用することもあります。特に、標識や看板で控えるよう伝える場合は「PLEASE DO NOT SMOKE.(喫煙はご遠慮ください)」のように、すべて大文字で記載する例も多いです。

まとめ

「ご遠慮ください」とは「控えてください、慎んでください」という意味です。本来「禁止」の意味はないものの、相手にやめてほしい言動を指して「ご遠慮ください」と使います。

「恐れ入りますが~」とクッション言葉とともに使ったり、「ご遠慮いただきたく」「ご遠慮いただきますよう」とできるだけ丁寧な言い回しを心がけるのが通例です。