社会主義とマルクス主義との関係とは？共産主義との違いも解説

「社会主義」とは「財産は社会全体で所有する平等社会を目指す思想や運動」という意味ですが、「マルクス主義」とはどのように関係しているのでしょうか。また「共産主義」とはどのように違うのでしょうか。

この記事では「社会主義」の意味や歴史に併せて、マルクス主義から社会主義へと発展した経緯のほかに、共産主義や資本主義などとの違いも説明します。

「社会主義」の意味とは？

「社会主義」とは「財産を共有して平等社会を目指す思想」

「社会主義」とは、「財産は社会全体で所有する平等社会を目指す思想や運動」のことです。社会主義は資本主義とほぼ同時期に生まれたと言われていて、産業革命をきっかけに資本主義により裕福になる人と貧困に苦しむ人や失業者との経済格差を批判して、社会主義という考え方が生まれました。

「空想的社会主義」とは実現できない社会主義

最初の社会主義として出てきた考え方が「空想的社会主義」です。ユートピア社会主義とも言われて、資本主義の貧富の差を批判して、失業や貧困もなくした平等社会を目指しました。

しかし、空想的社会主義を提唱したイギリスのオーウェンや、フランスのサン・シモンなどは、実現のための科学的な分析が足りず、実生活から離れた思想として展開したことから、実現が難しい考え方でした。

「マルクス主義の社会主義」とは科学的社会主義

次に出てきた社会主義は、資本主義を科学的に分析して提唱した「マルクス主義の社会主義」です。科学的社会主義という別称もあり、資本主義の社会と経済の科学的な分析を土台にして、実現可能な社会主義思想として生まれました。

資本主義が発展していくと、生産手段などが個人のものになり、富のある資本家と富を持たない労働者との間で対立します。そこで、生産手段の私有を辞めて、代わりに計画的な国民経済の管理を行って平等社会を実現を目指すという主張です。

しかしマルクス主義の社会主義も完全ではないとして批判を受けました。マルクス主義の社会主義では、労働者の働きに応じて生産物を受け取るという原則があります。そのため、よく働く労働者はたくさんの生産物を受け取れますが、あまり働かない労働者は受け取る生産物が少なくなります。労働次第で受け取る生産物の違いが不平等を招くことから、マルクス主義の社会主義も完全ではありませんでした。

「社会主義」と「共産主義」「資本主義」「民主主義」との違いとは？

社会主義と共産主義では「平等社会の完成度」が違う

「社会主義」と「共産主義」では、平等社会の完成度が違うと言えるでしょう。

マルクス主義の社会主義を提唱したマルクスとエンゲルスは、社会主義を共産主義の前段階だと位置づけています。なぜなら社会主義では平等社会を目指すものの、労働者の働き方次第で受け取れる資本（給料）が違うので、完全な平等社会ではありません。しかし共産主義では、資本や財産などすべてを平等に分け与えられる平等社会を目指す思想なので、共産主義の方が社会主義よりも人々の平等性が高まります。

ただし平等社会で、労働者の必要に応じて資本が分配されると、働く能力が高い人が低い人と変わらない分配量では不満が起こるため、共産主義では、労働者の道徳や生産力も向上して個人格差がなくなることを前提にしています。その結果、国家による管理もなくなり、個人が自主的に社会を管理することを目指しています。

社会主義の資本主義では「経済の動かし方」が違う

「社会主義」と「資本主義」では、経済をどのように動かすのかが違います。社会主義では個人が資本を持つことなく、国が資本を国民に分け与えます。一方、資本主義では個人が資本を持つことができる私有財産制なので、経済活動において利潤を得ようとすることが原動力となる経済システムです。

また、社会主義では貧富の差は大きくないのですが、自由競争がないため経済的な発展がゆっくり進む傾向があります。それに対して、資本主義では労働次第で利益が増えることから経済的な発展は早く進む傾向があります。しかし社会的な不平等や大きな経済的な格差が生じやすくなるという問題があります。

社会主義と民主主義は「その思想が活かされる領域」が違う

「社会主義」は平等社会を目指すための経済システムについての思想ですが、「民主主義」は国民に主権があるとする政治システムについての思想です。

社会主義と民主主義のどちらも「主義」という言葉が付いているので似ているように感じるかもしれませんが、社会主義は経済で、民主主義は政治において活かされる思想です。

社会主義の国はどこ？

社会主義国は「中国・キューバ・ラオス・ベトナム・北朝鮮」

2022年5月現在、社会主義体制の国は「中華人民共和国（中国）」「キューバ共和国」「ラオス人民民主共和国」「ベトナム社会主義共和国」「朝鮮民主主義人民共和国（北朝鮮）」の計五か国です。

これらの社会主義国家に共通していることは「一党独裁」で、また社会主義の理念である平等社会の実現は難しく、貧富の差の大きい国が多いです。

ロシアは社会主義国ではない

ロシア（正式名称「ロシア連邦」）はかつて社会主義国家でしたが、現在では資本主義経済の国です。社会主義国家だったロシアの旧国名「ソビエト社会主義共和国」は、1991年12月に崩壊しました。

「社会主義」の英語表現

「社会主義」は英語で「socialism」

「社会主義」は英語で「socialism」です。社会主義者は「socialist」ですが、「socialist」は形容詞で「社会主義の」という意味で使われることもあります。また「社会主義」の形容詞には「社会主義的な」と訳されることも多い「socialistic」もあります。

カタカナで「ソーシャリズム」と書くのが英語の発音と近いことから、社会主義のことをカタカナ語で「ソーシャリズム」または「ソシアリズム」と使われていることもあります。

まとめ

「社会主義」とは「資産を共有して平等社会を目指す思想や運動」という意味です。資本主義を批判して生まれた思想で、格差のない社会を作るための思想として考えられていますが、社会主義国家の理想を実現することは難しいと言われています。