「年季が入る」は「年季が入った職人」と人に使ったり「年季が入った家具」と物に使ったりすることもあります。この「年季が入る」とはどういった意味なのでしょう。使い方・例文解説とともに、「年季を感じる」などの類語や「年季」と「年期」の違いについても解説します。
「年季が入る」の意味とは
年季が入るとは「長く使い込まれている」こと
「年季が入る」とは「道具などが長く使い込まれている」という意味です。良い意味で用いられるほか、「老朽化している」とややネガティブな意図で用いられることもあります。
「確かな腕をしている、熟練する」という意味もある
「年季が入る」は「長い間修練を重ね、確かな腕をしている」という意味も持ちます。腕が上達していること・熟練していることなど、職人に対して用いられることが多い意味です。
「年季」とは「奉公する年限」のこと
「年季が入る」の「年季」は、もともと「奉公する約束の年限」という意味です。「年季奉公(ねんきぼうこう)」とも呼ばれ、年単位で住み込んで働くことを指します。
雇われ先で一定期間働くことで技術が磨かれることから、「年季が入る=何年も経験を積み確かな腕前となる」という意味になったとされています。
「年季」と「年期」の違いは「期間だけをさすかどうか」
「年季」に熟練しているという意味合いがあるのに対して、「年期」は単純に「1年を単位として定めた期間」という意味で使われます。「あることをするよう約束されている期間」を指しても使用し、たとえば「年期契約」は年単位での契約という意味です。
「年期が入る」「年期を感じる」の表記は誤り
「年季が入る」の「年季」と「年期」は同じ読みをしますが、「ねんきが入る」や「ねんきを感じる」などの言い回しに「年期」の字を当てるのは誤りです。
「年季が入る」の使い方と例文
人に対して使うと「熟練した様」を褒める意味に
「年季が入る」は「年季が入った職人」のように人に対して使うと、その熟練した腕前を誉めるニュアンスになります。
- 彼はもう年季が入った、立派な職人だ。
- 無口だが年季が入った職人だし、何より信頼できる。
ものに対して使うと「使い込まれた」というニュアンスに
「年季が入る」を道具や物に対して使うと「長い間使い込まれた」という意味になります。歴史を感じさせる好意的な意味合いで使用される一方で、遠回しに「古びている」と述べる場合にも使用されます。
- この財布もいい具合に年季が入ってきた。革製品はやはり使い込まれた風合いがいい。
- このソファも年季が入ってきたのでそろそろ買い替えたい。
「年季を入れる」と使う例も
「年季が入る」ではなく「年季を入れる」と使う例もあります。これは誤りではなく「その技術や仕事を修練すること、長い期間をかけて努力して鍛錬すること」といった意味になります。
僕も年季を入れるためにパリに行こうと思っている。
「年季が入る」のその他の活用例
「年季が違う」も際立つスキルを誉める意味に
「年季が違う」とはそのスキルが長い間の経験や修練に裏打ちされていることを表します。わかりやすくいうと、長い年数の修練を思わせるほどに素晴らしい様に使用します。
比べるのも失礼だが、僕なんかとはやっぱり年季が違う。
「年季を感じる」は長い年月を感じさせる様
「年季を感じる」は長い年月を経たと感じさせる様に使う表現です。物に対して使うと「長年使われてきたと感じさせる風合い」を、人に対して使うと「熟練した技術」を思わせます。
「年季を積む」は「修練を積むこと」
「年季を積む」とは「年数をかけて修練を積むこと」という意味です。先述した「年季を入れる」と似たニュアンスともいえるでしょう。
「年季が明ける」は奉公期間の終了を表す
「年季が明ける」とは、奉公する約束の期限を終了することを意味します。現代でも、長い年数をかけてやっと一人前になるとされるような職人仕事では、独立できるだけのスキルを備える様を「年季が明ける」と呼ぶことがあるようです。
「年季が入る」の類語や言い換え・対義語とは
「円熟」は「年季が入る」の類語として使える
「年季が入る」と似た意味の表現では「円熟」が挙げられます。「円熟(えんじゅく)」とは、人格や技術などが十分に熟達することという意味です。
たとえば「年季が入った職人」は「円熟した職人」と言い換えることができます。この「円熟」は、人だけでなく「円熟した技術」のようにものごとに対しても使える表現です。
「年季が入った〇〇」は「古びた」に言い換えも
物に対して使った「年季が入った〇〇」は、「古びた」と言い換えることが可能です。「古びた」は単に古くなった、というだけでなく時間の経過を感じさせる表現です。たとえば「年季が入った腕時計」は「古びた腕時計」ともいうことができるでしょう。
「年季が入る」の対義語は「未熟」「青二才」
「年季が入る」と反対の意味を持つワードでは「未熟」「青二才」が挙げられるでしょう。いずれも、経験や技術などが足りない様を表します。「青二才」は特に、若い男性に対して使います。
対義語として使える慣用句は「くちばしが黄色い」
経験の足りない様を表す慣用句では「くちばしが黄色い」が挙げられます。「くちばしが黄色い」はひな鳥のくちばしが黄色い様を例えとして使った表現で、ひな鳥=若くて経験が少ないというニュアンスです。
「年季が入る」の英語訳とは
「年季が入る」は英語で「experienced」
長い間修練を積み確かな腕をしている、という意味の「年季が入る」は「experienced」を使用します。「exerienced」は「経験を積んだ、老練な」などの意味を持つ単語です。たとえば「年季が入る」の英語訳としては「an experienced teacher(年季の入った教師)」などの英訳例が挙げられます。
「使い込まれた様」の英語表現は「well-used」
一方、「使い込まれた」という意味の「年季が入る」は「well-used」と英訳することができます。「well-used」は「使い古した、よく利用される」という意味の表現です。たとえば「well-used fireplace」は「年季が入った暖炉」という意味です。このほか、単に「old(古い)」を使った英語訳も可能です。
まとめ
「年季が入る」とは、物に対して使うと「長く使い込まれた」という意味に、人に対して使うと「熟練した確かな腕を持つ様」という意味になります。使う対象に応じて二ュアンスが変わるのがポイントです。
なお、「年季が入る」や「年季を感じる」などの表現に「年期」を使うのは誤りです。文章全体の意味が変わるため気をつけましょう。