「達者でな」「お達者で」というと時代物の映画のワンシーンを思わせるフレーズですが、「口達者」「達者なやつ」といった表現でも「達者」という語は耳にします。本記事では「達者」の意味をはじめ、その語源や使い方を例文で詳しく解説します。また「達者」の類語・対義語や英語訳など関連用語についても紹介しましょう。
「達者」の意味とは
「達者」とは「慣れていて巧みな様、熟達している人」という意味
「達者」とは「物事に慣れていて巧みなさま」「学問や技芸などに熟達している人」という意味を持ちます。いわゆる「達人」と呼ばれるような人は「達者」と表現することができます。
「達者」には「健康な様」「したたかな様」という意味も
「達者」には「体が丈夫で健康な様」という意味や「抜け目がなくしたたかな様」という意味もあります。この「したたかな様」という意味は「うまく立ち回って抜け目がない」というと好意的にもきこえますが、否定的・批判的なニュアンスでも用いられる意味です。
「達者」の語源は漢語にある
「達者」の語源は漢語にあるとされていて、本来は「広く物事に通じた人」を指したようです。「達」の字には「すぐれる、物事によく通じる」という意味があり、この意味に由来する語とも言えるでしょう。
「達者」の使い方と例文
「口達者」「口が達者」とは「口がうまいこと」
「口達者」とは「言葉巧みにしゃべること、よく話す様・人」という意味です。たとえば「営業はみな口達者だ」というと「営業はみなよくしゃべる」というニュアンスです。「よく話す」というと好意的にも聞こえますが、「口達者」には「物言いが巧みで口がうまい」とややネガティブな意味で用いられる例もあります。
また、「口達者」は「彼は口が達者」「口が達者なやつ」などといった言い回しでも同じ意味になります。
「巧みである」と褒める意味で使う例
「達者」は「巧みである」とスキルを誉める意味で用いることも可能です。たとえば「泳ぎが達者」は「泳ぐのがうまい」という意味になります。
彼は若い時は通訳を目指していたそうで、英語だけでなくフランス語も達者だ。
「どうかお達者で」は健康を祈る意味
「どうかお達者で」は別れ際の挨拶で、「どうかお元気で」というニュアンスです。この場合の「達者」は「健康な様」を表します。
一般には「お達者で=お元気で」という好意的な意味ですが、「もう会うこともないだろうけどせいぜいお元気で」と皮肉めいた使い方をされることもあります。
別れ際の「達者でな」も方言ではない
時代物の作品で登場人物が別れ際に使う「達者でな」というフレーズもまた「元気でな」という意味です。「どうかお達者で」をフランクにした表現ということもできるでしょう。その語尾の響きから方言のような印象も受けますが、地域を限定して使うというよりはやや古めかしい表現という方があうかもしれません。
「達者」を「元気な様」という意味で使った言い回しではほかにも「祖母は達者です」「達者に暮らしています」などが挙げられます。また、「達者者」と熟語として使い「健康な人」というニュアンスを出すこともあります。
「足腰が達者」は「足腰が丈夫な様」
「足腰が達者」と使った場合、「足腰が丈夫」という意味になります。先述の「健康な様、元気な様」という意味と似ていますが、とりわけ、ある部分が優れているというニュアンスにとることができる言い回しです。
昔の人は足腰が達者だったとよく耳にする。
「達者」の類語・言い換え
「達者」の類語は「手練」「エキスパート」など
「達者」と似た意味の語では「手練」が挙げられます。「手練(てだれ)」とは「技芸、武芸などに熟達していること」という意味です。「手練の職人」などと使うことができます。似た意味では「腕利きの職人」という言い回しも可能です。
また、カタカナでは「エキスパート」も「達者」の類語と言えるでしょう。「エキスパート」とは端的にいうと「専門家」のことで、「経験を積んだ高度な技術を持つ人」のことを指します。
「息災」「健やか」「元気」に言い換えられる例も
「達者」を「健康である様、元気な様」という意味で使った場合は「息災」や「健やか」などの表現に言い換えることができます。「息災(そくさい)」とは「健康である様」を、「健やか」とは「心身が健康である様」を表します。
また、別れ際の「お達者で」は「お元気で」と言い換えられます。
「達者」の対義語とは
反対の意味の語は「未熟」
「達者」と反対の意味を持つのは「未熟」です。「学問や技芸に熟達している」という意味の「達者」に対し、「未熟」は「熟練していないこと、一人前でないこと」という意味です。
「不達者」も対義表現のひとつ
「達者」とは反対の意味を持つ表現では「不達者」も挙げられます。「不達者(ぶたっしゃ)」とは「達者ではないこと、達者ではない人」という意味です。
「達者」の英語訳とは
「達者」は「good」や「well」を使った英訳が可能
「達者」を英語訳する際は「good」や「well」などの単語が使用できます。たとえば「語学の達者な人」は「a good linguist」と英訳することができるでしょう。「She speaks good English.(彼女は英語が達者だ/英語を達者に話す)」といった表現も可能です。また、「巧みである」は「expert」と表現する例もあります。
She is expert in Economics.(彼女は経済の専門家だ)
また、「good」や「well」は「元気で」「丈夫な」といった意味でも使用できます。
My grandmother is in good health.(祖母は達者にしています)
「口が達者」の英文例
「口が達者だ」「口達者だ」の英語訳では「good at talking」という表現も使用できますが、皮肉をこめて「口がうまい」という場合は「glib tongue」という表現を使用します。たとえば「You have glib tongue.」とは「君は本当に口達者だね」とやや批判的なニュアンスになります。
まとめ
「達者」にはいくつかの意味があり、「熟達している様、巧みなさま」「健康な様」「したたかな様」などの意味があります。たとえば「口が達者」というと「口が上手い、話が巧みな様」を、「語学が達者」というと「語学に長けている様」を表します。また「元気な様」を「達者」と表現するなど、様々な使い方が可能です。
彼は口達者なので詐欺師が向いているんじゃないか。