「爪に火をともすような生活」というとどういった生活を意味するのでしょう。本記事では「爪に火をともす」という慣用句の意味・使い方を例文で解説します。また「爪に火をともす」の類語と反対の意味を持つ表現に加え、同じ“火”を使った慣用表現についても紹介します。
「爪に火をともす」とは?
「爪に火をともす」の意味は”貧しい生活を送る、倹約すること”
「爪に火をともす」の意味は、“ひどく貧しい生活を送る、苦労して倹約する”ことです。“ちょっとした節約生活”ではなく、極めて倹約した生活を送る様を指すのがポイントです。また「ひどくケチなことのたとえ、非常に吝嗇(りんしょく、極度に物惜しみすること)」という意味もあります。
漢字では「爪に火を灯す」や「爪に火を点す」
「爪に火をともす」は、漢字では“爪に火を灯す”や“爪に火を点す”といった表記で用いられることもあります。いずれも「ともす」と読み、「爪に火をともす」と表記した場合との意味の違いはありません。ただし、「爪に火を燃やす」と表現するのは誤りです。
由来や語源は「ろうそく代わりに爪を使う様」
「爪に火をともす」という慣用句は、”ろうそく代わりに爪に火をつけて使う”様子を表しています。爪は放っておいても伸びてタダで使えます。灯りをともすろうそくすらも買えないほど貧しい、あるいはろうそくのお金すら惜しみ、爪に火をつけて灯り代わりにしているという意味です。
「爪に火をともす」は江戸時代の俳諧集の話に由来する説もあり、高価な油が買えずに爪を代用したとされています。
「爪に火をともす」の使い方と例文とは?
「爪に火をともすような○○」と使うことが多い
「爪に火をともす」という慣用表現は、”爪に火をともすように~”や”爪に火をともすような~”などの表現で用いられることが多いです。たとえば、「爪に火をともすような生活」とは”きわめて倹約した生活”あるいは”非常に貧しい生活”という意味になります。
- 爪に火をともすような生活には、もう戻りたくない
- 爪に火をともすようにして、ここまでやってきた
倹約家やケチな人を指して使う例も
「爪に火をともす」は人を指しても使うことがあります。たとえば「彼は爪に火をともすようなケチな奴だ」といった表現が良い例です。ただし、この場合はネガティブなニュアンスになることが多く、“ドケチ”のように悪い意味で用いられます。
爪に火をともすとは、彼女のことを言うんだろう。
「爪に火をともす」の類語や反対語とは?
「けちん坊の柿の種」が似た意味のことわざ
「爪に火をともす」と似た意味のことわざ・慣用表現としては“けちん坊の柿の種”が挙げられます。「けちん坊の柿の種」とは”柿を食べた後に種を大事にしまい込むほどケチな人”という意味です。
ほかに、「袖から手を出すことも嫌い」という表現も”お金どころか袖から手を出すことさえも嫌がる=非常にけちだ”という意味の表現です。
「質素・倹約・ケチ」なども類語として使える
「爪に火をともす」の言い換えには、“質素・倹約・ケチ”などを使った表現も可能です。たとえば、「非常に質素・倹約を極めている」のように言い換えると”爪に火をともす”ニュアンスが伝わるでしょう。
「爪に火をともす」の反対語は”湯水のように使う”
「爪に火をともす」と反対の意味の表現では“湯水のように使う”が挙げられます。ここでいう「湯水(ゆみず)」とはどこにでもあるものの例えで、「湯水のように使う」は惜しげもなくむやみに使うことを表します。特に金銭に対して用いられるのが特徴で「金を湯水のように使う」といった表現が可能です。
また、似た表現では「金に糸目をつけない」も”惜しみなくいくらでもお金を使って事に当たる”様を表します。
「浪費する・豪遊する」なども反対の意味
「爪に火をともす」と反対の意味では、“浪費する・豪遊する・派手に使う”なども挙げられます。慣用句ではなく直接的な表現ですが、いずれも「無駄に費やすこと、大金を使い派手に遊興すること」を表します。
「火」を使ったその他の慣用表現とは?
「しりに火がつく」とは切羽詰まった様を表す
「爪に火をともす」と似た語感の慣用表現に「しりに火がつく(尻に火がつく)」があります。「しりに火がつく」とは、”物事が切羽詰まって追い詰められた状態になる”という意味です。「ルーズな彼も、とうとうしりに火がついたようだ」のように使います。
「心に火をともす」とは気持ちが穏やかになる様
「火をともす」を使った表現として、「心に火をともす」という表現も見聞きすることがあります。「心に火をともす」とは、やる気を起こす・情熱を芽生えさせるという意味です。ほかに、温かい気持ちになるというニュアンスで用いられることもあります。
いずれにしても「爪に火をともす」のような貧しい生活、倹約といったニュアンスはありません。
「爪に火をともす」の英語訳とは?
「爪に火をともす」は英語で”He will shave a whetstone”
「爪に火をともす」の英語訳としては“He will shave a whetstone”という表現が用いられます。直訳すると「彼は砥石を剃る」という意味です。「砥石(刃物などを研ぎ磨く石)の表面がダメになってもその部分をさらに削って再利用する」という様を倹約の例えとして表しています。
「skinflint」や「frugal」を使った英語訳も
「爪に火をともす」は、しばしば”非常にケチな様”を指して用いられることから、「skinflint(ドケチ、守銭奴)」や「frugal(質素な、つつましい)」「mean(卑劣な、けちな)」などを使った英語訳も可能です。
- an extremely frugal life(爪に火をともすような生活)
- He is a skinflint.(彼はドケチだ)
- He is excessively mean.(彼は過剰にケチだ)
まとめ
「爪に火をともす」とは”非常に貧しい生活を送る、極めて倹約する”という意味です。ちょっとした節約生活ではなく、爪に火をつけて灯りの代用とするほどの貧しさや倹約を意味します。「ドケチ」のようにネガティブな意味合いもあるため、使う際は十分に気をつけましょう。