「陥穽」の意味とは?語源や「陥穽に嵌る」の使い方と例文・類語も

「陥穽に嵌る」「陥穽に陥る」とは歴史物の小説でも耳にするややかたい表現ですが、この「陥穽」とは何を意味するのでしょう。「陥穽」の意味・読み方をはじめ、その使い方を例文で詳しく解説します。

また「陥穽に陥る」が二重敬語に該当するかどうかや「陥穽」の類語・英語訳など関連用語についても触れています。

「陥穽」の意味と語源とは

「陥穽」とは「人をおとしいれる策略」を意味する

「陥穽」とは「落とし穴」という意味で、元々は動物などを落とす穴を意味する熟語です。そこから派生し「人をおとしいれる策略、わな」「窮地におとしいれるための策略」という意味でも用いられます。

「陥穽」の読み方は「かんせい」語源は漢字の意味

「陥穽」の読み方は「かんせい」です。「陥」は「おとしいれる、だます」という意味を、「穽」は「落とし穴」という意味を持つ漢字です。また、「穽」は訓読みで「おとしあな」と読むこともできます。

「陥穽」という熟語の語源はそれぞれの漢字がもつ意味に由来します。同義語は漢字を入れ替えた熟語「穽陥(せいかん)」です。

「陥穽」の使い方と例文

「陥穽に嵌る」「陥穽にかかる」などと使う

「陥穽」は「陥穽に嵌る(はまる)」や「陥穽にかかる」などの言い回しで用いられます。いずれも相手の策略や罠(=相手の落とし穴)にはまり、おとしいれられる様を表します。

例文
  • 上司の陥穽にまんまと嵌ってしまった。
  • そのような陥穽にかかるほど私も落ちぶれてはいない。

「陥穽に陥る」は重複表現ではなく「計略にかかる様」

「陥穽に陥る」とは「策略や計略にかかる」という意味です。「陥穽に陥る」は「陥」という漢字を2度使用していることから、「重複表現では?」との声もありますが、「陥穽に陥る」は一般に広く用いられる言い回しです。

使用しても問題ありませんが、漢字の重複が気になる場合は「陥穽に落ちる」「陥穽にかかる」などの言い回しに換えた方が無難でしょう。

例文
  • 相手の陥穽に陥り、まんまと出し抜かれてしまった。
  • これは偶然ではなく、わたしが敵に陥穽に陥ったのだ。

「陥穽」のその他の例文

「陥穽」はほかにも「デジタルトランスフォーメーションに潜む陥穽とは?」「敵の陥穽を見抜く」のように使う例もあります。また、本来の意味である「動物などを陥れる落とし穴」という意味では次のような使用も可能です。

例文
  • 害獣をしとめるために陥穽をしかける。
  • イノシシを捕らえるための陥穽を作る。

「陥穽」の類語・言い換え表現とは

「陥穽」の類語は「計略」「策略」

「陥穽」と似た意味の語は「計略」や「策略」が挙げられます。「計略(けいりゃく)」とは「相手をだまそうとするたくらみ、前もって考えておく手段」という意味です。「策略(さくりゃく)」もまた似た意味を持ち、「目的達成のために相手をおとしいれるはかりごと」という意味の表現です。

「謀略」とは「人をあざむくようなはかりごと」

「謀略(ぼうりゃく)」とは「人をあざむくようなはかりごと」という意味です。「謀略をめぐらす」という表現でしばしば用いられ、「陥穽」と似た意味を持つ語のひとつです。

「謀略」は「謀」という漢字の持つ意味から、“よからぬこと”というネガティブなニュアンスの強い熟語でもあります。

「陥穽」とは「トラップ」に言い換えも

「陥穽」は「トラップ」と言い換えることも可能です。「トラップ」には動物を捕獲するための罠という意味の他、誰かを陥れるための策略という意味にもとれる表現です。「陥穽」が堅い表現であるのに対し、「トラップ」は使いやすい表現といえるでしょう。

「陥穽」の英語訳とは

「陥穽に陥る」は英語で「fall in a trap」

「陥穽に陥る」は英語では「fall in a trap」と表現することができます。「trap」は類語として紹介した「トラップ」の由来となる英単語で、「わな、計略、策略」などの意味を持ちます。

「fall in a trap」の他にも、「be caught in a trap(わなにかかっている)」「walk into a trap(わなに陥る)」などといった英語表現も可能です。

「plot」を使った英語表現も可能

「plot」もまた「陰謀、策略」などの意味を持つ英単語です。たとえば「fall to someone’s plot」で「~の陥穽に陥る」というニュアンスになります。ほかにも「a small plot」は「つまらない陥穽」という意味です。

まとめ

「陥穽」は「動物を落とす穴、獣などを捕らえるための穴」という意味ですが、転じて「人をだますためのわな、落とし穴」という意味でも用いられます。「陥穽に嵌る」「陥穽に陥る」などの言い回しで使うことが多く、いずれも「誰かの策略にかかる様、おちいる様」を表します。

「陥穽」を他の語に言い換えるのであれば「策略」や「謀略」といった熟語のほか、「トラップ」に置き換えても意味が通ります。日常的には「陥穽」よりも「トラップ」や「罠」などのワードの方が使いやすい表現です。