「貴職」は「きしょく」と読み「あなた」の意味を表す敬称ですが、どんな人にも使えるというわけではありません。「貴職」はどのような人に対して使えるのか、具体的に解説します。また他の言い換え表現や英語表現についても紹介します。文書やメールを書く際に知っておくと役立ちますので、ぜひ参考にしてください。
「貴職」の意味と読み方
「貴職」の意味は「あなた」を表す敬語
「貴職」は二人称で「きしょく」と読み、「あなた」の意味を表す敬語です。もともと「貴職」とは「高い位の職業・職種」で、おもに医師や弁護士、政治家など社会通念的に地位が高いとされている職業がそれにあたります。
「貴職」は「あなた」という意味で使うことができますが、使える相手が特定の職業に就いている人に限られているという特徴があります。その職業に就いている人であれば、男性女性を問わず用いることができる二人称の敬語です。
「貴職」は文書で使う言葉
「貴職」の言葉が実際に使われるのは、おもに文書内です。中でもビジネスシーンでの文書やメールで目にする機会が多くあります。口頭や会話の中で使うことはほとんどありません。
「貴職」はビジネスシーンでの文書の挨拶文で使われることが多く、「貴職におかれましては…」と挨拶の冒頭で用いられたり、「貴職のご活躍を心よりお祈りしております。」と、結びの文で用いられたりします。具体的な使い方については、後ほど紹介します。
「貴職」の使い方
「貴職」は特定の職業の人に対して使う
「貴職」はもともと、公務員を指す尊敬語として用いられていました。現在では対象は公務員に限定されていないものの、前述したように特定の職業に対して使うことができる言葉です。一般企業に勤める人に使うのは正しい使い方ではありませんので、気をつけてください。
- 弁護士や司法書士、裁判官、医師など”士業”と呼ばれるもの
- 国家資格の専門家
- 市長や議員などの政治家
「貴職」の使い方と例文
「貴職」は前述した通り、ビジネスシーンでの文書やメールで使用する言葉です。文章の冒頭や文末で感謝やお礼の気持ちを述べる前に使うことで、丁寧さを表現できます。
「貴職」は「あなた」の敬称にあたるため、文中で相手のことを指す言葉として用います。
- 貴職におかれましては、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
- 貴職におかれましては、日ごろからご愛顧いただきありがとうございます。
- 貴職のご活躍を心よりお祈りしております。
- 今後とも、貴職の益々のご尽力を賜りますようお願い申し上げます。
「貴職」の関連語「貴職下」「貴職員」の使い方
「貴職」に関連する言葉には「貴職下(きしょくか)」「貴職員(きしょくいん)」があります。
「貴職下」とは、「貴職」と示している人の部下を表す言葉です。たとえば「今回の研修につきまして、貴職下にご協力いただきたく存じます」という文章の場合、文章の相手の部下へ研修の協力をお願いしたい、という意味になります。
「貴職員」は三人称として用いる言葉で、貴職と示す人だけでなく、その部下などが含まれます。たとえば「貴職員のお心遣いありがとうございます」という文章の場合、文章の相手に加えてその部下も含めた複数人を指す意味となります。
「貴職」を使う時の注意点とは?
「貴職」は自分には使えない
「貴職」は「あなた」を表す二人称です。また、「貴職」は特定の職業に就いている人へ向けた敬意を示す言葉でもありますので、自分自身に対して使うことはできません。
自分自身について表す言葉には「当職」を使います。ただしこれは自分自身が前述した職業(士業や医師・政治家など)に就いている場合に使える呼称です。一般的な職業の場合は「小生(しょうせい)」を用います。
「貴職」は団体に対しては使えない
「貴職」は二人称にあたるため、団体に対しては使えない言葉です。複数の人に対しては前述した通り「貴職員」を用います。
ちなみに、一般企業を呼ぶ敬称は「貴社(きしゃ)」や「御社(おんしゃ)」ですが、貴職の対象となる病院を呼ぶ敬称は「貴院(きいん)」または「御院(おんいん)」を用います。また、弁護士事務所や法律事務所などの敬称は「貴所(きしょ)」が使われるケースが一般的ですが、近年は一般企業と同じように「貴社」を使うこともあります。
「貴職」の言い換え表現と類語は?
「貴職」の言い換え表現は「貴殿」「貴台」
「貴職」の言い換え表現にあたる敬称は「貴殿(きでん)」や「貴台(きだい)」があります。
「貴殿」はおもに男性が相手の男性を敬って使う二人称で、目上の相手か同等の男性に対して使う言葉です。「貴台」は「貴殿」よりもさらに丁寧な言い方の二人称で、特に目上の人に対して用います。
どちらも話し言葉としてではなく、ビジネスシーンでの文書やメールなど、改まった文書で用いられます。
女性には「貴女」を使うとよい
「貴職」は女性にも使うことができますが、言いかえ表現の「貴殿」は男性に対してのみ使える表現です。そのため、女性に対しては「貴女(きじょ)」を使うとよいでしょう。
「貴女」は「きじょ」が本来の読み方で、もともとは「ぎじょ」とも読まれていました。現代は「あなた」と読むことが多く、こちらの読み方のほうがよく知られています。
ちなみに「貴台」は、男女問わずどちらにも使うことができます。
「貴職」の英語表現は?
「貴職」の英語表現は「high class job」か「you」
「貴職」の英語表現は「high class job」です。「貴職」が意味する「高い位の職業」を英語に表したものです。
「あなた」を敬う表現は英語にはないため、その場合はそのまま「you」を使います。英語表現においては丁寧な尋ね方や表現は存在するものの、敬語の概念や目上や目下といった区別はないからです。
「あなた」を敬う二人称の「貴職」の意味で「high class job」を使うと意味が通じなくなってしまうので気をつけてください。
「high class job」「you」を用いた英文例
- He gets the work of the high class job.(彼は高い位の職業に就いている。)
- I wish your achievement heartily.(貴職のご活躍を心よりお祈りしております。)
まとめ
「貴職」は「あなた」の意味を表す敬称で、ビジネスシーンにおける文書やメールで使用する言葉です。文章の冒頭や文末に使うことで相手への敬意を表現できますが、特定の職業に対してのみ使うことができる言葉です。一般企業に勤める人に使うのは正しい使い方ではありませんので、誤用することのないようしましょう。