本を読んでいて「拙著」という表現を見たことはありませんか。「拙著」は作家や歌人など文学の分野においてはよく聞かれる言葉ですが、日常会話の中で見聞きする機会はあまり多くないかもしれません。
この記事では「拙著」の意味や使い方について詳しく解説します。また、類語や反対語、英語表現についても紹介しましょう。
「拙著」の意味とは?
「拙著」とは「自分が書いた書物」を意味する謙譲語
「拙著」は「せっちょ」と読み、「自分が書いた書物」のことを謙遜した表現です。本や書物を出版したことがある人、またこれから出版する人が自分の著作物のことをへりくだっていうときに用います。敬語の種類としては、謙譲語にあたります。
「拙著」は、作家や歌人など文学の分野においてよく使われますが、日常会話で用いられる機会はあまりないでしょう。
「拙著」の「拙」は”じょうずでない、つたない”の意味を持ち、自分のことや自分に関わることを謙遜していう時に用いられます。「著」は”書きあらわす”の意味があり、書物そのものを意味する漢字です。
「拙著」は論文に対して使うことも
「拙著」は基本的に出版された書物について用いる表現です。自分が出版した本や執筆した本のことを人に話す、あるいは紹介する際に「拙著」と表現します。
書物の種類には小説や歌集・詩集だけでなく、論文も含まれます。研究者が自分の論文をまとめて自費出版したものも「拙著」と表現することができます。
また、研究者の場合は自分が書いた過去の書物を引用して新たな研究を行うことも多いものです。そのようなときに過去の書物のことを「拙著」と表すケースがあります。
「拙著」の使い方と例文
「拙著ではございますが」は出版したときに使う
「拙著ではございますが」とは、本を出版したときに使える表現です。「つたない著作ですが」という意味になり、相手にへりくだって自分の著作を紹介するときに用います。
- 拙著ではございますが、お収めいただければと思います。
- 拙著ではございますが、お読みいただければ幸いです。
「拙著を謹呈する」は自分が書いた書物を贈るときに使う
「拙著を謹呈する」は、自分の書いた書物を誰かに贈るという意味の表現です。「謹呈」は敬意をこめて人に物を贈る意味があり、”謹んで差し上げる”の意味合いがあります。
自分の書物が出版されると、出版社からできあがった書物を受け取ることがあります。その際、知人やお世話になった人に感謝の気持ちを込めて、書物を謹呈するケースが多いようです。挨拶の言葉として「拙著を謹呈いたします」が使えます。
- 拙著を謹呈いたしますので、お時間のある時にご覧いただければ幸いです。
- 拙著を謹呈させていただいた方から、数多くの感想が届いた。
「拙著」を使ったその他の例文
- 拙著ではこの件についても詳しく触れています。
- 拙著がおかげさまで売れ行き好調のようです。
- 拙著に対して様々な意見を頂きました。
「拙著」の類語・反対語とは?
「拙著」の類語は「拙作」「愚作」
「拙著」の類語は「拙作(せっさく)」です。「拙著」はおもに文学や論文といった分野に用いますが、「拙作」の場合は広い範囲をたとえることができ、書物のほか絵画や手芸、陶芸なども対象になります。
このほか「愚作」も類語として使うことができます。「愚作」とは”くだらない作品”の意味ですが、自分の作品のことをへりくだっていう時に用います。
ただし「愚作」は”くだらない作品”という意味で他者の作品に対しても使える言葉でもあります。他者の作品に対して「愚作」とたとえてしまうと、大変失礼な表現になるため気をつけてください。
「拙著」の反対語は「高著」
「拙著」の反対語にあたる言葉は「高著(こうちょ)」です。「高著」とは他人の著書を敬う意がこめられた表現で、「ご高著を拝読いたしました」「御高著を送ってくださりありがとうございます」のように”ご”や”御”の接頭語をつけて使うことが多い言葉です。
また、研究者が論文やレポートを作成する際には、他者の文献や論文を引用したり参考にしたりする機会が多いものです。そういったとき、文中で他者の文献を指す際の言葉として「高著」が用いられます。
「拙著」の英語表現とは?
「拙著」の英語表現は「my book」
「拙著」は自分の書物という意味なので、英語で表すと「my book」あるいは「my work」です。
英語表現には、謙遜の言葉という”へりくだった表現”が存在しません。謙遜は日本独自の文化であるといえるでしょう。そのため、英語表現はシンプルに表し、日本語に訳す際に「拙著」とするかどうか判断することになります。
「my book」を使った英語例文
- Recently I published my book.(このたび、拙著を出版いたしました。)
- I’m sending you a copy of my book.(拙著の一部を送ります。)
まとめ
「拙著」は「せっちょ」と読み、「自分が書いた書物」の謙遜表現です。本・書物・論文を出版したことがある人やこれから出版する人が自分の著作物のことをへりくだっていうときに用いる言葉です。そのため日常会話の中で見聞きする機会はあまり多くないかもしれませんが、意味を知っておくと役に立ちます。