「ご健勝のことと拝察いたします」とは挨拶文の一節ですが、この「拝察いたします」は他にも「心中拝察いたします」など相手を思いやるフレーズとしても用いられます。
「拝察いたします」の詳しい意味と敬語の種類、その使い方を解説しましょう。ビジネスシーンで使える例文や類語・言い換え表現も参考にしてみてください。
「拝察いたします」の意味と敬語の種類とは
「拝察」とは「推察」の謙譲語
「拝察いたします」の「拝察(はいさつ)」とは、推察することをへりくだる表現です。人の心情や事情を思いやること、おしはかることという意味があります。
「拝察いたします」とは「心情などを察する」の意味
「推察すること」の謙譲語としての意味を持つ「拝察」は、「拝察いたします」の形で「心情や事情をお察しします」という意味になります。相手の心中などをあれこれと考え思いやる様を表します。
「拝察いたします」は二重敬語ではない
「拝察」という語には謙譲語としての意味が含まれることは先述の通りです。加えて「いたします」は「いたす+ます」で成り立ち、「いたす」は「する」の丁重語に当たります。丁重語もまたへりくだる意味があるものの、聞き手や読み手に敬意を示す敬語である点がポイントです。
一般に、同じ種類の敬語を2つ以上重ねて使うことは「二重敬語」と呼ばれ嫌われますが、「拝察いたします」は二重敬語には該当しません。
「拝察申し上げます」も間違いではない
「拝察いたします」と似た表現で「拝察申し上げます」と使う例もあります。この「拝察申し上げます」も一般には許容される表現で、間違いとはされていません。
なお、この場合の「申し上げます」は「する」の謙譲語として用いられているため「拝察もうしあげます」とひらがなで書くのが本来は正しいようです。
「拝察いたします」の使い方1:あいさつ文
「ご健勝のことと拝察いたします」
「拝察いたします」は、書状のあいさつ文で用いられることがよくあります。その代表的な例が「ご健勝のことと拝察いたします」です。
「健勝」とは健康であること、元気なことという意味で、端的にいうと「健康でいらっしゃることと思います」といったニュアンスになります。「健勝」に限らず、同じくあいさつ文でよく用いられる「ご清祥」「ご清栄」などと使う例もあります。
「ご活躍のことと拝察いたします」
「拝察いたします」の使用例では「ご活躍のことと拝察いたします」も挙げられます。「ご活躍のことと拝察いたします」は平たくいうと「活躍していると思います」という意味です。
「相手が活躍している=仕事などがうまくいっている」という意味になり、その活躍を称えるニュアンスになります。
〇〇様におかれましては、ますますご活躍のことと拝察いたします。
「拝察いたします」の使い方2:相手を思いやる
「ご苦労はいかほどかと拝察いたします」
「ご苦労はいかほどかと拝察いたします」とは「相手の苦労がどれほどのものかと推測します」という意味で、端的にいうと「大変なご苦労だと思います」というニュアンスです。似た言い回しでは「いかばかりかと拝察いたします」も挙げられます。
日々会社を支えるというご苦労はいかばかりかと拝察いたします。
「ご心労拝察いたします」
“ご苦労”だけでなく「ご心労拝察いたします」という表現でもよく持ちられます。特に精神的な苦労に言及した表現になります。
慣れない土地での生活、ご心労拝察いたします。
「心中拝察いたします 」
「心中拝察いたします」とは相手の心情を思いはかる表現です。状況を問わずに使用することも可能ですが、特にお悔やみを述べるシーンで「心中拝察いたします」と使う例も多いです。
「お忙しいことと拝察いたしますが~」
「お忙しいことと拝察いたしますが」と前置きとして使うと相手の忙しい状況に配慮する言い回しになります。たとえば「お忙しいことと拝察いたしますが、ご対応いただきますようお願い申し上げます」とは非常に丁寧な依頼文です。
また「お忙しいことと拝察いたしますがくれぐれもご自愛ください」と健康を気遣うフレーズでも用いられます。
「拝察いたします」の類語・言い換えとは
「拝察いたします」の類語は「お察しいたします」
「拝察いたします」と似た意味の表現は「お察しいたします」です。「察する」とは「状況や雰囲気から気持ちなどをおしはかること」を意味します。「心中お察しします」などの言い回しで相手の心境を思いやるフレーズとしても使用できます。
「拝察いたします」は「存じます」に言い換え可
「拝察いたします」は謙譲表現「存じます」に言い換えることもできます。「存じます」とは「思う、考える」の謙譲語「存じる」に丁寧語「ます」をつけた表現です。
たとえば「お忙しいことと拝察いたしますが〜」は「お忙しいことと存じますが〜」に言い換えても似たニュアンスです。
「拝察いたします」の英語訳とは
英語訳には「understand」「know」を使う
「拝察いたします」を英語にする際は「understand」や「know」といった単語を使用します。それぞれ「理解する」「知っている」という意味を持つ単語として馴染みがありますが、たとえば「I know how terrible you feel.」は「お辛いことと拝察いたします」という和訳が可能です。
I understand how you are feeling.(心中拝察いたします)
「心中拝察いたします」のその他の英語訳
「心中拝察いたします」は他にも「My thoughts are with you.」という英語訳も可能です。直訳すると「私の思いはあなたと共にあります」となり、「心中拝察いたします」や「お悔やみ申し上げます」という意味でも用いられます。
まとめ
「拝察いたします」とは「心情や事情をお察しします」という意味で、相手の心情などをあれこれと思いやるニュアンスがあります。たとえば「心中拝察いたします」「ご苦労はいかばかりかと拝察いたします」のように、相手を思いやるフレーズとして使用するのが通例です。
「拝察いたします」は二重敬語ではなく、相手に敬意を込めて使える表現です。ただし謙譲語なので自分の行動にのみ使うのがポイントです。
時下ますますご清栄のことと拝察いたします。