「彼岸」とは「春分と秋分の前後3日間」のことで、この期間に墓参りをするのが習わしです。では、なぜお彼岸に墓参りをするのでしょうか。
この記事では、「彼岸」の意味や対義語「此岸」の意味のほか、墓参りをする理由も解説します。また、お彼岸に食べられる「ぼたもち」と「おはぎ」の違いも紹介しましょう。
「彼岸」の意味とは?
彼岸とは「春分と秋分の前後3日間」を意味する
「彼岸(ひがん)」とは「春分と秋分のそれぞれ前後3日間」という意味です。「春分」と「秋分」は昼と夜の長さがほぼ等しくなります。そのため、仏教においては「あの世」につながる時期として、「彼岸」を「お彼岸」と呼び墓参りに行く習慣があります。
「彼岸」の本来の意味は「あの世」
「彼岸(ひがん)」とは「あの世」という意味の仏教用語です。「涅槃(ねはん)」とも呼ばれ、すべての悩みや束縛から解放されて、永遠の平和と最高の喜びを得られる安楽の世界です。「彼岸」は最終的な目標とされています。
「彼岸」には「死後の世界」という意味も
「彼岸」は仏教用語としてではなく一般的に「死後の世界」という意味で使われることもあります。死んだ霊が行き着くところという意味で、生きている人がいる世界に対する、死んだ人が行く場所としてとらえられます。
「彼岸」に墓参りをする理由とは?
彼岸は「あの世とこの世が最も近い期間」
お彼岸には墓参りをする習慣が日本にはあります。理由は、彼岸はあの世とこの世、つまり彼岸と此岸が最も近くなると考えられているためです。
墓参りでは、先祖の供養や生かされていることに感謝します。春分の日または秋分の日に墓参りをしなくてはならないというわけではないため、お彼岸の間で都合のいい日を選ぶとよいでしょう。
「彼岸」を「お彼岸」と呼ぶことも
彼岸となる春分と秋分を中日として、その前後3日間を合わせた1週間を「お彼岸」と言います。「春分」は毎年3月20日ごろ、「秋分」は毎年9月22日ごろです。
春のお彼岸は種まきの時期と重なるため、先祖の霊に感謝をするとともに、豊作が祈られることもあります。
「彼岸」には「彼岸の入り」と「彼岸明け」がある
彼岸の初日は「彼岸の入り」、彼岸の最終日は「彼岸明け」と呼ばれます。「彼岸の入り」に墓参りをして、先祖供養をすることが多いです。
墓参りでは、お供えものをする前に墓の周りを掃除するところから始めます。お供え物をしたら、線香を焚いて合掌をしながら先祖の霊に感謝をしましょう。線香は息をかけて吹き消すのではなく、手を仰いだ風で火を消します。
「彼岸」の対義語とは?
「彼岸」の対義語は「此岸」
「此岸(しがん)」とは、仏教用語で「迷いの世界」または「迷いや悩みの多い世界」という意味です。この迷いの世界に私たちは生きていて、四苦八苦しながら生死輪廻していると考えます。「此岸」の対極にあるのが「彼岸」で、「此岸」は「彼岸」の対義語になります。
「此岸」には「こちら側」という意味も
迷いなどに満ちた煩悩を此岸と彼岸の間に流れる三途の川だとして、私たちが生きている世界は「こちら側」となるので、「此岸」には「こちら側の岸」という意味もあります。「彼岸」は皮の向こう側になるので「あちら側の岸」という意味で使われます。
「彼岸」に関する雑学
彼岸のお供えは「ぼたもち」や「おはぎ」が多い
お彼岸に食べられたり供えられたりする定番の食べ物が、「ぼたもち」と「おはぎ」です。「ぼたもち」と「おはぎ」は名称が違いますが同じ和菓子で、蒸したもち米を甘く茹でたあんこで包んでいます。
小豆の赤い色が魔除けになると信じられていたこと、もち米とあんという2つのものを合わせたぼたもちやおはぎは先祖と私たちの心を合わせるという意味も掛け合わされて、お彼岸定番の食べ物になりました。
「ぼたもち」はこしあん「おはぎ」は粒あんを使う
春のお彼岸は牡丹をイメージした「ぼたもち(牡丹餅)」を、秋のお彼岸には秋の花である萩をイメージして「おはぎ(お萩)」というように名称が使い分けられています。
秋に収穫される小豆は茹でれば皮までおいしく食べられるので、おはぎには粒あんが使われるようになりました。一方、春の小豆は秋に収穫されて保存されていた小豆なので川が硬くこしあんに向いているため、「ぼたもち」にはこしあんが使われます。
「六波羅蜜」とは「彼岸に至るための修行徳目」
「六波羅蜜(ろくはらみつ)」とは、大乗仏教において彼岸に至るための6つの修行徳目のことを指します。六波羅蜜を実践することで悟りを開き、死後に彼岸に行けると考えられています。
「六波羅蜜」の6つの実践内容とは「布施・持戒・忍辱・精進・禅定・智慧」です。それぞれの意味は次のようになります。
- 「布施(ふせ)」:お恵みをすること、施し
- 「持戒(じかい)」:戒律を守ること
- 「忍辱(にんにく)」:完全なる忍耐
- 「精進(しょうじん)」:勇気を持って努力をすること
- 「禅定(ぜんじょう)」:心がひとつとなること
- 「智慧(ちえ)」:正しい判断力でもって、物事の真実を見つめること。智慧以外の5徳目の根拠となる考え方
まとめ
「彼岸」とは「春分と秋分の前後3日間」のことです。三途の川のこちら側と向こう側、彼岸と此岸が彼岸に最も近づくと考えられていることから、「お彼岸」には墓参りに行かれる方も多いでしょう。