「初志貫徹」は、座右の銘として人気のある言葉です。字をそのまま読めばおおよその意味は取れますが、きちんとした意味や使い方を知っておくと安心です。
この記事の内容は、「初志貫徹」の意味や使い方を類語・対義語や例文を挙げながら分かりやすく解説したもので、ビジネスシーンでの実務にも役立ちます。
「初志貫徹」とは?
「初志貫徹」の意味は、最初に決めたことを最後まで貫くこと
「初志貫徹」の意味は、”最初に決めたことを最後まで貫くこと”です。「初志」は最初に定めた志や目標、「貫徹」は最後まで意志や方針を貫き通すことを指す言葉です。読み方は、「しょしかんてつ」です。
お正月の書き初めによく選ばれる言葉で、行書で書かれた文字は見た目にも美しいものです。新年の抱負を三日坊主で終わらせないためにぴったりの言葉といえます。
「初志」と「初心」は別もの
「初志」と紛らわしい言葉に「初心」があり、「初志貫徹」というべきところを「初心貫徹」と誤用されるケースが見られます。
「初心」は世阿弥の「花鏡」のなかで語られている「初心忘るべからず」にありますが、「初志」とは別の意味を持つ言葉です。「初心」は初心者という言葉から分かるように、物事を始めたばかりでまだ何も分かっていない状態を指しています。
つまり、最初に定めた志である「初志」と「初心」は意味が違うものであるため、「初心貫徹」では何も分からない状態を貫き通すことになってしまい、言いたいことが正しく伝わらなくなるのです。
「初志貫徹」の類語とは?
類語①「終始一貫」は最初から最後まで同じ態度を貫き通す
「初志貫徹」の類語として、「終始一貫」が挙げられます。「終始」は始めから終わりまで、「一貫」はひとつの態度や方針などを貫き通すことです。両方を合わせると「始めから終わりまで同じ態度を貫き通す」ということを表しており、「初志貫徹」と同じ意味の言葉となります。
「終始一貫」と似た言葉に、「首尾一貫」「首尾貫徹」があります。「首尾」は頭から尾までを表しており、始めから終わりまでのことをいう「終始」の同義語です。「徹頭徹尾」も同様に、頭から尾まで同じ態度や方針に徹していることを指す言葉です。
類語②「頑固一徹」は頑なで強情なこと
「初志貫徹」の類語として思い浮かぶものとして「頑固一徹」があります。「頑固一徹」は、自分の方針や態度を絶対に変えようとせず、最後まで押し通すことや正確のことを指しており、一度決めたことを貫き通すという意味合いは「初志貫徹」と同じものです。
しかし、「頑固一徹」は強い意志を称えるというより、強情であることに焦点があたっているため、褒め言葉として使いたい場合には「初志貫徹」のほうが適切です。
類語③「脈絡通徹」は矛盾がないということ
「初志貫徹」の類語として「脈絡通徹」が挙げられることがありますが、意味合いが少し異なります。「通徹」は「貫徹」の同義語ですが、「脈絡」は物事の筋道のことを指しています。
したがって「脈絡通徹」の意味は、物事の筋道が最初から最後まで通っていて矛盾がないということになります。「脈絡通徹」の逆の意味を示す言葉が「支離滅裂」「前後矛盾」であることからも、「初志貫徹」と「脈絡通徹」の意味が違うものであることが分かります。
「初志貫徹」の対義語とは?
プラスの意味を持つ対義語は「臨機応変」「融通無碍」
「初志貫徹」の対義語は、行動や方針を変えることを表す言葉です。変えないことを評価している「初志貫徹」に対抗して、変えることを評価している対義語を挙げます。
- 臨機応変:
読み下すと「機に臨んで変に応ず」となり、状況に応じて行動や方針を変えることをいう言葉です。 - 融通無碍:
「融通」とは滞りなく通りがよいこと、「無碍」は妨げるものがないことを指しています。ふたつ合わさって、考えや行動に固定観念がなく自由であるという意味です。
マイナスの意味を持つ対義語は「君子豹変」「朝令暮改」
行動や方針を変えることに対して評価しない意味合いを持つ対義語を挙げます。
- 君子豹変:
本来の意味は、立派な人物は、過ちに気づいたときや状況の変化によって態度や方針を急に変えるものだということでしたが、現在では、身勝手な都合で態度を一変させるという意味で使われることが多くなっています。 - 朝令暮改:
朝に出した命令が夕方にはもう改められることをいいます。、方針などが一向に定まらず、あてにならないことを表す言葉です。
「初志貫徹」の使い方とは?
「初志貫徹」を使った例文
「初志貫徹」の使い方が分かる例文を紹介します。
- 目標を達成するために、どんな困難も「初志貫徹」で乗り越える所存です。
- 何事も「初志貫徹」の精神で粘り強くやり通すことが、創業からの社是です。
- 彼のモットーは「初志貫徹」だから、契約を取るまで決して諦めないだろう。
まとめ
「初志貫徹」の意味と、類語・対義語や使い方の例文を紹介しました。本来は良い意味を持つ「初志貫徹」ですが、変化のスピードが年々速くなっている現代社会においては、「初志貫徹」が意志の強さとして評価されるのか、あるいは融通の効かない頑固さとして受け取られるかを見定めることが必要なケースもあります。