「冷や水を浴びせる」の意味とは?「水を差す」との違いや類語も

「冷や水を浴びせる」は、相手のやる気を削ぐことを表した言葉です。「冷水を浴びせる」や「冷や水をかける」、「水を差す」など類語も多くみられますが、意味に違いはあるのでしょうか。この記事では、「冷や水を浴びせる」の意味のほか、「水を差す」などとの違いや言い換えに使える類語も紹介しています。

「冷や水を浴びせる」の意味とは?

「冷や水を浴びせる」とは相手のやる気を削ぐこと

「冷や水を浴びせる(ひやみずをあびせる)」とは、相手のやる気を削ぐような言動をすることを表した慣用句で、「冷や水」は冷えた水を意味しています。意気込んでいる人に冷水を掛けるように、相手のやる気や元気をなくさせるような言動のことです。

「冷や水」ではなく「冷水」が正しいという説も

相手のやる気を削ぐという意味の慣用句としては、もともと「冷水を浴びせる」が使われていました。しかし、時代を下るにつれ、「冷や水を浴びせる」が多く使われるようにあってきたのです。

そのため、「冷や水」ではなく「冷水」が正しいのではないかという説がありますが、今のところ誤用とはされていないため、どちらを使っても問題ありません。

「冷や水を浴びせられる」は受け身の用法

「冷や水を浴びせられる」は、「浴びせる」の未然形「浴びせ」に、助動詞「られる」がついたものです。助動詞「られる」は、受け身・尊敬・自発・可能の意味を加えるものですが、「冷や水を浴びせられる」は通常、受け身の意味で使われています。

「冷や水を浴びせる」の類語

「冷や水をかける」は「冷や水を浴びせる」と同じ意味

「冷や水をかける(掛ける)」は「冷や水を浴びせる」と同じ意味を持つ類語で、言い換えに使うことができます。しかし、「冷や水を浴びせる」や「冷水を浴びせる」が一般的に使われており、「冷や水をかける」はあまり見掛けられません。

なお「冷や水をかける」は、勝負を一時あずかりとすることや、興奮を鎮めるという意味で使われる「水を掛ける」の誤用とする説もあります。

「出端を挫く」は機先を制すること

「出端(でばな・出鼻とも書く)を挫く(くじく)」は、ものごとを始めようという意気込みや、波に乗って調子を上げようとすることを妨げることを表した言葉です。

やる気を削ぐという意味の「冷や水を浴びせる」の類語で、言い換えに使うことができます。なお「出端(出鼻)を折る」という言い回しも、同じ意味で使われている言葉です。

「年寄りの冷や水」は無理をする年寄りをたしなめることわざ

「年寄りの冷や水」の「冷や水」は、江戸時代に売られていた白玉を入れた甘い冷水のことです。「冷や水」は人気の高い嗜好品でしたが、年寄りは湯冷ましを飲むのがよいとされていました。

年寄りが若者の真似をして「冷や水」を飲むとお腹をこわすということから、年齢にふさわしくない無理な振る舞いという意味で使われるようになったものです。

「年寄りの冷や水」は江戸いろはかるたにも採用されており、無理をする年寄りをたしなめたり、年寄りが自嘲したりすることわざとなっています。

「冷や水を浴びせる」と「水を差す」の違いとは?

「水を差す」とはうまくいっているものの邪魔をすること

「水を差す」とは、せっかくうまくいっているところに横から入って邪魔をすることを指した言葉です。また、仲のいい人同士の間に割って入ることも「水を差す」といいます。

なお、「差す」はそそぐという意味の「注す」を用いることもありますが、「水を注ぐ(そそぐ)」という言い回しはありません。

「水を差す」には水を加えて薄めるという意味も

「水を差す」には、濃いものや熱いものなどに水を加えて薄めたり、ぬるくしたりするという意味もあります。

料理に水を加えると薄くなったりぬるくなったりして、味が台無しになることということから、うまくいっているものの邪魔をするという意味で使われるようになりました。

「差し水」は料理用語

「水を差す」と似た言葉として、「差し水」があげられます。麺類や豆類などをゆでる時に、沸騰した鍋に加える冷水のことで、吹きこぼれを防いだり均一に火を通したりするために行われるものです。

「差し水」つまり、鍋に水を差すことで料理がおいしく仕上がるため、「水を差す」とは逆の意味合いとなります。しかし、「差し水」を料理以外で使うことはありません。

「冷や水を差す」は誤用

「水を差す」はうまく行っているものの邪魔をすることで、やる気を削ぐという意味合いは特にありません。しかし、「冷や水を浴びせる」の言い換えに使われているケースも見受けられます。

また、時折「冷や水を差す」という言い回しを見聞きしますが、これは「冷や水を浴びせる」と「水を差す」を混同した誤用です。

まとめ

「冷や水を浴びせる」の意味について、「水を差す」などとの違いのほか類語も紹介しました。「冷や水」と「水」が使われている似た言葉どうしが混同されつつありますが、徐々に許容されているようです。

今のところ「冷や水を差す」は誤用とされていますが、「冷や水をかける」のようにいずれは共存していくのかもしれません。