「ご尊父」の意味と使い方とは?義理の父や祖父への用法も紹介

「ご尊父」とは、第三者の父のことを指す敬称ですが、「様」を重ねて「ご尊父様」とした三重敬語がよく使われています。お悔みの場や弔電など、マナーが重視されるシーンで使う言葉ですが、誤用も見受けられるようです。この記事は「ご尊父」の意味や類語との違いなど、語句への理解を助ける内容となっています。

「ご尊父」の意味とは?

「ご尊父」の意味は第三者の父のこと

「ご尊父」の読み方は「ごそんぷ」で、「御尊父」と書くこともあります。第三者の父親のことを敬って呼ぶときの言葉です。「尊父」だけでも敬意を含んでいますが、通常は接頭辞「ご(御)」を付けて用いられています。

なお、「ご尊父」に「様」を付けて、「ご尊父様」としている事例がよく見受けられますが、尊敬語にあたる「尊父」に「ご(御)」と「様」が重なっているため、敬語としては誤りです。

しかし、「ご尊父様」という言葉はひとつの単語として慣例化しており、弔電や葬儀でのお悔みの挨拶などでも一般的に用いられています。

弔電での「ご尊父」は喪主の父のこと

弔電は、基本的に喪主宛てに送るものです。したがって知人の父親が亡くなったとしも、喪主が故人の妻(つまり知人の母親)であったような場合、弔電に「ご尊父様のご逝去を悼み…」と書いてしまうと、喪主の父親(つまり個人の祖父)が亡くなったという意味になってしまいます。

喪主の父親が生きている場合はお詫びのしようもないほど失礼にあたるので、語句の使い方には特に注意が必要です。なお、このようなケースでも知人宛ての手紙やメールであれば、「ご尊父」を使うことができます。

「ご尊父」は「祖父」ではない

「祖父」の敬称は「ご祖父様」で、読み方が「ご尊父様」と似ているためか混同されることがあるようです。しかし、「ご尊父」は話題の対象となっている人物の父親を指すもので、祖父に対して使うものではありません。

「ご祖父様」は弔電にも使えるものですが、知人の祖父が亡くなった場合でも喪主が知人の親であれば「ご尊父様」を使います。

「ご尊父」の使い方と例文

生きている第三者の父にも使えるが、一般的ではない

「ご尊父」は葬儀の際に遺族の父を指して使われることが多い言葉ですが、故人ではなく生きている第三者の父親のことを指しても使うことができます。

しかし日常会話で使うことは少なく、改まった席やかしこまったビジネスシーンで用いることが一般的です。

「ご尊父」を使った例文

  • 部長のご尊父様には格別のお心遣いを賜り、誠にありがとうございました。
  • 先生の御尊父が描かれた書画には、ユーモラスなお人柄がにじみ出ている。
  • ご尊父様のご訃報に接し、謹んで心よりお悔みを申し上げます。

「ご尊父」と「岳父」との違いとは?

「岳父」とは妻の父親のこと

「岳父(がくふ)」は妻の父親という意味で、「岳翁(がくおう)」や「岳丈(がくじょう)」と呼ぶこともあります。

配偶者の父親(義理の父)を指す言葉として馴染みのある「義父(ぎふ)」や「舅(しゅうと)」は、夫婦どちらの立場でも使うことができますが、「岳父」は夫の立場からのみ使うもので、妻が夫の父親を指すときには使いません。

なお、「岳父」は話し言葉として使われることは少なく、もっぱら喪中はがきで書き言葉として用いられるものです。

「岳父」は喪中はがきでよく使われる言葉

「岳父」は喪中はがきや弔電などで使用される言葉です。喪中はがきにおいても、「岳父」ではなく「義父」のほうがよく使われています。

敬称である「岳父」を、第三者に宛てる喪中はがきのなかで用いるべきではないということが理由です。

「岳父」を使えるのは本来婿のみ

「岳父」は、妻の父親のことを指す言葉です。弔電やお悔みの言葉として、妻の父親を亡くした男性に対して、第三者が「ご岳父様」を使っている事例がときおり見受けられますが、これは誤った用法といえます。

しかし、近年では使い分けがあいまいになってきているようで、妻が夫の父親を指して「岳父」を使っている事例もみられるようです。

「ご尊父」の対義語

「ご母堂」は第三者の母のこと

「ご母堂(ごぼどう)」とは第三者の母のことを指して用いられている敬称で、「ご尊父」と同様に「ご母堂様(御母堂様)」という形で用いられることが多く見られます。

なお、第三者の父を指す「ご尊父」の対義語と考えて「ご尊母」としている事例を見掛けますが、これは誤りです。

「岳母」は妻の母のこと

「岳母(がくぼ)」は、妻の母のことを指して用いられる言葉です。「岳父」と同様に、本来「岳母」は妻の母を指す言葉でしたが、夫の母に対して使っている事例も見受けられます。

なお「岳母」は「岳父」よりさらに使われることの少ない語句で、「義母」と呼ぶことが一般的です。

まとめ

「ご尊父」の意味と使い方について、義理の父や祖父への用法や対義語をふくめて紹介しました。「ご尊父」はお悔み専用の言葉ではありませんが、やはり葬儀の場や弔電で使われることが多い言葉です。

特に弔電は文書として残るものであり、喪主に対して送ることを念頭に置いて言葉を選ぶ必要があります。記事の内容が参考になれば幸いです。