企業や医療現場などさまざまな場面で、「アカウンタビリティ」という言葉がよく聞かれるようになりました。「説明責任」とも言われるものですが、誰に何を説明し、責任の範囲はどこまで求められるのかまで理解できているでしょうか。
この記事では、「アカウンタビリティ」の意味や使い方、類語を紹介します。「レスポンシビリティ」との違いや使い分けも参考にしてください。
「アカウンタビリティ」の意味や由来とは?
「アカウンタビリティ」の意味は「説明責任」
「アカウンタビリティ」の意味は、”説明責任・説明義務”です。もともとは会計責任を意味する「アカウンティング(会計)」と「レスポンシビリティ(責任)」に由来する会計用語でしたが、現在では広い分野で使われるようになりました。
「アカウンタビリティ」の由来はアメリカで生まれた造語
「アカウンタビリティ」は、アカウンティング(会計)とレスポンシビリティー(責任)を合わせた造語で、アメリカで誕生しました。
1960年代のアメリカにおいて、行政や公共機関は税金の使われ方を納税者(国民)に対して説明する責任があるという考えから発生したのがきっかけです。その後、株式会社などの企業に対しても、出資者(株主)に対して、資産の使われ方や経営の状況などを説明する責任が求められるようになりました。
日本には1990 年代後半に「アカウンタビリティ」の考えが導入され、今では行政機関や企業に限らず、医療や教育現場でも使われるようになりました。
「アカウンタビリティ」と「レスポンシビリティ」の違いとは?
「レスポンシビリティ」とは実行責任のこと
「レスポンシビリティ」は「アカウンタビリティ」の元になっている言葉で、類語でもあります。単に「責任」という意味をもつもので、会計や説明といった意味は含みません。
また、「レスポンシビリティ」で対象となるのは実行責任であり、成果や結果については不問です。成果に対する説明責任を負う「アカウンタビリティ」とはこの点が異なります。
「アカウンタビリティ」の使い方とは?
一般的には「相手に理解を得るまで」が「アカウンタビリティ」
「アカウンタビリティ」は説明責任や説明義務という意味合いで理解されていますが、何をどのように説明する責任があるのか、どこまで義務を負うのかについては漠然としています。
一般的には、担当や権限を持つ事柄について、利害関係者に詳細な説明をするということ、あるいはその義務という意味で、「アカウンタビリティ」という言葉が使われます。
つまり、権限を持っている人物はその事柄に対して責任を持っていますが、その責任が業務の内容に対してだけではなく、「利害関係者が納得できるように説明する」という責任も含んで使われています。また説明する内容には、現状のみならず今後の方針などについても含まれています。
「責任を追及できる権利」という意味を持って使われる
義務である「アカウンタビリティ」には対として権利が存在しており、利害関係者にとっての「アカウンタビリティ」は、責任を追及できる権利という意味を持って使われています。
この場合、その事柄に権限を持っている人物や担当者は、事態の説明だけでなく解決への方策だけではなく、利害関係者への補償までを含めて説明して理解を求めなければなりません。なお、場合によっては直接の利害関係者だけでなく、業界全体やマスコミまでが対象となることもあります。
医療現場では治療方法を決める際の患者・家族説明で
医療現場において「アカウンタビリティ(説明責任)」が問われるのは、治療方法を決める際です。医師が複数の治療方法を提示して、それぞれの治療効果や副作用などについて患者や家族に説明します。このあと患者や家族から同意(インフォームドコンセント)を得たうえで治療を開始する流れとなります。
かつての医療現場では医師の独断専行が一般的で、患者が医師に説明やカルテの開示を求めることなど考えられませんでした。しかし、医療ミスや終末期における過剰医療などが問題となり、治療方針について患者や家族に説明し、同意を得ることが一般的になってきました。
「アカウンタビリティ」の類語とは?
「インフォームドコンセント」は納得のうえでの合意
「インフォームドコンセント」にある「インフォームド(informed)」は説明、「コンセント(consent)」は同意という意味を持ち、合わせると十分な情報と説明のよって理解したうえでの同意という意味になります。
医療現場でよく用いられ、患者が納得のうえで治療方針を拒否したり主治医を変更したりする場合のように、合意しないと判断した場合でも「インフォームドコンセント」が適切に行われたと見なされます。
「アカウンタビリティ」は十分な情報と説明を提供することで、情報提供者側の責任として課せられたものです。「インフォームドコンセント」は情報を受ける側の理解と意思決定のことですが、「インフォームドコンセント」を行う上で「アカウンタビリティ」は必要不可欠なものです。
「アカウンタビリティ」と類語との関係性
「レスポンシビリティ」は「アカウンタビリティ」に含まれ、「インフォームドコンセント」は「アカウンタビリティ」の結果として現れるものです。三者の関係性を分かりやすく示すと、以下のようになります。
「レスポンシビリティ」<「アカウンタビリティ」<「インフォームドコンセント」
まとめ
「アカウンタビリティ」の意味や使い方、類語について解説しました。「アカウンタビリティ」では、結果に対して説明する責任を誰が負うのかまでが問われています。
また、説明するだけでは「アカウンタビリティ」は完結せず、理解を得られたかどうかも結果に含まれます。「アカウンタビリティ」をその場しのぎのように理解していると、大きな損失を被ることになりかねないので注意が必要です。