「いけず」の意味や語源とは?京都の方言?使い方・類語も紹介

「いけず」という言葉を耳にするシーンは、オフィスでの業務中においてはなくアフター5以降のオフィス外でのことが多いでしょう。しかしアフター5での会話も、仕事と無関係とは限らないためおろそかにはできません。ここからは、「いけず」の意味や使い方について、語源や類語も含めながら紹介していきます。

「いけず」の意味や語源とは?

「いけず」の意味は”意地の悪いさま”

「いけず」の意味は、”意地の悪いさま”です。他にも、憎たらしいさま、つれない様子、あるいはそのような態度をとる人のことを指す言葉です。「いけずな人」とは「つれない人」や「不親切な人」のことを指し、「あの人いけずやわ~」とは「あの人は意地悪ですね」という意味になります。

また、「いけず」には「いけずされる」という用法もあります。この場合は、「意地悪をされる」「冷たくされる」という意味になります。

「いけず」には”邪魔なひと・悪人”という意味も

人の恋路を邪魔するような行為に対しても「いけず」が使われることがあります。ライバルとして積極的に邪魔するだけでなく、たとえばふたりがいい雰囲気のときに席を外さないで居座り続ける人などにように、気が利かないため結果的に邪魔になっているような場合にも、「いけず」が用いられます。

また、悪人やならず者のことを江戸期の上方では「いけず」と呼んでいました。現在でも浄瑠璃にその用法がみられますが、一般的な会話で使われることは少なくなっています。

「いけず」の語源は”池之端の芋茎(ずいき)”

「いけず」の語源は「池之端の芋茎(ずいき)」であるという説が有力です。芋茎とは里芋の葉茎で、初夏から夏にかけて収穫される野菜です。「いけず」は「いけのはたのずいき」が縮まったもので、江戸期に大阪の洒落言葉として使われていました。

池之端の芋茎は池の養分や水分を独占してしまい、他の植物には与えないということから、「いけず」が「意地悪」という意味を持つようになっています。

「いけず」は京都の方言?

「いけず」は京都や大阪の方言

「いけず」という言葉を聞いたとき、祇園あたりの舞妓さんがお客さんに対して、「いけずやわ~」とはんなり絡んでいる場面が思い浮かぶのではないでしょうか?

一方、静岡県人の「ちびまる子ちゃん」や埼玉県人の「クレヨンしんちゃん」も、作中で何度も「いけず~」という言葉を使っています。

これらを鑑みると「いけず」は全国区の言葉になっているようですが、もともとは関西地方の方言です。江戸時代には上方一帯(京都・大阪を中心とする畿内)で使われており、だんだんと地方に広がっていきました。

「いけず」の使い方とは?

「いけず」は愛憎入り混じった言葉

「いけず」には相手を責める意味合いがありますが、相手を強く非難して使う否定語ではありません。むしろ、男性が関西の女性から「いけず」と言われた場合には、ひょっとすると「脈アリ」なのかもしれません。「いけず」は憎らしいけれど憎みきれない、腹が立つけれど許しても良いという、愛憎入り混じった微妙なニュアンスがある言葉なのです。

「いけず」は声高に相手を非難しない言葉

「いけず」は相手を責める言葉ではありますが、声高に相手を非難したり自分を正当化したりするものではありません。やんわりとオブラートに包みながら、相手の冷たい態度や察しの悪さを指していう言葉です。したがって「いけず」といわれたときに本気で怒るのは野暮で、やんわりとその場を収めるかおとなしく退散することが大人の態度といえます。

また「いけずされる」という使い方をする場合には、ちょっとした行き違いや一時的に意地悪されたという意味合いになるため、パワーハラスメントやセクシャルハラスメントを受けたような深刻なケースには用いません。

相手が京都の人なら要注意

京都の人が使う言葉は、「ぶぶ漬けでもどうどす?」が「そろそろお引取りを」という意味になることからも分かるように、額面通りに受け取ると危険なケースがあります。

通常は軽く非難する意味合いで使われる「いけず」ですが、本当に嫌な奴という意味で「いけずやわ~」と言っていることもあるからです。これは決して意地悪からではなくただ婉曲に表現しているだけなのですが、京都以外の人には分かりづらいこととなっています。

「いけず」の類語とは?

「いけず」の類語は”不人情”

「いけず」は倫理的な悪というより、情が薄いという意味合いで用いるケースが多くみられます。この場合の類語は、「つれない」「薄情」「不親切」「意地悪」などが挙げられます。相手がこちらの気持ちを分かってくれないことを残念に思う気持ちを含ませて用いるもので、相手を完全に嫌ったり否定したりするところまではいっていません。

強く否定する意味での類語は「よこしま」

「いけず」を倫理的な悪や合法的でないという意味で使うときの類語には、「悪質」「悪辣」「罪作り」「腹黒い」などがあります。他にも類語として「極悪」「凶悪」「邪悪」なども挙げられていますが、明治以降の近代では「いけず」にあった悪の意味合いが薄れてきています。

そのため、漢字で構成された熟語より「よこしま」「罪作り」「腹黒い」のような仮名まじりの言葉のほうが「いけず」の類語としては適切です。

まとめ

“「いけず」は京都の方言?意味や使い方と語源や類語も紹介”と題して、「いけず」への疑問を解明しました。「いけず」はビジネスシーンで使われる機会はあまりなく、多くは接待の場や私的な会話で使われています。

もし誰かに「いけず」と言われた場合、仲良くしたい相手なら機嫌を直してもらい、そうでない相手ならしばらく様子をみてください。ただし接待の場で相手が京都の人の場合なら、慎重に対応されることをおすすめします。