「先般」の意味と使い方は?「先日」「今般」との違いや期間も

「先般の~」という表現は、ビジネス現場でよく耳にします。ところで「先般」の意味は「先日」と同じなのでしょうか?また「先般」と呼べるのはいつごろまでのことでしょうか?この記事では、「先般」の意味や使い方から「先日」「今般」との違いや期間についてまで解説しています。

「先般」の意味とは?

「先般」の意味は”少し前のこと”

「先般」の意味は、”少し前のこと”です。他にも、「先ごろ・過日・この間」という意味の言葉です。現在からみてそれほど遠くはない過去のことを指しています。「先般」は具体的な日時を指すものではなく、何日前というようなはっきりとした定義もありません。

したがって、少し前のことを話題にしたいときで、特定の日時を提示しなくても構わない場合に「先般」を用いて表現します。

漢字の意味は「過去の局面」

熟語を構成している文字の意味から「先般」の意味を読み解くと、「先」には「今より前」「現在からさほど遠くない過去」という意味があります。

もう一つの構成文字である「般」には「ある局面」という意味があり、両方を合わせると「現時点からそれほど遠く離れていない過去の、ある局面」という意味合いになります。このように熟語を構成している文字からも、「先般」の意味がうかがえます。

「先般」の使い方とは?

「先般」は改まった言葉

「先般」は、改まった文書に適した言葉です。ビジネス文書や改まった書簡にふさわしい言葉である反面、口頭で用いると堅苦しい印象を相手に与えてしまう恐れがあります。なお、「先般」は名詞的用法と副詞的用法のどちらにも用いることができます。

「先般」の使い方事例

名詞的用法

  • 「先般の会議での決定事項を、ご報告いたします。」
  • 「先般の件は、白紙に戻していただきたく存じます。」

副詞的用法

  • 「先般ご説明させていただいたとおり、今季でこのプロジェクトは終了いたします。」
  • 「先般開催された品評会で、我が社の製品は大変高い評価をいただきました。」

「先般」と「先日」「今般」との違いとは?

「先日」は「先般」とほぼ同じ意味

「先般」と似ている言葉として「先日」という言葉があります。意味は「この間」「数日前」「それほど遠くはない過去のある日」で、「先般」と同じです。「先般」と「先日」の違いは言葉の固さで、改まった文書では「先般」が適していますが、口頭で伝える場合などに用いると慇懃に感じられます。

普段使いにふさわしいのは「先日」

普段使いの言葉としては「先般」ではなく、「先日」がふさわしいものです。たとえばビジネス文書の場合なら「先般回収したアンケートの調査結果を送付いたします。」としますが、口頭で伝える場合なら「先日回収したアンケートの調査結果です。」とします。

「先般」と「先日」の違いは話題のポイント

「先般」と「先日」における微妙なニュアンスの違いとしては、話題の重点を置くポイントが異なっているという点が挙げられます。「先般」では話題のなかの出来事に重点が置かれますが、「先日」では「過去のある日」という日にちの面に重点が置かれるという違いです。

先に挙げたアンケートの事例だと「先般」を使った場合は調査結果を送付したことに、「先日」を使った場合では「過去のある日について」という点に話題のウエイトが置かれています。

「今般」は「先般」の対義語

「今般」には「このたび」「今回」という意味があります。「先般」の対義語で、ごく最近に決定したことや、行われたばかりの物事に関して述べる際に用いられる言葉です。また、現在進行中の物事に対しても「今般」を使うことができます。

「先般」と同様に「今般」も改まった表現にふさわしい言葉で、「今般、下記の住所へ事務所を移転いたしました」というように使います。「今般」を日常の場面で使うと慇懃でよそよそしく感じられるので、「今回」「このたび」を用いて「このたび、事務所は◯◯市に引っ越しました。」という表現が適切です。

「先般」「先日」「今般」の期間とは?


「先般」「先日」「今般」のいずれにも、はっきりとした日時や期間は定義されていませんが、それぞれについて一般的に認識されている期間を提示します。

「先般」は数ヶ月前まで

「先般」で取り上げる物事は数日前から数週間前、長くても数ヶ月前までのことで、それ以上前のことにはつかいません。なお昨日のことは「先般」とはいいません。

「先日」は1ヶ月前まで

「先日」は数日前から1ヶ月前くらいまでのことで、「先般」より少し短い期間を指すときに用いられます。なお「先般」と同様に、昨日のことを「先日」とはいいません。

「今般」は最近のこと

「今般」は最近行われた物事や、現在進行形の物事について述べるときに用いるものなので、その物事の影響が残っている間が使用期限となります。つまりその物事が「過去のこと」に移行し始めたら、「今般」とはいえなくなるのです。

まとめ

「先般」の意味と使い方から、「先日」「今般」との違いや期間についてまで解説しました。「先般」はビジネス文書に使いやすい言葉ですが、日時を明確に特定しないあいまいな表現になりがちです。

契約のような日時が重要なファクターとなる場面においては、「先般」ではなく明確な日時を挙げて話をまとめることをおすすめします。