「千秋楽」の意味とは?4つの語源と「千穐楽」との違いも紹介

大相撲や歌舞伎などの話題で、よく「千秋楽」という言葉を耳にします。また、劇場やホールに掲げられた幟などに、「千穐楽」と書かれたものを目にすることもあります。この記事では、「千秋楽」の意味を解説し、語源や使い方のほか、「千秋楽」と「千穐楽」の違いなどについても紹介しています。



「千秋楽」の意味とは?

「千秋楽」とは興行最終日のこと

「千秋楽」の意味は、演劇や興行などで同じ演目を数日にわたって行う興行での最終日のことです。「楽日(らくび)」や「楽(らく)」というように短縮して用いられることもあります。

もともとは江戸期において庶民の間で人気の高かった大相撲や歌舞伎の興行で使われていた言葉ですが、現在ではミュージカルやコンサートなどの興行一般で広く用いられるようになりました。また興行に限らず、物事の最後のことを指すときにも「千秋楽」が使われます。

「大千秋楽」の「大」は大晦日と同じ意味

1つの演目が各地を巡業する場合、最終公演地での「千秋楽」は本当に最後の最後の興行です。このときの「千秋楽」を特別に「大千秋楽(おおせんしゅうらく)」、あるいは省略して「大楽(おおらく)」と呼びます。

月の最終日のことを晦日(みそか・つごもり)といいますが、1年の最後の月である12月の晦日のことを特別に大晦日(おおみそか・おおつごもり)と呼びます。「大千秋楽」の「大」も、大晦日の「大」と同じ意味で付けられているのです。

「千秋楽」にはサプライズも期待できる

歌舞伎は「千秋楽」限定で、ちょっとした余興や即興が行われたり意外なゲストが登場したりすることがあります。「そそり」「そそり芝居」と呼ばれるもので、ファンはこれを楽しみに「千秋楽」へ足を運びます。

最終日を盛り上げたいという気持ちと、長い興行が終わる開放感や次の興行への期待感が高まる、「千秋楽」特有の雰囲気が楽しめるものです。

「千秋楽」の4つ語源


「千秋楽」の語源には諸説ありますが、主なものとして以下の4つがあげられます。

雅楽が語源という説

日本の雅楽の曲名に「千秋楽」というものが見られます。唐楽の盤渉調 (ばんしきちょう) に属する曲で、演奏の最後に奏じられたことから転じて、興行の最後の日のことを指すようになったとされます。ただし、必ずしも最後に「千秋楽」が演奏されるというわけではありません。

謡曲「高砂」が語源という説

謡曲『高砂』のキリの最後の句である「千秋楽は民を撫(な)で、万歳楽には命を延ぶ。相生(あいおい)の松風、颯々(さつさつ)の声ぞ楽しむ、颯々の声ぞ楽しむ」から転じたとされる説です。この部分は、現在でも婚礼のときなどの祝言として謡われることがある、おめでたいものとされています。

当て字から発生したという説

「秋」が「終」、「楽」が「落」に通じることから発生したとされる説です。「秋」には「大切なとき」「みのり」という意味があります。「楽」は神に捧げる踊りを舞う姿からできた文字で、「よろこぶ」「願う」という意味があり、盛況のうちに無事興行を終えられることを喜ぶ気持ちを表しているとされています。

「千秋」から発生したという説

「千秋」は長い年月という意味があり、同じ意味の「千歳(せんざい)」や「万歳(まんざい)」とともにおめでたい言葉とされています。また「一日千秋」という言葉から分かるように、「千秋」は待ちこがれる気持を表す言葉でもあります。

長い興行が無事終わる日を待ち望んでいた、あるいは次の興行でご贔屓さんに再び会えることを待ち焦がれるという気持ちが、「千秋楽」に込められているとされています。

「千秋楽」と「千穐楽」との違い

意味は同じで文字が違うだけ

「千秋楽」は一般的に「千秋楽」と表記されますが、「千穐楽」や「千穐樂」と書かれることもあります。意味はどれも同じで、「穐」は「秋」の、「樂」は「楽」の異体字です。異体字とは、同じ意味・読み方を持っていながら字体が異なる文字のことで、「万」と「萬」や「国」と「國」などにも見られます。

難しい文字ですが「穐」はJIS第1水準の漢字で、日常的に使用できるものです。「樂」は人名用漢字でJIS第2水準となっている文字のため、人名や固有名詞以外で一般的に使われることはあまりありません。

「千秋楽」より好まれる「千穐楽」

興行最終日に劇場へ出向くと、「千穐楽」と書かれた幟を多く目にします。「穐」のなかにある「亀」が縁起の良い文字であるため、あるいは「秋」のなかにある「火」をいう文字を避けたいため、「秋」ではなく「穐」が好んで用いられていることによるものです。

江戸期に庶民が住んでいた家屋や芝居小屋は木と紙でできており、ひとたび火事が起きると町中を焼き尽くす惨事となりました。そのため縁起をかついで「火」という文字が入っていない「穐」が用いられたのです。

まとめ

「千秋楽」の意味や語源と、「千穐楽」との違いなどについて紹介しました。大相撲や歌舞伎をはじめとする興行では、多くの人々が出し物の成功や安全を願いながら汗を流しています。「千秋楽」は、興行関係者一同の願いや喜びが実現する日を指す言葉で、ファンも含めてお祝いの気持ちが込められたものなのです。