「端緒」の読み方や意味とは?使い方と例文や類語と同義語も紹介

「端緒」という言葉は、耳にするより文書で目にすることが多い言葉ですが、意味を正しく理解できているでしょうか。また読み方は「たんしょ」と「たんちょ」の両方が通用していますが、どちらが正しい読み方でしょうか。この記事では、「端緒」の読み方や意味のほか、使い方や類語などについて例文を挙げて解説しています。

「端緒」の意味と読み方とは?

「端緒」の意味は”物事のきっかけ”

「端緒」の意味は、“物事のきっかけ”“いとぐち”です。「端緒」を構成している「端」という文字には、「はし」のほかに「はじめ」「おこり」「きっかけ」という意味もあります。

またもう一方の「緒」という文字にも、「物事の起こり」「発端」「はじめ」という意味があり、ともに「端緒」の意味を表しています。

「たんしょ」が正しい読み方で「たんちょ」は慣用読み

「端緒」には2つの読み方があり、「たんしょ」または「たんちょ」と読みます。

「たんちょ」は「たんしょ」の慣用読みで、「たんしょ」が正しい読み方です。慣用読みとは、本来は正しくない読み方であったものが、広く用いられ続けるうちに定着してしまった読み方のことです。

慣用読みには、「貼付(ちょうふ)」を「てんぷ」、「重複(ちょうふく)」を「じゅうふく」と読むような事例があります。慣用読みを用いても間違いではありませんが、本来の読み方を用いたほうが無難です。

「端緒」の使い方と例文とは?

「端緒」は書き言葉でよく使う

「端緒」の読みは「たんしょ」で、会話で用いると「短所」と紛らわしくて不便です。実際には文脈からどちらが使われているかを判断することは可能です。

けれども会話では「端緒」ではなく、「ことの起こり」や「発端」などの言葉で言い替えたほうが誤解を招かずにすみます。そのため、「端緒」は会話より文章のなかで使われることが多くみられます。

「端緒」は定型的な用法でよく使われる

「端緒」は定型的な用法で使われることが多く、代表的な用法と例文を以下にあげます。

  • 「端緒となる」
    1914年のサラエボ事件が端緒となって、第一次世界大戦が開戦した。
  • 「端緒として」
    蒸気機関の発明を端緒として、一連の技術革新による第一次産業革命が進んだ。
  • 「端緒をつかむ」
    犯人逮捕の端緒をつかむため、関係者を徹底的にマークすべきだ。
  • 「端緒につく」
    社運を賭けた壮大なプロジェクトは、やっと端緒についたばかりだ。
  • 「端緒が見える」
    迷宮入りかと思われた事件だが、どうやら解決への端緒が見えたようだ。
  • 「端緒を開く」
    不平等条約撤廃の端緒を開くため、明治政府は尽力した。

「端緒」の類語と同義語とは?

「端緒」の類語は”発端・嚆矢”

「端緒」の類語としては、「おこり」「はじまり」「きっかけ」という意味を持っている以下のような言葉が挙げられます。

【「そこから始まる」という意味合いの類語】

  • 発端:物事の始まり
  • 発祥:物事が起こり
  • 起源:物事の起こるもと
  • 黎明:物事が始まろうとするとき
  • 源流:ずっと続いている物事の始まり

【「きっかけ」という意味合いの類語】

  • 契機:物事のはじまりや変化の原因
  • 引き金:物事が引き起こされる直接的な原因

【「イノベーター」という意味合いの類語】

  • 嚆矢: 物事のはじめ・最初
  • 冒頭:物事のはじめ・前置き
  • 皮切り:物事の一番はじめ

「端緒」の同義語は”発端”

3種類の類語のなかで、「端緒」の同義語となる言葉は「発端」です。「端緒」は「突破口」というイメージで、人為的かつ時期や場所などがある程度確定できる出来事や物事に対して使います。

同じ「そこから始まる」という意味合いを持っている「発祥」「起源」などは自然発生的であり、いつどこで起きたかを確定することは難しいため、「端緒」の同義語としては「発端」が適しています。

“契機・引き金”も「端緒」の同義語

「契機」「引き金」も「端緒」の同義語です。どちらも「きっかけ」という意味合いを持ち、「端緒」の言い替えで用いることができます。

なお、「引き金」はあまり良い出来事や物事には使われません。たとえば、「結婚を引き金として海外移住した」という言い方は不適切で、「結婚をきっかけに海外移住した」という使い方が適切です。

「端緒」と「嚆矢」の違いはそのものかどうか

「端緒」と「嚆矢」の違いは、そのもののはじまりかどうかにあります。「端緒」で「Aは、Bの端緒となる」という使い方をしたとき、AとBは別の出来事や物事です。一方「嚆矢」では「Aは、Bの嚆矢となる」という使い方をしたとき、AとBは同じ出来事や物事を指すものです。

実例として「サラエボ事件は第一次世界大戦の端緒となった」と「A社は民間電話会社の嚆矢である」を比較すると、理解しやすいでしょう。サラエボ事件は第一次大戦とは別の事件であることに対して、A社は民間電話会社そのものであるという点が、「端緒」と「嚆矢」の違いです。

まとめ

「端緒」の読み方や意味、および使い方や類語・同義語を例文とともに紹介しました。「端緒」はもっぱら文書で使われることが多いうえ、会話では他の言葉に言い替えられています。

そのため、日常生活で「端緒」という言葉に触れる機会は少なくなっていますが、使う機会が少ない言葉であればこそ、意識して正しい意味や使い方を身につけておきたいものです。