「一石を投じる」の意味と由来は?類語と使い方や例文も紹介

「一石を投じる」は、新聞やテレビなどでも見聞きされる慣用句です。誰かの行動によって大きな波紋が広がったことを指しているようですが、どんなときに使うべきなのかを理解するためには、正しい意味を知っておく必要があります。この記事では「一石を投じる」の意味と由来をはじめ、類語と使い方や例文も紹介しています。

「一石を投じる」の意味とは?

「一石を投じる」の意味は問題提起

「一石を投じる」は「いっせきをとうじる」と読み、ある事柄に関する新しい意見や問題を投げかけ、周囲の反響を呼び起こすことを意味する慣用句です。

日本の社会では慣例や前例にはあえて逆らわず、波風を立てないように配慮する傾向がありました。しかし、長引く不況のなかでビジネスを発展させるためには、これまで常識と思われていた社内の組織や方針に対して問題提起を行い、良い意味での「騒ぎ」を引き起こす起爆剤になるような「一石」を投じる人物の登場が待たれています。

「一石を投じる」の由来とは?

「一石を投じる」の由来は投げた石が引き起こす波紋

「一石を投じる」をそのまま読めば、石を投げることを指しているだけですが、石を水のなかに投げ込むと、静かだった水面に波紋が広がります。

つまり、池などに投げ込まれた石が波紋を起こして次第に周囲へ広がっていく様子が由来となり、人々に意見や問題を投げかけることで議論を呼び起こし、その議論が次々と大きく広がっていくことを「一石を投じる」というようになったのです。

「一石を投じる」の類語

「一石を投じる」の類語は「物議を醸す」など

周囲に議論を呼び起こすことを指す「一石を投じる」と似た意味合いのある言葉として、「物議を醸す」「波紋を呼ぶ」「論議を呼ぶ・巻き起こす」などがあります。

【物議を醸す】
「物議」は世間の議論や取り沙汰のこと、「醸す」は酒や醤油を醸造することで作り出すことを意味します。「物議を醸す」で、人々の間に議論を引き起こすことや賛否両論の意見が出ることを指しますが、「一石を投じる」に比べると「寝た子を起こした」というような幾分ネガティブなイメージで使われます。

【波紋を呼ぶ】
「一石を投じる」ことで波紋が広がります。この「波紋」を起こすことを指す言葉が「波紋を呼ぶ」で、「一石を投じる」の類語です。「一石を投じる」ことは本来能動的な行動であることから、何らかの変化を起こすために意識的に言動を行うことをいうケースが多く見られる言葉です。

一方「波紋を呼ぶ」では、特に意図することなく行った言動などが思いがけない反応を引き起こしてしまったようなケースでも使われます。つまり、「一石を投じる」では言動にウエイトが置かれることに対し、「波紋を呼ぶ」では結果的に起きた反響にウエイトが置かれます。

なお、「波紋を投じる」や「波紋を投げ掛ける」は誤用です。水面に広がる波紋を投げることはできず、「一石を投じる」と混同した結果の誤りです。

「物議を呼ぶ」は「議論を呼ぶ」との混同

「一石を投じる」は「議論を呼ぶ」や「議論を巻き起こす」と言い替えることもできますが、「物議を呼ぶ」や「物議を巻き起こす」という言い回しは誤りです。

「物議」は世間の議論のことを指す言葉であるため、「議論を呼ぶ」と同じ意味合いで使うことができるように思えますが、「物議を醸す」は慣用句となっています。そのため言葉の一部を他の言葉で言い替えることはできず、「物議を呼ぶ」や「物議を巻き起こす」は誤用となるのです。

「一石を投じる」の使い方

投げ掛けられるものは小さなもの

「一石を投じる」で投げられるものは「一石」です。「一石」は150kgの米の量を表す単位としての「いっこく」ではなく、「一つの石」を指しています。

「一」は「ひとつの」「わずかの」という意味を持ち、「貧者の一灯」というように、たったひとつの小さなものを表す文字です。つまり、「一石」は小さなひとつの言動や物事のことをいい、組織全体で行う改革やトップが下した号令などについては用いません。

たとえば「消費増税が社会に一石を投じた結果、デフレが起きた」という使い方は、特別な意図がある場合を別として誤りとなります。

「一石を投じる」には影響の拡大が伴う

「一石を投じる」は、一つの言動や物事がきっかけとなって何かが引き起こされ、それが広がっていく場合に使われます。

したがって特に影響を与えられなかったり、あってもほんの一部に留まるに過ぎなかったりするようなケースでは、「一石を投じる」を使うことはできません。たとえば、「彼は会議の発言で一石を投じたが、却下されてしまった」というような使い方は誤りです。

「一石を投じる」の例文

「一石を投じる」を使った例文を紹介します。

  • 勇気ある一市民の投書が一石を投じ、条例の改正を求める運動が広がった。
  • 社内報に掲載された彼女の記事が一石を投じ、新しい事業が立ち上げられた。
  • 会議での彼の発言が一石を投じ、スカイプによる遠隔会議が開始された。

まとめ

「一石を投じる」の意味と由来、および類語と使い方や例文を紹介しました。「一石を投じる」のようなよく見聞きする言葉は、なんとなく意味が分かったように感じられ、特に意識することなく使ってしまいがちです。状況や意図に合った使い方や言い替えができるように、日頃から正しい意味や使い方を調べておくことが望まれます。