「襟を正す」の意味とは?由来や類語と使い方が分かる例文も紹介

「襟を正す」という言葉は、改まった席でのスピーチなどでよく耳にします。たしかに襟のボタンをきちんととめてネクタイを締め直すだけで、改まった席にふさわしい態度に変化するものです。この記事では、「襟を正す」の意味および由来や類語のほか、使い方が分かる例文などもあわせて紹介しています。



「襟を正す」の意味とは?

「襟を正す」の意味は気を引き締めること

「襟を正す」には、襟を直して服装を整えるという言葉そのままの意味のほかに、態度や姿勢を正しく改め気を引き締めて物事にあたるという意味があります。

今日でも面接や大切なプレゼンテーションに臨む際に、ネクタイを直したり前ボタンを確認したりしますが、実際に服装を正すことは気を引き締めることにつながるのです。また、きちんとした服装によって、自分自身の真剣さを相手にアピールすることができます。

「襟を正す」という身なりを整える動作を通して、自分の態度を振り返り気を引き締めることができるため、大切な場面で「儀式」のように活用することもひとつの方法です。

「襟を正す」ことで気持ちが引き締まる

よく生徒指導担当の教諭が生徒に対して、「服装の乱れは心の乱れ」と訓示しています。確かにだらけた気持ちは服装にも表れるもので、「襟を正す」ことを指示することで生徒の服装を整えつつ、心も正しく導こうとしているのです。

服装に心が従うことは、ジャージなどの部屋着を着ているときと礼服を着ているときの気持ちの違いからもわかります。服を着替えることは大変ですが、「襟を正す」だけでも気持ちを切り替える効果は得られるのです。

「襟を正す」の由来とは?

「襟を正す」の由来は『史記』

「襟を正す」の由来は、『史記』にある「宋忠賈誼、瞿然而悟獵纓正襟危坐」のなかの「獵纓正襟危坐」です。

漢の宋忠と賈誼が有名な易者である司馬季主と会ったとき、司馬季主が占いだけに留まらず道理にも通じた賢人であることに気付き、「纓を猟り襟を正して危坐」しました。

現代の日本語に直すと、「冠の紐を整え、襟をきちんと正して座り直した」となり、ここから「襟を正す」が、態度や姿勢を改めて気を引き締めることを表す慣用句として用いられるようになりました。

『前赤壁賦』も「襟を正す」の由来

「襟を正す」は、北宋の詩人・蘇軾の詩である『前赤壁賦』のなかの一文、「蘇子愀然正襟」にも見られます。蘇軾が赤壁で舟に乗って友人と酒を酌み交わしているとき、他の客が吹きはじめた笛の音があまりにも素晴らしかったので思わず襟を正したというくだりが、以下のように記されています。

蘇子愀然
正襟危坐
而問客曰
何為其然也

現代の日本語で意訳すると、「私(蘇軾)は真顔になり襟を正して座りなおし、客に『どうすればそのような音色が出せるのか』と問うた」となり、これが「襟を正す」の由来となっているのです。

なお、この詩が書かれた場所は『三国志』で有名な「赤壁の戦い」の舞台となった赤壁ではありませんが、詩のなかに「赤壁の戦い」が回想されています。また、『前赤壁賦』は「羽化仙人」の由来にもなっており、機会があれば一読されることをおすすめします。

「襟を正す」の類語

「居住まいを正す」は「襟を正す」の類語

「居住まいを正す」は「いずまいをただす」と読み、「襟を正す」の類語です。「居住まい」とは座っている姿勢や態度のことで、「居住まいを直す」「居住まいを繕う」とも言い替えられます。

「居住まいを正す」で、きちんとした姿勢になるよう座りなおすことから、姿勢だけでなく態度が改まる様子を表すときにも用いられています。

「襟を正す」では単に服装を整えるだけではなく、態度を改めることにウェイトが置かれていますが、「居住まいを正す」は、座っているときに姿勢を正すことだけを指して用いることもできます。たとえば、茶道や華道などにおいての「居住まいを正す」は、実際の姿勢を正しく直すことです。

「威儀を正す」も「襟を正す」の類語

「襟を正す」の類語としては「威儀を正す」も挙げられます。「威儀を調う」ともいいますが、身なりを整えて重々しい態度示すことを指す慣用句であり「襟を正す」と同様の意味です。

「威儀」とは作法どおりのいかめしく重々しい立ち居振る舞いのことを示しています。したがって「威儀を正す」はもともときちんとしたものをよりきちんとさせるということになるため、「襟を正す」のように態度を改めるという意味はありません。

たとえばだらけている人に対して、「襟を正しなさい」ではなく「威儀を正しなさい」というと誤りとなります。

「襟を正す」の使い方が分かる例文


「襟を正す」の使い方が分かる例文を紹介します。

  • 今さらながらナイチンゲールの伝記を読み、博愛に生きた彼女の人生に思わず襟を正した。
  • 受付からお得意様が突然訪問されたという知らせを受け、職員全員が襟を正してお迎えした。
  • 171名もの殉職者の名前が刻まれた黒部ダムの慰霊碑を前に、襟を正して頭を垂れた。

まとめ

「襟を正す」の意味と由来のほか、類語などを例文つきで紹介しました。就職や交渉など真剣に対峙すべき場面では、一呼吸おいて心身ともに「襟を正す」ことをおすすめします。まじめな気持ちを相手に伝えるためにも、自分自身にもう一段気合を入れるためにも効果的です。