「会者定離」の意味と使い方とは?類語「一期一会」との関係も

「会者定離」という四字熟語があります。古めかしく聞こえますが、現在でも別れの場面などで耳にする機会がある言葉です。また、学生時代に古文の学習で目にしたという方も多いでしょう。この記事では、「会者定離」の意味と使い方のほか、類語である「一期一会」や弓道との関係についても解説しています。

「会者定離」の意味や由来とは?

「会者定離」の意味は”別れは避けられない”

「会者定離」の意味は、”別れは避けられない”です。「えしゃじょうり」と読みます。出会った者とはいずれ必ず別れることになるという世の中の無常をたとえた四字熟語です。「定」は定めのことで、必ずそうなるということを表しています。

別れからは、何人も逃れることはできません。「永久に」と誓った間柄であっても「死」は避けられないため、いつかは必ず別れる運命にあるのです。実際に「会者定離」の前には「生者必滅」という言葉があり、全体で「生きている者は必ず滅び、出会った者同士の離別は定めである」となります。

「会者定離」の由来は”遺教経”という仏典

「会者定離」は、「遺教経(いきょうぎょう)」という仏典にある「世皆無レ常、会必有レ離」が由来となっていますが、「平家物語」のなかでも「生者必滅、会者定離はうき世の習にて候也」と著されています。

「祇園精舎の鐘の声…」で始まる「平家物語」は、「会者定離」のほかにも「諸行無常」や「盛者必衰」などこの世の無常を説いた仏教的な言葉が多くみられ、日本人のメンタリティーに大きな影響を与えています。

「会者定離」の使い方とは?

「会者定離」は別れの場面でよく使う

「会者定離」は古めかしい言葉ですが、職場においても転勤や退職などの場面で意外とよく使われます。

  • 「会者定離」というけれど、チーフが現場を去ってしまうことをメンバーはまだ受け入れられずにいる。
  • 卒業式で校長先生は、「会者定離」を贐(はなむけ)の言葉として我々に贈られた。
  • プロジェクト終了後にチームは解散するものだが、「会者定離」では片付けられない名残惜しさを感じる。

「会者定離」は諦観の言葉

「会者定離」は、死別や離別に打ちひしがれている人が、悲しみに区切りをつけようとしているときなどにも用いられる諦観の言葉でもあります。

  • 突然の別れに身を裂かれる思いですが、「会者定離」は世の常と諦めるしかありません。
  • 「会者定離」の言葉どおり彼とは別れることになってしまったが、これからも新天地で頑張ってもらいたい。
  • この世は「会者定離」だからこそ、共にあった時間がいっそう輝かしいものになるのだろう。

「会者定離」と「一期一会」の違いとは?

「会者定離」よりも「一期一会」は出会いにウエイトをおいた言葉

「一期一会」とは生涯ただ一度の出会いという意味で、茶道における大切な心構えとされています。「一期」とは一生涯のことで、「一会」とは、ただ一度きりの出会いのことです。

会った者とは必ず別れるという「会者定離」では別れにウエイトが置かれていますが、「一期一会」では出会いにウエイトが置かれている点で大きな違いがあります。

どちらも常なるものは何もないという点や、二度と同じ巡り合いはないという点で共通していますが、類語として分類することには若干の無理があるといえるでしょう。

「会者定離」の類語と同義語とは?

「会者定離」の類語は”諸行無常”

「会者定離」はこの世のはかなさをたとえた言葉でもあり、この意味では「諸行無常」や「盛者必衰」のほか「邯鄲の夢(かんたんのゆめ)」なども類語として挙げられます。

「邯鄲の夢」は、盧生という貧しい若者が邯鄲(中国の戦国時代、趙にあった都市の名)の地で呂翁という道士から枕を借りて一眠りしたときに長い夢を見たけれど、実はほんの短い間の夢にすぎなかったという伝説から生じた慣用句です。

「会者定離」の同義語は”愛別離苦”

「会者定離」と同様の、出会ったものとは必ず別れる悲しい定めにあるという意味合いを持った言葉としては、「愛別離苦」があります。「愛別離苦」は仏典の「大般涅槃経」にある「八苦」のひとつで、「愛するものと別れる苦しみ」という意味です。

親子や兄弟などの肉親や夫婦など愛している者との死別や離別による苦しみや悲しみは、仏典が成立した頃の昔も今も変わらないものなのです。

「会者定離」と弓道の関係とは?

弓道の基本動作の由来でもある「会者定離」

「会者定離」は、弓道における八つの基本動作である「射法八節(しゃほうはっせつ)」のうち、「会(かい)」と「離れ」の由来にもなっている言葉です。

矢を放つ前、いっぱいに矢を引き収めた状態で静止する数秒間のことを「会」と呼び、「会者定離」の理にしたがって必然的に「離れ」が生まれるまでの、満を持した状態を指すものです。

弓道においては、充実した「会」によって会心の「離れ」に至るという必然を表していますが、悔いのない離別のためには、共にいる期間の過ごし方が大切であると解釈すれば、日常生活にも応用できる考え方といえます。

まとめ

「会者定離」の意味と使い方、および類語の「一期一会」や弓道との関係について解説しました。別れは避けられないという意味ですが、別れなければならないのは人だけにとどまらず、自分の周りに存在する全てのものが対象です。

この世に存在するものは全て刻一刻と変化しており、いつかは必ず終焉を迎えるということを日常的に意識することは少なく、失ってはじめて気が付くものです。時には今、自分の周囲にある存在について心を向けてみることも、悔いのない人生を送るために必要な作業でしょう。