「テーゼ」の意味や使い方とは?語源や「アンチテーゼ」も紹介

「テーゼ」は哲学に用いられる言葉ですが、その意味や使い方を知っておくと、ビジネスシーンでの討論や思索の方法としても有用です。

この記事では哲学におけるテーゼの意味や使い方を紹介します。あわせて日常での使い方のヒントやアンチテーゼについても紹介しています。

「テーゼ」の意味とは?

まずはじめにテーゼの意味や語源について紹介します。

「テーゼ」の語源は英語ではなくドイツ語の「These」

「テーゼ」はドイツ語の「These」が語源のカタカナ語です。カントやヘーゲルが用いたドイツ語の哲学用語がそのまま日本に持ち込まれ、定着したものです。英語が語源ではありません。

「テーゼ」の訳語は「定立」

「テーゼ」とは、哲学用語で「定立」と訳されます。ある事柄を肯定的に主張すること、命題を立てるという意味です。日本語訳の「定立」という言葉よりも、ドイツ語の読みをカタカナ語にした「テーゼ」がそのまま使われるのが一般的です。

「テーゼ」の意味は「証明されるべき命題」

「テーゼ」は「命題」とも訳されます。命題とは、真または偽という性質をもつ一つの判断のことをいいます。数学においては定理や問題のことを指します。

テーゼには命題という意味が含まれますが、命題にはテーゼと異なる意味も含まれるため、注意が必要です。命題には「題名」の意味や、「問題提起」のような意味での誤用もあります。

哲学の文脈で「テーゼ」の言葉が使われるときは、「証明されるべき命題」、あるいは「これから証明を試みてゆく命題」という意味でとらえるとわかりやすいです。

「テーゼ」の使い方は?

次に「テーゼ」の使い方について紹介します。

まとまった観念を「言明」する時に使う

討論の場などで、証明すべき命題として「テーゼ」を提示するほかに、あるまとまった観念をはっきりと言明するときに「テーゼ」として提示することもあります。そのあとに「なぜなら」と続けてその言明を証明してゆきます。

例えば、デカルトの「私は考える、ゆえに私はある」などは特に有名なテーゼ(命題)として知られています。

「テーゼ」と「アンチテーゼ」を用いる討論

西欧の伝統的な哲学教育における討論の形式は、まずはじめにある問題が提起され(テーゼ)、次にそれについての肯定的な意見と否定的な意見(アンチテーゼ)が提示されます。それらについて討論を尽くし、総合する形で結論を導きます。

この討論の形式は、書物のテーマを読み解く場合や、ある事柄の矛盾や問題を発見する目的にも使えます。さらに、ビジネスシーンにおいても合理的な議論の方法として使うことができます。

また、「テーゼ」に対してあえて「アンチテーゼ」を用意することによって、テーゼは自己自身の正当性を、その反対であるアンチテーゼの非正当性を指摘することによって証明することができます。あるいは、アンチテーゼは自己自身の正当性の証明を、テーゼの非正当性を証明することによって遂行することができます。

カントは「テーゼ」の証明が不可能な「アンチノミー」を哲学の出発点とした

イマヌエル・カント(1724年~1804年)は、自身の哲学の出発点として、純粋理性のパラドックスである四つのアンチノミーを提示しました。

「アンチノミー」とは、ドイツ語「 Antinomie」のことで、日本語では「二律背反(にりつはいはん)」と訳されます。相反する命題の一対を置いたとき、ひとつの命題が証明されると同時にその反対の命題も証明されることをいいます。

カントは、アンチノミーを置くことで、言葉の論理では証明できない領域があることを示し、『純粋理性批判』からはじまる批判哲学において、そこに潜む誤謬について論証してゆきました。

このように、テーゼを駆使することによって哲学では論証を構築してゆきます。カントの四つのアンチノミーであるテーゼ・アンチテーゼを参考までに紹介しておきます。

  • 第一アンチノミー
    テーゼ:世界は空間・時間的に始まりを有する、つまり有限である。
    アンチテーゼ:世界は空間・時間的に無限である。
  • 第二アンチノミー
    テーゼ:世界の物質は単純な部分から成る。
    アンチテーゼ:世界における物質は単純な部分から成らない。
  • 第三アンチノミー
    テーゼ:すべての現象は因果律に従って起こる。
    アンチテーゼ:因果律は存在せず、すべては自然必然的法則によって起こる。
  • 第四アンチノミー
    テーゼ:神のごとき絶対的存在者がいる。
    アンチテーゼ:絶対的存在者はいない。すべては偶然的である。

例えば、第一アンチノミーでは、それぞれの証明が偽であると判定されれば、世界は有限でもなく無限でもないというパラドックスに陥ります。証明が不可能なことを証明する過程において、カントは理性の否定的な活動を論じました。

ヘーゲルは「弁証法」で「テーゼ」と「アンチテーゼ」を「アウフヘーベン」した

フリードリヒ・ヘーゲル(1770年~1831年)は、テーゼの提示から始まる弁証法のプロセスを用いて、自身の哲学を体系化し、構築しました。

ヘーゲルの弁証法とは、「正⇒反⇒合」のプロセスである「テーゼ⇒アンチテーゼ⇒ジンテーゼ(統合案)」の思考方法です。二つの意見の矛盾を解決し、よりよい結果を導き出すことを「アウフヘーベン」といいます。

カントがアンチノミーで示した理性の否定的な側面である正~反の関係を、ヘーゲルは正~反~合の肯定的な関係に置き換えたといえます。

まとめ

「テーゼ」は、ドイツ人哲学者のカントやヘーゲルが使った哲学用語が、そのままカタカナ語として輸入された言葉です。「証明されるべき命題」あるいは「証明すべき言明」という意味で使われます。

討論の場では、まず「テーゼ」とそれに対する「アンチテーゼ」を提示して、それらを討論することで多角的な総合案を導き出すこともできます。

哲学で示されたテーゼについて思索を深めたり、テーゼを用いた討論方法や思考方法を取り入れてみるのもよい思考訓練になるでしょう。

■参考記事

「カント」の『純粋理性批判』を解説!名言や倫理学の著書も紹介

「ヘーゲル」弁証法や思想とは?著書『精神現象学』や名言も紹介